元のスレッド
スクールランブルIf07【脳内補完】
- 1 名前:Classical名無しさん :04/04/18 23:44 ID:Fxxuq7bM
- 週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週7ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
SS保管庫
http://www13.ocn.ne.jp/~reason/
【過去スレ】
スクールランブルIf06【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1078844925/
スクールランブルIf05【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1076661969/l50
スクールランブルIf04【脳内補完】(スレスト)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1076127601/
もっともっとスクラン奈良萌えスレッド
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1074117388/l50
もっとスクールランブルの奈良くん萌えスレッド
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1072536035/
スクールランブルの奈良くん萌えスレッド
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1060335566/
- 2 名前:Classical名無しさん :04/04/18 23:45 ID:Fxxuq7bM
- 関連スレ(21歳未満立ち入り禁止)
スクールランブル@エロパロ板2
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077723024/l50
【荒らし行為について】
“完全放置”で
よろしく頼(よろ)んだぜ
■ 削除ガイドライン
http://www.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide
- 3 名前:Classical名無しさん :04/04/18 23:48 ID:UP3rarDA
- おつです。
職人さんも増えてきたことですし、いっそうスレが盛り上がることを期待します。
- 4 名前: :04/04/18 23:52 ID:TTtC7q6Q
- >>1
乙、でも1から透明あぽーんだ、 _| ̄|○
本スレの関係で某名前をアポーンにしてる人多いと思うから、
次スレのテンプレは某名前は、はじいてくれるとありがたい
- 5 名前:Classical名無しさん :04/04/18 23:56 ID:UP3rarDA
- >>4
あ、自分もですw
このスレが終わる頃には、NGワードを解除できるようになってるといいですね。
- 6 名前:Classical名無しさん :04/04/18 23:56 ID:1vCAWGoM
- >>1
乙
でもテンプレの
>毎週7ページの週刊少年漫画です。
9ページに固定されそうだから次スレでは変えなきゃね。
- 7 名前:Classical名無しさん :04/04/19 00:02 ID:Ozx2GV5s
- >>1
乙!
そして職人さんたちに感謝!(・∀・)
- 8 名前:Classical名無しさん :04/04/19 00:16 ID:DSxhjImQ
- >1
乙ー。今スレもまったりしっかり進んでいきますように。
- 9 名前:more than words :04/04/19 00:34 ID:TF964buY
- 絃子、笹倉先生、播磨のSSです。
スレ一発目で緊張しますが、久々に投下します。
- 10 名前:more than words :04/04/19 00:36 ID:TF964buY
- 「では、刑部先生、乾杯です」
──かちん。
グラスの音が、ささやかな喧噪がただよう店内に響き渡った。
刑部絃子と笹倉葉子は、街のとあるところにある、小さな居酒屋にきていた。
絃子が金曜の仕事を終えた後、しばらく職員室で休んでいたところを、笹倉が誘ったのだ。
絃子自身はあまり気が進まなかったのだが、それを半ば強引に笹倉が誘ったという形になった。
店内には、絃子と笹倉の他に、数人の客がきていた。皆、一週間分の疲れと鬱憤をはらすかのように、
にぎやかに酒をあおっていた。
そんな様子を、テーブルの上に肘をついた絃子は、うつろな目で見つめる。
「どうしたんですか?なんだか、元気がないみたいですけど……」
絃子の様子に気付いたのか、笹倉が心配そうに話しかけてきた。
「いや。なんでもない」
絃子はそう答えると、酒を一口あおる。そして、小さなため息が、その口から漏れた。
そんな様子を、笹倉が黙って見つめる。
しばらくの間、二人はお互いにしゃべることもなく、酒だけがすすんでいた。
一時の時間が流れた頃、笹倉が静かに口を開く。
「そういえば、あの新任の保健の先生──姉ヶ崎先生とはお話になりました?」
姉ヶ崎、その言葉を聞いたとたん、絃子の体がわずかに動く。
それに気付いてか気付かないでか、笹倉が絃子の返事をまたずに、話を続けた。
「彼女、なんだか、随分、男子生徒に人気あるみたいですね」
「──そうみたいだな」
絃子はそう言うと、再び酒で唇をしめらせた。
「美人で、良く気が回って、そして物腰も柔らかいですしね」
笹倉は、「物腰」というところで、意味ありげに絃子のほうを見つめる。
絃子は、そんな笹倉の視線に対し、一瞬険しい表情を浮かべたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻っていた。
「そうそう、この前の職員会議は大変でしたね……あ、そういえば刑部先生は、出席されなかったんでしたっけ」
絃子の視線を受け流すかのように、酒を口に含んだ笹倉は、そのまま話を続けた。
「知っていますか?その姉ヶ崎先生を、男子生徒が押し倒したって言う──」
「──知ってるよ」
絃子は、笹倉の話を遮るかのように言うと、グラスに残る酒を、一気に喉の奥へと流し込んだ。
- 11 名前:more than words :04/04/19 00:36 ID:TF964buY
- 「馬鹿な男さ。彼は──播磨君は──他の不良とは違うと思っていたんだがな」
ぶっきらぼうにそう言うと、絃子は2杯目の酒を注文した。
そんな絃子を見た笹倉は、一つ、小さなためいきをつくと、自分も次の酒を注文するのだった。
「『他の不良とは違う』か……まるで、彼のことを良く知っているような言い方ですね」
そういうと、笹倉は絃子のほうを見つめ、クスリと小さく笑う。
その目の奥には、少しイタズラな光があったのだが、それに気付かない絃子は、
ほんの少しだけ顔を赤く染める。
「ち、違──彼は、拳児クンは、私の、そう、弟みたいなものさ」
いつの間にか、呼び名が『播磨』から『拳児』に変わっていたのだが、酔いのせいなのか、
絃子はそれに気付かない様子であった。
「弟……ですか?」
「──ああ」
腑に落ちない表情の笹倉に、絃子は、播磨拳児が自分の従兄弟であることを伝えた。
「なるほど。それで、彼のことを『弟』だと……」
「ああ。拳児クンには、女兄妹はいなかったからね。私が彼の姉代わりだったのさ」
そう言うと、絃子は、2杯目の酒に口を付ける。
そして、目の高さにまでグラスを持ってくると、中の氷をかき混ぜるかのように、グラスを回した。
カラカラと乾いた音が、二人の間に響き渡る。
しばらくの間、二人はお互いにしゃべることなく、ただ黙々と酒を飲んでいた。
やがて、笹倉が、ゆっくりと口を開く。
「──刑部先生にとって、播磨君は、本当に『弟』なのですか?」
少しばかり真剣な口調。だが、その目はどこか優しい光を帯びていた。
そんな笹倉の視線を、絃子は静かに受け止める。
「──何が言いたい?」
「いえ。ただ、ひょっとしたら、刑部先生は、播磨君のことを、無理矢理『弟』として
思いこもうとしただけなんじゃないかな……って。ちょっとだけ、そう思ったんです」
笹倉は、そう言うと、クスリと、いたずらな笑みを浮かべる。
「な、何をバカな──拳児クンは、私にとって『弟』でしかないよ。
それ以上でも、それ以下でもない」
ほんの少し頬を赤く染めた絃子は、それを知られまいとしてか、残りの酒を一気に飲み干した。
そんな様子を、笹倉は、何故か楽しそうに見つめる。
- 12 名前:more than words :04/04/19 00:37 ID:TF964buY
- 「そうだったんですか?」
「ああ。いつも走り回っていて、よく私が迎えに行ったよ。
遊びに行った先で眠ってしまって、私が何回か、おぶって帰ったこともあったかな」
淡々と昔のことを、笹倉に伝える絃子。その様子は、一見普段とは変わらぬ姿だったが、
笹倉との間に流れる空気は、非常に優しいものであった。
「元気な子だったんですね」
「──そうだな。よく一緒に遊んだものだよ……少し懐かしいな」
そう言うと、絃子は、ゆっくりと目を閉じ、昔のことに、思いをはせるのだった。
『絃子ねーちゃん。ほら、カブトムシつかまえたんだぜ!』
『ほう。だが拳児クン、生き物は大切にしなければいけないぞ。逃がしてやったほうが、
いいとは思わないか?』
『そっか──そうだね。絃子ねーちゃんは優しいなぁ』
『絃子ねーちゃん、これあげるよ!』
『ほう、これは?』
『絃子ねーちゃんと俺の絵だよ』
『そうか──二人が並んで手をつないでいる絵だな。ありがとう、拳児クン』
『絃子ねーちゃん、ほら──』
『絃子ねーちゃん──』
『絃子──』
- 13 名前:more than words :04/04/19 00:39 ID:TF964buY
- 「──絃子?」
はっとして、絃子は目を覚ます。いつの間にか、辺りは暗かった。
ふと辺りを見回すと、そこは既に居酒屋ではなかった。
「お、気がついたみたいだな」
ふと声のした方を見ると、そこには、自分が良く知っている後ろ頭。
ベレー帽をかぶった、播磨拳児の後頭部が見えた。
「──あれ?私は一体──」
頭を軽く横に振る絃子。次第に意識がはっきりしてくると、自分の状況が、少しずつ飲み込めてきた。
辺りは、少し薄暗い通り道。街灯が数メートルおきにあり、その光に何匹かの虫が集まっていた。
そんな中、絃子は、自分が播磨に背負われているのに気付く。
「何故、拳児クンがここに?」
「いや、なんだか、突然電話がかかってきてよ。絃子がつぶれちゃったので、迎えに来て下さいだとさ。
それだけ言うと、名乗りもせずに切ってしまったけどな」
「──その声は、女の声だったか?」
「周りがやかましかったので、よくわからなかったが……確かそうだったかな?」
「そうか──」
(笹倉先生か)
わざわざ、播磨拳児を呼び出す辺り、なんとも小憎らしい。
絃子の脳裏に、笹倉のいたずらな笑みが浮かんだ。
「いや、ありがとう、拳児クン。もう大丈夫だ。降ろしてくれていいぞ」
自分が、播磨拳児の背中に背負われていることに、気付いた絃子は、
少しばかり恥ずかしくなったのが、降ろしてくれるよう頼んだ。
だが、播磨はそれには応じず、絃子を背負ったまま歩き出す。
「気にすんな。どうせ家まで、後少しだしな」
「だが、こんな姿を、他の生徒に見られたら、面倒なことになるぞ」
「こんな時間だし、大丈夫だろ。それに、もう変なウワサならたっちまってるしな。
今更もう一つウワサが増えたって……」
播磨はそこまでいうと、一つ大きなため息をつく。
「変なウワサ?あれは、ウワサなんかではなく、事実だろう?」
「ば、バカ!ちげーよ!あれは──」
- 14 名前:more than words :04/04/19 00:43 ID:TF964buY
- そして播磨は、背中にいる絃子に、事の次第を伝える。
自分は何もしてないこと。自分が放浪の旅に出ていたときに、少し世話になった人であること。
その人物が、自分が目を覚ましたら、急に抱きついてきたこと。
「──とうわけさ」
「そうだったのか……」
播磨拳児から、事の顛末を聞いた絃子は、何故か安堵のため息をつく。
自分の背中にいるせいか、播磨拳児からは、絃子の表情は読めない。
だが、絃子自身、自分が、何故か安心していることに気付いていた。
「では拳児クン、お言葉に甘えて、おぶってもらうことにするよ」
そう言うと、絃子は、自分の両腕を、播磨拳児の首に回し、ゆっくりと自分の体を預けた。
いつの間にか、自分よりも大きくなってしまった背中。
いつかの時よりも、ずっと力強く、大人になってしまった背中。
いつか、自分が彼を背負ったとき。あの時、まさか自分が背負われる日がくるのが、分かっていただろうか。
「お、おう」
一方播磨拳児は、いつもとは様子の異なる絃子に、少しばかり驚きを覚えていた。
自分の首に回された腕。背中ごしに感じられる体の感触。そして、自分の鼻をくすぐる、女性としての香り。
普段、自分が、自分の従姉からは感じられぬものに対して、多少なりともどぎまぎを隠せないでいた。
「──汗くさいぞ、拳児クン」
ふと、絃子の鼻を、汗の匂いがくすぐる。
「し、仕方ねーだろ!バイト帰りなんだし!」
「そうだな……だが、この匂い、決して嫌いなわけではない」
そういうと、絃子は、播磨拳児の首に回した自らの腕に、わずかに力を込める。
「そ、そうか?……な、なんか調子狂うな。いつもの絃子らしくねーぞ」
「──酔っているからな。酔っている女性には、優しくするものだ」
「わ、わーってるよ!」
- 15 名前:more than words :04/04/19 00:45 ID:TF964buY
- しばらくの間、二人は会話を交わすことなく、ただ黙って歩いていた。
空を見上げると、黒い空の中に、くっきりと浮かぶ青い月。その周りには、いつかの氷った星が瞬いていた。
どこか遠くで響き渡る喧噪の音。だが、二人の周りは静かで、ただ播磨拳児の足音だけが染み渡る。
やがて、家まで後少しというところで、絃子がゆっくりと口を開く。
「なぁ、拳児クン。私は……」
「うん?どうした?」
「私はな、その……」
珍しく口ごもる絃子。どこかもどかしく、そしてどこかためらっている、そんな様子だった。
「──絃子?」
「私は、ひょっとしたら──」
──キーンコーンカーンコーン。
昼休みを告げるベルの音が、校舎に響き渡った。
がやがやという喧噪とともに、生徒達は、昼食を取るために、思い思いの場所へでかける。
そんな中、播磨拳児は、屋上で、ごろりと横になっていた。
空は、涼やかな秋晴れ。飄々とした風が、彼の肌を柔らかにかすめる。
昼食代わりのパンをかじりながら、播磨拳児は、先週のことを、ふと思い出していた。
- 16 名前:more than words :04/04/19 00:46 ID:TF964buY
- 「ふん、酔っぱらいが……」
あの時、絃子が本気であのような事をいったのか、わからない。
ひょっとしたら、単に酔っていただけなのかもしれない。
真偽のほどは、確かめることはできなかった。なぜなら、目を覚ましたときの絃子は、
めずらしく、酔っていたときの記憶をなくしており、問いただせなかったからだ。
いや、もし、仮に記憶があったところで、問いただすことができただろうか?
播磨拳児の中に、様々な想いが交錯する。
「まったく……酔った勢いで、とんでもないこと言うんじゃねーよ……」
晴れやかな空。雲のないその空の中に、風にのって、播磨拳児のつぶやきが運ばれていった。
『──ひょっとしたら、キミのことを、好きになってしまったのかもしれない──』
(了)
- 17 名前:Classical名無しさん :04/04/19 00:49 ID:TF964buY
- 以上です。
しかし、コレ、スクランじゃないね…(;´Д`)
いや、ほんとSSは難しいです。
微妙にシチュエーションが、「Love is Blindness 」とかぶってますが、
まぁ酔ってるということで、笑ってやって下さい( ´∀`)
- 18 名前:Classical名無しさん :04/04/19 00:56 ID:MIxv/4SE
- グッジョブ!
いやホントにイトコ先生最高です
文句なしに萌える(;´Д`)
- 19 名前:Classical名無しさん :04/04/19 01:10 ID:1vCAWGoM
- >>17
一番乗りお疲れさまッス。
むず痒くなるほど絃子先生展開。
かぶってはいますが、味わいの違いがきちんと出ていて
全然問題ないかと。
あとメル欄の台詞はどのタイミングで言われたんだろう
と妄想をかき立てられます。
ある意味最もSSらしいカップル話。絃子×播磨SS、ごちそうさまでした。
さぁ出だしは好調。職人達よ続けー!
- 20 名前:Classical名無しさん :04/04/19 02:31 ID:TF964buY
- 感想ありがとうございます( ´∀`)
>>18
姉萌え&幼馴染み属性ありまくりの、漏れ的には、
イトコ先生(*´д`*)ハァハァなのです。
>>19
メール欄の台詞は、ラストの台詞と、どちらにしようか迷ったものです。
結婚という単語を使うのに、やや抵抗があったので、こちらになりました。
あと、批判要望でも全然かまいません。
文章読みにくいぞ、(゚Д゚ )ゴルァ!! でも
句読点の位置おかしいよ ( ´,_ゝ`)プッ でも
地の分がすくねえよ! ( ゚д゚)、ペッ でも
文章力ないね (゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ でもなんでもかまいませんので。
感想指摘おかまいなくどうぞ。
- 21 名前:Classical名無しさん :04/04/19 02:38 ID:YPk8PEPo
- この24時間だけでSS7本も増えてる…
また寝るのが遅くなってしまった…
ということなので感想は省かせてもらいます
職人さんたち乙でしたー。
- 22 名前:前スレ710 :04/04/19 02:41 ID:WiBE5f36
- もう書かないつもりだったが
続き書いてしまった
ネムネム
今回はなんてゆーかほとんどギャグ
沢近さんを入れたらこうなってしまいました
- 23 名前:前スレ710 :04/04/19 02:42 ID:WiBE5f36
- After #73
そんなこんなでHRも終わり、放課後になった。
八雲は玄関口で天満が来るのを待っていた。
「八雲!!お待たせ。さあ播磨くんの家に行こうか」
「え、姉さん。先輩方も?」
見れば天満の後ろに美琴と愛理の姿が見えた。
美琴の様子は普段と変わりないが愛理はどうみても不機嫌そのものだ。
「そう、やっぱり皆で謝らないとね。私が誘ったんだよ」
「私も責任の一端は担ってるからな。一番謝らないといけない奴も連れてく必要があるし」
「………………」
確かに、それはその通りなのだろうけど。愛理の態度は波乱を予感させる。
播磨さんと同様、根は悪い人ではないと八雲は納得することにした。
「それじゃあ早速行ってみようか。八雲は地図持ってるから場所わかるよね?」
「ええ、皆さん付いてきて下さい」
そして一同は播磨の家へと歩き始めた。
- 24 名前:前スレ710 :04/04/19 02:44 ID:WiBE5f36
- 暗い部屋の中。
播磨は一人不貞寝していた。
「ライバルどうこうじゃなくて完全に嫌われちまったかな」
畜生、少しは打たれ強くなったと思ってたのによ
流石の播磨も何事もなかったかのように学校へ行くことはできなかった。
漫画を描いても全くペンは進まない。
播磨の頭の中であの時の天満の声が何度もリフレインしていた。
「信じてたのに、か。今回は流石に効いたよな〜」
何度目かの溜息。同時に生気が抜けていくようだ。
「5時前か、もう動物園にいくような時間でもねーよな。
ちっ、メンドくせー。カップ麺でも食うか」
何もせずとも腹は減る。朝から何も食べていないことを思い出して播磨はキッチンへ向かった。
やかんに水を入れて火にかける。
その時、ぴんぽ〜〜んとチャイムが鳴る。
この軽い音が今の気分にはそぐわないが、とりあえずカップ麺は中断。
玄関へ向かうことにする。
- 25 名前:前スレ710 :04/04/19 02:45 ID:WiBE5f36
-
「はいはい、どちらさんで……」
ドアを開けて………………………閉めた。
何故ここに?
「播磨くん、ちょっと開けてほしいんだけど」
いや、天満ちゃん。まずは状況を整理だ。
最愛の人+αが家を訪ねてきた…………整理終了。
「悪い、ちょっと待ってくれよ!!」
とりあえずボサボサの寝起きの髪をセットする。寝巻きを着替える。顔を洗う。
舞台役者もかくやという早さでいつもの俺に変身完了!!
愛の力だぜ!!
「待たせたな。今開けるぜ」
もう一度ドアを開ける…………閉めた。
- 26 名前:前スレ710 :04/04/19 02:46 ID:WiBE5f36
- 「人の顔見てドア閉めるなんて随分なご挨拶ね」
さっきは気づかなかったぞ、金色の悪魔。
恐る恐るドアを開ける。
「あーあの、何の御用でしょうか?サワチカサン」
「私たち、謝りに来たんです」
「そう、播磨くんにあらぬ疑いをかけちゃったみたいだから居た堪れなくなって」
「私もだ。悪かったな、播磨」
「あのーそれで、サワチカサンはどうして……」
「だから謝るために来たのよ」
「え……いやマジで勘弁してくださいサワチカサン」
「人がせっかく来たってのになによそれは」
「いや……だって今殺めるために来たって……」
「……ふ〜ん、へぇ〜〜。あっそ、あなたが私をどう思っているかよ〜く理解できたわ」
「いや……その……金色の悪魔?」
ああ、しまった。言わなきゃよかった。とっても素敵な死なス笑み。
昨日の件で完全にPTSDになっちまった俺には身動きが取れん。
さようなら天満ちゃん、さようならお姉さん、さようなら動物たち。
- 27 名前:前スレ710 :04/04/19 02:53 ID:WiBE5f36
- 「はいストップ。今回は播磨に謝りに来たんだろ。また殴る気か、お前は」
「美琴、私を止めないで。一発蹴飛ばしてやらなきゃ気が済まないみたい」
「仕方ないな。ほら」
そういって周防は背後に回る。マズイ、障害が無くなればすぐにでも飛び掛って、って。
「む、うぅ。私が悪かったわよ。これでいいでしょ」
ん、いやに素直に引き下がったな。一体どうしたんだ?
らしくもない。
- 28 名前:前スレ710 :04/04/19 02:54 ID:WiBE5f36
- 「いや〜よかったな、播磨。じゃ、これ返す」
そういって周防は俺の頭にぽんと何かを載せた。
ああ、そうか。帽子だ。俺の禿を隠してた帽子。
天満ちゃんにモロ見られてんじゃねえかよ。
もう踏んだり蹴ったりつーか。
- 29 名前:前スレ710 :04/04/19 02:55 ID:WiBE5f36
-
「じゃ、私ら先に帰るから。塚本姉妹、後頼んだぞ」
「とっとと帰らせてもらうわ」
「うん、また明日学校で!!」
「また明日」
お前ら二人もう来るな。
- 30 名前:前スレ710 :04/04/19 03:01 ID:WiBE5f36
- 播磨の心の声とナレーションの区別がつけにくくなってしまった。
括弧でくくればいいとは思いつつもひとつスペース入れるだけw
最初の構想だと沢近&周防は出なかったんだけど………
Fateの凛と似てるな〜と思ってるうちにこんなことまでさせてしまった。
反省。
つーか播磨も弄り過ぎたw
マジ眠いぞ。
明日に響く
おやすみ
- 31 名前:Classical名無しさん :04/04/19 08:18 ID:rJyq1aNE
- 時事ネタPTSDワロタ
- 32 名前:前スレ710 :04/04/19 18:30 ID:WiBE5f36
- 今見直したけど書き方が全然なってないな
一人称なら一人称で割り切るべきなんだが
2回目も出だしだけ過去形だったし……
八雲は喋らないし………どうしたもんか
あ、それとPTSDは偶然です
朝テレビ見て知りました
- 33 名前:Classical名無しさん :04/04/19 23:13 ID:6jhLkPTU
- おにぎりSS書いたんだが…
今の様子だと需要ないかな?
- 34 名前:Classical名無しさん :04/04/19 23:25 ID:Ur5yrgpw
- んなことないない。色々あった方が楽し
- 35 名前:Classical名無しさん :04/04/19 23:58 ID:EGJuD4X2
- むしろ激しく希望
オニギリバンザイ
- 36 名前:a chance :04/04/20 00:38 ID:6jhLkPTU
- 「元気か、ピョートル…。俺のほうは相変わらずだ。」
ここは休日の昼下がりの動物園。キリンのエリアの前で男が一人佇んでいる。
ヒゲにサングラスといったその風貌は、誰が見てもこの場にそぐわないと思うだろう。
事実、子供連れの親が彼のほうに目をやり、不審げな視線を向けている。
だが、その男はそんな周りの目を気にすることなく、寂しげな表情のまま柵の向こうにいるキリンに目をやっている。
「子供達にも人気なんだってな、俺も鼻が高いぜ。」
笑みを漏らすが、憂いの表情は未だに残ったままだ。
彼の名前は播磨拳児、動物に愛される不思議な男―――――
ここにいる動物のうちの何匹かは、元々彼が飼っていた。
しかし、一個人で大型動物を飼育できるわけがなく、やむなくこの動物園に預けられることとなった。
予定という未来を縛ってしまう行為を播磨は嫌っているが、ここには何度も通っている。彼にとっては唯一といっていい習慣だった。
時間が余ってしまったり、私生活で行き詰ったりするようなことがあれば自然にここへ足が向くようになる程に――――――
「あ……播磨さん。」
そんな彼に話しかける女性が一人。
「ん?妹さんか。ここで会うのは久しぶりだな。」
彼女の名前は塚本八雲。かつてこの動物たちを守るために、彼に尽力したメンバーの内の一人だ。
彼女もまた、時々この動物園に訪れては動物たちに会いに来ていた。
「もう…一ヶ月くらい経ちますよね、ここに引き取られてから。」
「そうか……もうそんなになるか。」
夏の終わりに起こった、忘れることのできない小さな戦いに思いを馳せる。
- 37 名前:a chance :04/04/20 00:44 ID:6jhLkPTU
-
播磨がこっそり飼っていた動物たちを守り抜こうとした一日。
新学期が始まる学校では飼えなくなり矢神神社で飼っていたが、隠しきれるはずもなくたちまち地元では噂となった。
他人に動物たちの世話を任せることを拒んだ播磨はなんとかしようと試みる。その気持ちを汲んだ八雲も然り。
地元の催しの劇で使用された着ぐるみを使い、調査に来たレポーター達の目を欺こうとした。
しかし、彼らの他にクラスメイトの高野や弟の修司、八雲の親友のサラも力を貸したものの、結局は保護されることとなってしまった。
「あの…残念でしたね……」
「いや、これで良かったんだよ。どうせ俺一人で面倒見るのには限界があっただろうしな。」
帰り道の途中で播磨と交わした言葉を、八雲は鮮明に記憶していた。
その時の、辛さを必死でこらえる彼の表情と共に。
「今日はもう帰んのか?」
「いえ…、来たばかりですけど……」
お互いに黙ったままの状態を嫌ったのか、唐突に話を振る播磨。
二人は今、ピョートルのスペースから離れ、横に並びながら歩いている。無意識に八雲の歩幅にあわせる播磨。
「そうか…、俺も来たばかりだし、どうせなら一緒に見て回るか?」
- 38 名前:a chance :04/04/20 00:48 ID:6jhLkPTU
-
「え…?」
唐突な播磨の誘いに一瞬動揺する。
これが他の男なら、八雲は困り顔でやんわりと断っただろう。
しかし、この時は何故か、そんな気にならなかった。
誘った相手が播磨だったからか。普段から八雲は、彼の気持ちを読み取ることはできない。
そしてそれは今もだ。
それは播磨が、八雲に対して特別な感情を抱いて話しかけてはいない何よりの証拠だった。
「あ…はい、分かりました。」
播磨の顔を見ながら、ゆっくりとした口調で返事をする。
それを聞いた播磨は、眉尻を下げ、口許に少しだけ笑みをたたえる。
「よし、じゃ行くか!」
「あ…はい」
端的な言葉で意思を疎通させる二人。
隣にいる相手との距離を少しだけ、ほんの少しだけつめた。
「今日はいつもの友達と一緒じゃねえのか?」
「あ…サラなら、後でここに来るはずです。」
なんともぎこちない会話が続く。
播磨が、自分の描いた漫画の評価を聞きたくて校外で会うことは度々あったが、プライベートの場合は初めてだ。
(やべーな、こういう時ゃ何を話せばいいんだ?)
普段の天満へ対する積極さはどこへやら、話題に窮する播磨。自分から誘ったものの、心内で頭を抱える。
- 39 名前:a chance :04/04/20 00:51 ID:6jhLkPTU
- 一方、八雲はそんな播磨を見ながら考えを巡らす。
(どうして…私を誘ったんだろう……?)
キャンプの際に交わした会話で八雲は、播磨が自分の姉である天満を大切に想っていることは知っている。
それなのに何故、自分を誘ったのか?
(何を考えてるのか……やっぱり分からない。)
やはり、ただの善意で誘ったのだろうか?その結論にたどり着いた八雲は、誰にも聞こえない程度に小さく息を吐いた。
その小さなため息にはどんな意味がこめられているのか
そしてそのことに、八雲本人は気付いているのか――――――――――
「……い、おい、どうした妹さん?」
物思いに耽(ふけ)っていた八雲を訝しがったのか、少々焦った声で話しかける播磨。
「え…あ……な、何でもないです…。」
どもりながら返答する八雲。
今、彼女は自分自身に起こっている小さな変化に気付いていた。
(どうしてだろう……私、少しだけ…ドキドキしてる…?)
そっと自分の胸元に手をやる。答えを模索するために。しかし、当然ながら、そんな行動では導き出すことなどできない。
また黙り込んだ八雲を見て、播磨の焦りも次第に加速していく。
(やべーな、妹さん、機嫌が悪いのか?)
誘ったことに、段々と後悔する気持ちが生まれていた。
全く無言のまま、足音だけが二人の耳にひたすら届く。それが互いにほんの少しだけ、苦痛だった。
- 40 名前:a chance :04/04/20 00:55 ID:6jhLkPTU
- 一方、こちらは八雲に遅れて動物園に着くサラ。
「ちょっと遅れちゃったな、八雲はどこにいるんだろ?」
そう呟きながら、彼女に連絡を取るために携帯電話を取り出す。
と、その時。彼女の目に映ったのは二人仲良く並んでいる(ようにサラには見える)八雲と播磨。
「…………」
その光景を見たと同時に、サッと木陰に身を隠すサラ。
八雲に掛けようとした電話を急いで切り、親指を動かし彼女へメールのメッセージを書き込んだ。
そして送信し終わると、パチンと携帯電話を閉じる。
「頑張ってね、八雲。」
フフッと、少し笑みを湛えながらそう一言言い放ち、くるっと身を翻した。
そして、こちらは八雲。
(サラ……遅いな…)
親友の到着を待ちわびる。会話がなくなった現状を、彼女なら打破してくれると信じたからである。
きっと明るい雰囲気にしてくれるに違いない。早く来てくれないだろうか。
そこへ、八雲の携帯のメール着信音が響いた。結局、来たのは彼女ではなく、彼女が送った八雲へのメール。
「友達からか?」
「え…ええ、そうみたいで…す……」
「?」
段々と歯切れが悪くなる八雲の返答にハテナマークを浮かべる播磨。
八雲は携帯の画面を見た状態で固まってしまっている。
(サ、サラったら……そんなんじゃないのに………)
「どうしたんだ?なんか変なことでも書いてあったのか?」
たまらず尋ねる播磨。
「い、いえ、な…なんでもないです。」
- 41 名前:a chance :04/04/20 00:58 ID:6jhLkPTU
- 八雲はそれに返答するが、携帯を持った手で自分の顔を隠す。心なしか、彼女の顔は赤く染まっているように見える。
サラからのメールには、こんなメッセージが書かれていた。
『デートの邪魔みたいだから帰るね。頑張って!八雲!!』
急にしどろもどろになる八雲の様子を知ってか知らずか、播磨は構わず話を続けた。
「確かその友達って、パンダの着ぐるみを着てた子だよな?」
「あ……はい、…それで高野先輩はキリン、修治君はネズミの着ぐるみで、播磨さんはゴリラでしたよね。」
「そうだったっけかな。」
「そうですよ。…播磨さん、ゴリラの着ぐるみ着てたのに、劇の題名を『コ猫物語』って言ったりするから……少し焦りました。」
「それなら、妹さんだってライオンの着ぐるみ着て、小さな声で『ガオ!』って吠えてただろ?」
「あ……あれは…、その……」
サラのメールがきっかけとなったのか、ようやく会話が盛り上がりだす。
八雲は心の中でこっそりと、そのことに感謝した。
それから二人は、播磨が飼っていた動物たちのスペースを回りながらとりとめのない話を続ける。
普段は一匹狼の播磨、そして、サラ以外に友人が特にいない八雲の二人にとっては、その感覚はとても新鮮で、とても楽しいものだった。それこそ時間を忘れるくらい。
周りの人にから見ると、一見、不良と美少女のアンバランスな組み合わせに首をかしげる。
しかし、その二人の表情や雰囲気から顔を綻ばす人も珍しくなかった。
やがて、全ての動物を見終わり、ベンチに腰掛ける二人。
(さて…そろそろ帰るか。)
そろそろ話題も尽きてきた。播磨がその結論に行き着くのも不思議ではないだろう。
- 42 名前:a chance :04/04/20 01:00 ID:6jhLkPTU
- そろそろ話題も尽きてきた。播磨がその結論に行き着くのも不思議ではないだろう。
しかし――――急に自身の右肩に重みを感じた。
「…くぅ………すぅ…」
「ん……?」
視線を前から右に向ける。そこには自分にもたれかかり、小さく寝息をたてる八雲の姿。
「寝ちまったのか…。」
(あちこち連れまわしすぎて、疲れたみたいだな。悪いことしちまったか)
少々申し訳ない気持ちになる播磨。
厳密に言うと、八雲は疲れて眠ってしまったわけではない。
唐突に眠気に襲われてついつい寝入ってしまうのだった。30分程で目が覚める時もあれば、2時間以上寝てしまうこともある。
それが体質なのか、癖なのかは本人にも分からない。
(マイッたな、無理やり起こすわけにもいかねーし)
自分に寄りかかったまま、安らかな寝顔をしている。そんな様子の彼女を起こして帰ろうとまでは思えなかった。
かといって、ここに彼女一人置いて、自分だけ帰るわけにはいかない。
「仕方ねーな、起きるまで待つか。」
別に急ぎの用事があったわけではない。家に帰れば、テレビを見るか、漫画の原稿を描くくらいしかやることがないのだから。
- 43 名前:a chance :04/04/20 01:01 ID:6jhLkPTU
- ――――――八雲が寝てから40分ほどが経過した。
それでも彼女が起きる様子はない。
空もほんの少しだけ茜色に染まってきていた。
「少し……風が吹いてきたな…」
播磨の髪が風になびく。そして、八雲の髪も。その八雲の髪が、播磨の頬をかすかに撫でた。
その髪を右手にそっと乗せる播磨。
そして親指と人差し指、中指で挟み、スッといじった。
(やっぱ女の子ってーのは綺麗な髪してんなぁ)
そんなことを考える播磨。そのまま視線を自分の手から、彼女の髪を伝い、顔をまじまじと見つめる。
(今まで顔をじっと見ることはなかったが…やっぱこうして見ると、天満ちゃんの妹だな。綺麗な顔してやがる)
ついついそんなことを考えてしまう。
その時、
「ん……」
八雲が体をさらに摺り寄せ、播磨が着ていた制服のすそをキュッと優しく掴んだ。
播磨が髪をいじってた事で、つい寝返りを打ってしまったようだ。
「………」
そんな八雲の様子を見た播磨は、髪を掴んでいた右手を離し、彼女の首の後ろに腕を通して彼女の肩を組んだ。
今、周りには誰もいない。八雲も眠ってしまっている。その行動にどんな意味があるのか、それは播磨にしか分からない――――
- 44 名前:a chance :04/04/20 01:03 ID:6jhLkPTU
-
「ん……あれ……?」
ようやく目を覚ます八雲。
空は一面、夕日に染まっている。黄昏時になっていた。
「お、起きたか。」
「あ……播磨さん…、わ、私…また………」
目を覚まし、もたれていた播磨の体から起き上がる八雲。播磨は彼女に気付かれないよう、組んでいた右手を元の場所に戻した。
「す…すいません、播磨さん……」
「いいって、気にすんな。どうせ今日、他にやることなかったんだしよ。」
「で……でも」
なおも謝ろうとする八雲を制し、連れ立って動物園から出る二人。
そして播磨は、出入り口のそばに停めてあった愛車であるバイクにまたがる。そのままエンジンを入れる。
「今日はその……楽しかったです。」
「ああ、俺もだよ。」
そう言葉を返す播磨。だが、いつまで経っても出発する様子がない。
「……あ…あの」
たまらず尋ねる八雲。
「ん?」
「帰ら…ないんですか?」
「いや、待ってんだけど。」
一瞬、播磨が何を言っているのか理解できない八雲。
――――――何を待ってるんですか?
八雲がそう聞こうとした時だった。
- 45 名前:a chance :04/04/20 01:04 ID:6jhLkPTU
- 「早く乗ってくんねえかな。」
「…え………?」
困惑する八雲に、平然とした播磨。
「家まで送っていくよ。妹さん、こっから家遠いだろ?」
「で、でも……そんな…迷惑ですし…」
「いいって、気にすんなよ。」
そう言いながら、ヘルメットを渡す。それをおずおずと受け取る八雲。
「あ…あの…」
「ん?」
受け取ったヘルメットで口許を隠しながら、少々顔を赤らめている八雲。
「……ありがとう………ございます」
消え入りそうな声で礼を述べた。
普段歩いて通る道や風景も、バイクに乗ってみると、流れていく周りの情景とは思えないほど別の場所に思えた。
播磨同様、バイクにまたがり後ろに座っている八雲。
当然ながら、互いの体が離れていては危ないので播磨の背中に抱きついている状態となっていた。
仕方ないこととはいえ、今までそんな行為をしたことはない。軽い眩暈が起こる。
(…大きな……背中)
しがみつく播磨の後ろ姿に、そんな印象をも覚える。
夕日でオレンジ色に染まりながら、周りに誰も通ってない道を走り、耳にはエンジン音と地を走る音が聞こえてくる現状。
今のこの時間がもっと続いて欲しい、まだ終わってほしくない――――
八雲は強く、そう思った。
- 46 名前:a chance :04/04/20 01:05 ID:6jhLkPTU
-
(着いちゃった……)
「着いたぜ、妹さん」
八雲がそう思ったのと、播磨がそう声をあげたのはほぼ同時。
バイクは塚本宅の玄関前に停車していた。
「…あの………本当に、ありがとうございました…」
ヘルメットをぬぎ、播磨にそれを返す。そしてもう一度礼を述べる。
すると、そこに―――
「八雲ー、おかえり遅かったね…って、あれ?播磨君、なんで八雲と…」
「おおっ!天満ちゃ…塚本!偶然だな!!」
急に想い人が現れて動転したのか、ここが天満に家でもあることをつい忘れる播磨。
ちなみに、八雲と二人でいた時の様子からは、浮かれてしまったのか豹変している。
「どうして播磨君が八雲といるの?」
「ん?それはだな…」
二人が仲良く話してる。
八雲一人が蚊帳の外。
(播磨さん……やっぱり…姉さんのことが……)
そんな様子を見て八雲は、播磨がやはり自分の姉が好きだということを再認識する。
だが、しかし。
八雲は誰にも気付かれないよう顔を曇らせた。それは無意識にだったのかもしれない。
- 47 名前:a chance :04/04/20 01:08 ID:6jhLkPTU
- 「じゃあね!播磨君!」
「オウ、また明日学校でな!!」
そして、彼女が考えに耽っている間に別れを告げ去っていく播磨。
―――もう少し、話をしたかったな…
彼の去っていく姿を瞳に映しながら、フッとそんな思いをめぐらす八雲。
ボーっと立ったままの八雲に、天満はたまらず声をかけた。
「どしたの、八雲?何かあった?」
声をかけてくる姉に、八雲は目を合わせないまま呟いた。
「……………なんでも…ない」
そっけない様子で家に入っていく。
そんなつれない妹の態度に、天満は頭にハテナマークを浮かべた。
「…?…八雲どうしたんだろ…」
(どうしたんだろ…私……)
台所で夕食の準備をしながら、先ほど、天満に対して抱いた感情にとまどう。
播磨と自らの姉が楽しそうに話してるのを見て、チリチリと痛んだ胸。
味わったことのない、どうしようもない辛い気持ちが圧し掛かったあの感覚。
それを一言で言うならば、憎悪でも、不満でもない。―――――――あれは…嫉妬?
(姉さんに対して、あんな気持ちを抱くなんて…)
その対象が大好きな姉であったことに、更に自己嫌悪に陥るのだった。
更に八雲が播磨にたいして抱いた感情、それは――――――――――――――――
―終―
- 48 名前:a chance :04/04/20 01:13 ID:6jhLkPTU
- 需要があったみたいなので投下しましたw
が、41の最後と42の最初の文が被ってしまった…非常にスマソ
以前、自身が書いたSSを元に絵を描いてくれた人がいまして
(確か、過去絵置き場にあったはず)
その人がおにぎり派だったので感激と感謝の気持ちをこめて書いてみました。
八雲が播磨を意識しだすならこんな感じかな?
感想とか指摘をいただければ幸いです
- 49 名前:Classical名無しさん :04/04/20 01:22 ID:EGJuD4X2
- 特に言う事はないな
ただし( *゚∀゚)bグッジョブ!と言う言葉を除いてだが
あと、サラには携帯電話じゃなく、公衆電話を使って欲しかったな
機械に弱いということだから
- 50 名前:Classical名無しさん :04/04/20 01:30 ID:t32FN8pA
- GJ!最高でした。
嫉妬する八雲って( ´∀`)イイネー
これから嫉妬心もどんどん強まっていくわけですね?
サラも何気にいい味出してるし。これで今夜は安らかに眠れそうでつ
- 51 名前:Classical名無しさん :04/04/20 01:44 ID:6jhLkPTU
- <<49
あー!しまったーー!!
あんな基本設定忘れてしまうとは………
まだまだだ、俺_| ̄|○
- 52 名前:前スレ710 :04/04/20 01:58 ID:WiBE5f36
- 投稿します
あと2、3回で終われると思うが……
学業優先しねーとw
- 53 名前:前スレ710 :04/04/20 02:00 ID:WiBE5f36
- After #73
「なんだってんだよ。全くよ」
言いたいことだけ言って、ついでに禿頭晒していきやがった。謝罪が足りてねーぞチクショウ。
にしても天満ちゃんブンブン手ぇ振って、やっぱ可愛いぜ。
「あの……播磨さん」
「おっとこんな所で立ち話ってのも変だな、中入んなよ妹さん。
て、塚本も中入んな。何か飲みもんだすからよ」
「はい……お邪魔します」
「それじゃ私もお邪魔させてもらうね」
「どーぞどーぞ気兼ねなく。自分の家と思ってくれて構わんぞ。むしろ自分の家だ」」
播磨、誇張0。立場を忘れて絃子に聞かれるとかなりマズイことを口走っている。
「あはは、ありがと。でもそう言ってくれると嬉しいよ」
「まあ座ってくれや」
大き目の座布団を3つ並べる。
と、そこにヤカンの噴く高い音が鳴り響く。
- 54 名前:前スレ710 :04/04/20 02:01 ID:WiBE5f36
-
「お、ちょうど湯が沸いたみて―だな。今飲みもん淹れるからな、二人ともお茶でいいか?」
「それじゃ、お茶お願いするね、八雲もそれでいいよね」
「ええ、それはいいけど。播磨さん、お腹空いてるんじゃ……」
八雲が指摘する先を見るとプラスチックの包装を剥がしたカップ麺が割り箸を添えてテーブルの上に置いてある。
「ん、ああ、まあそれは気にしね―でくれ。折角塚本が来たのに茶も出さないわけにはいかねーだろ」
途端に天満の眼差しがきつくなる。少しお姉ちゃんモードが入っている。
「播磨くんちゃんとご飯食べたの?」
「あ〜いや、今夕飯にしようと思っててな」
「お昼は?」
「あ〜寝過ごしちまってな」
「朝ご飯は?」
「あ〜それもちょっと食べる気にならなくてな」
「しっとだうん」
いきなり両肩を掴んで全体重をかける。
空腹で少しフラフラしていた播磨はその場に崩れ落ちる。
- 55 名前:前スレ710 :04/04/20 02:03 ID:WiBE5f36
- 「八雲」
「播磨さん、お台所お借りしてもいいですか?」
天満の呼びかけに八雲が答える。
ここまで言われたら八雲も一人では言い出せなくともその気は満々だ。
「え?そりゃーいいけどよ。塚本が何か作ってくれるのか?」
「モチのロン!!任せてよ」
「え……姉さんは座ってても」
「う〜ん、確かジャガイモと人参くらいはあったはずだが。あとキャベツと玉葱に、牛肉か」
「それならカレーが作れるよ!!」
「ね、姉さん……」
「お〜カレーなら俺の好物だ。5,6杯は軽く食えるぜ」
「奇遇だね!!カレーは私の得意料理だよ!!」
「えっ、ちょっ、姉さんのアレは……」
「そうか!!楽しみにさせてもらうぜ」
「望むところだよ!!」
「あ………」
- 56 名前:前スレ710 :04/04/20 02:04 ID:WiBE5f36
- そう宣言して天満はキッチンに突貫した。
火がついた天満を止めることはできない。
既に冷蔵庫を漁り始めているし、なんとか主導権を取り戻すしか道はない。
「その………播磨さんはテレビでも見て待っててください、
きっとおいしいカレーを作りますから」
天満の料理にご機嫌な播磨の為にも作業の乗っ取りを決意する八雲だった。
- 57 名前:前スレ710 :04/04/20 02:09 ID:WiBE5f36
- ちょっとまずいな
天満が止まらねぇ
八雲に発破かけるだけのはずだったのに暴走してる
これが俗に言うキャラが動き出すってやつか
次は播磨家の食卓 with 塚本姉妹
播磨が倒れませんように
- 58 名前:前スレ710 :04/04/20 02:18 ID:WiBE5f36
- 後書き追加
あんまり長々と書いてあると読むのも面倒ってのが自分の考えなんで
初めに比べてどんどん地の分を減らしていってるんですけどとうですかね?
心理描写とかは最低限で後は読み手に任せるのがいいと思ったんですがうまくいっているでしょうか?
- 59 名前:Classical名無しさん :04/04/20 08:40 ID:77jlXY6.
- >>58
はっきり言わせてもらえば独りよがりの作品になりつつある。
まず連載という形式だが
これが「一見さんお断り」なのは週刊雑誌を読んでいるのだから
分かると思う。
あなたの作品を追尾している人がいるかどうかは定かではないが
初の投稿ならば、残り二、三回分も一度に纏めて一つの作品とした方が
良かったように思える。
過去にも連載作品はあったが、それはテーマだけが固定化されており
様々なSSを見せるという、地味ながらも多くの称賛を受けた作品だった。
別にそれを見習えというわけではないが
最初の投稿から作品の輝きがどんどん色あせていくように感じられる。
文章を読むだけで、影響を受けた作品が分かってしまうのも残念だ。
確かに世には面白い作品が溢れている。
しかしそれを吸収し、そのままはき出すのでは劣化コピーと言わざるを得ない。
あなたは何を書こうとしているのか、何が書きたいのか、もう一度自問することを勧める。
文章力そのものはそれなりの水準に達しているようだが
いかんせん勢いで書いている感がありありと浮かばれる。
人に文章を見せるのだから、推敲はきちんと行った方がいい。
誤字や脱字のことだけではなく、人に文章を読ませることを
意識した方がいい。
最後に私見だが、地の文を減らす事による安易な読みやすさを追い求めるのも結構だが
それをあとがきで言うのは戴けない。
SS職人たるもの作品でそう解釈させるべきだ。
- 60 名前:Classical名無しさん :04/04/20 11:41 ID:tFg33Y9I
- 連載良いじゃん。追って読んでる人だって沢山いるんだし。楽しんで読んでますよ
短編ばっかりだと寂しいし
ただ、勢いにまかせて書いてる気がするっていうのは同意かな。
最初の頃の話の方がもっと繊細さがあったような気がします。
心理描写とかに関してもね
- 61 名前:Classical名無しさん :04/04/20 12:26 ID:W3rOnPx.
- >>60
ほぼ同意。
- 62 名前:change step :04/04/20 15:35 ID:Ji.f0ClU
- 放課後になり、教室は人がまばらな状態になってきた。沢近愛理がいつもの友人たちの
所へ向かって歩いている途中、ふと何気なしに席に座っている播磨拳児を見た。すると、
彼が八雲にメールを送信しているところを見つけてしまった。
「あなた、なんで天満の妹さんのアドレスを知っているのよ!」
「お嬢、人のメールを見るとは何てやつだ……」
うっ、と苦い表情を浮かべなら沢近は言い訳をしようとする。
「メールの内容までは見てないわよ。送信しているところを見ただけよ!」
播磨はその言葉を聞いて少し安心した。どうやら、原稿のことがばれなくてほっと
しているようだ。そこに突然、委員長の雑務をしていた花井が
「なにっ!貴様なぜ八雲君のメールアドレスを知っている?」
と大声を上げて、
「僕だってまだ知らないのに……。こうしてはおられん!」
と言って、播磨に詰問するのも忘れて廊下に飛び出して行ってしまった。
どうやら八雲のところにメールアドレスを聞きに行くみたいだ。
「ちょっと、花井君。まだ、仕事が終わってないわよ!」
舞の言葉も虚しく花井はすでに教室を出たあとで、もう後の祭りだった。
彼女の手には折れたチョークの残骸が寂しそうにしていた。
- 63 名前:Classical名無しさん :04/04/20 15:36 ID:Ji.f0ClU
-
「驚いたー……。あ、あいつに逃げられた!」
沢近が驚いて花井と舞を見ていた間、播磨はまんまと逃げ出したみたいだ。そこで怒り
の矛先――といっても何で怒っているのか自分でもよく分かっていないが――を天満に
向けた。
「ちょっと、どういうことなの天満?」
「なーに、愛理ちゃん?」
「なんで、あいつがあんたの妹さんのアドレスを知っているのよ?」
「さー、なんか最近、八雲は播磨君と仲がいいみたいだよ」
どこか嬉しそうに言う天満。
「あんたはそれで心配じゃないの!」
「うん、それでね、私も八雲に大丈夫か聞いたんだけど、八雲に心配ない、って
言われちゃったよ」
「八雲は天満と比べるとかなりしっかりしているからね」
晶がかなりの部分を少し強調して言い、それに続いて美琴も同意した。
「確かにそうだな」
「あー、ひどい、晶ちゃん、美琴ちゃん!」
と頬を膨らませて文句を言う天満。
- 64 名前:change step :04/04/20 15:37 ID:Ji.f0ClU
- それでも、沢近は食ってかかった。
「だからって、ただ見ているわけには行かないでしょ!」
「うん、だからね、私も八雲から播磨君のアドレスを聞いて、仲良くしてね、ってメール
を送ったよ。あの子にしては珍しくの男友達だから、私もやっぱり仲良くしてほしいと
思ってね」
ちなみにそのメールが届いて播磨が大喜びしたのは言うまでもない。
「でも、それだけじゃ……。て、あんたまであいつのアドレスを知っているってこと!
確か、晶も知っていたわよね?」
「ええ、あれ、やっぱり愛理も彼の連絡先知りたいの?」
「そんなわけないでしょ。まさか美琴まで知っているなんてことはないでしょうね?」
そう沢近が尋ねると、美琴が答える前に晶が
「あら、美琴さんも知っているわよ」
と言い、沢近を驚かせた。しかし、本当はその真相を晶は知らなかったりする。
- 65 名前:change step :04/04/20 15:38 ID:Ji.f0ClU
- ただ単に、今冷静に物事を考えられなくなっている沢近にカマをかけただけである。
そのことに気づいた美琴も晶の調子に合わせた。
「ああ、キャンプに行ったときに教えてもらったよ。その時、晶も一緒に教えて
もらったんだよな」
「ええ、そうよ」
「うそ……」
案の定、沢近は晶のカマに引っかかったみたいだ。
「ということは、播磨君のメールアドレスをこの中で知らないのは愛理だけね」
晶は妖しい笑みを浮かべながらそう言う。
「わーい、愛理ちゃんだけ仲間はずれだー」
嬉しそうに言う天満。沢近は天満にバカにされたのが悔しかったのか
「うるさいわよ、天満。それよりあなた、烏丸君のアドレスは知っているの?」
と反撃し返した。
- 66 名前:change step :04/04/20 15:39 ID:Ji.f0ClU
- 「え……。あー知らないよ、わたし」
と絶句してから大声を上げ、天満はいきおいよく立ち上がって廊下のほうへ走りだして
行ってしまった。どうやら、天満も花井と同じく烏丸にメールアドレスを聞きに行くみたいだ。
「あいかわらず鈍くさいわね……」
「あら、あの子らしいじゃない。さて、私は部活があるからもう行くけど二人はどうする?」
晶は沢近をからかうのを止めてそう言う。
「あー、あたしはもう帰るよ。沢近は?」
「私はちょっと用があるから……」
と言うと、晶と美琴は特に何も追求せずに分かれの挨拶だけ言った。
「そう、じゃー、さよなら」
「じゃーなー」
「ええ」
沢近はどこか気の抜けた返事を返し、二人は教室を出て行った。
- 67 名前:change step :04/04/20 15:41 ID:Ji.f0ClU
-
沢近は帰らずにまだ教室に残っていた。
そして、ずっと先程のことについて考えていた。
自分だけが播磨のアドレスを知らないという事実。
それがなぜか無性に悔しくて、やりきれなくて、苛立ち、悲しかった。
だからと言って天満たちはもちろんのこと、播磨に直接聞くだなんて、
自分のプライドが許さない。なぜもっと素直になれないのだろう。
そんな自分に無性に腹が立っている。
何かきっかけはないだろうか。
そういえば頭のことさえまだ誤っていない。
つくづく頑固で融通が効かないな、と自分をあざ笑ってしまった。
もし、少しの素直さと少しの勇気が私にあったら――。
- 68 名前:change step :04/04/20 15:46 ID:Ji.f0ClU
-
そのようなことを考えていると、教室の扉が開く音がした。
「あれ、お嬢、まだ残っていたのか」
入ってきたのは播磨だった。気がつくと自分以外の生徒はいつのまにかすでに帰って
いたみたいだ。沢近はさっき考えていたことを思い返しながら意を決して聞いてみた。
「ねえ、まだ頭のこと怒っている?」
「ふん、当たり前だろ」
と言うと、沢近の態度が変わったのに気づいたのか
「いえ、本当はもう怒っていません、サワチカサン」
と言い直した。だが、その態度は怒りでなく、落胆であった。
「ごめんなさい」
「え……」
播磨は信じられない台詞を聞いて絶句した。
- 69 名前:change step :04/04/20 15:47 ID:Ji.f0ClU
- 「お詫びになにかさせて……。そうだ!」
何か思いついたらしく、メモ帳を出してさらっと何か書き、それを切り取って播磨に
無理やり渡すと、
「これ私の携帯のアドレス。明日学校休みでしょ。だから、ご飯でもご馳走してあげる。
私はもう帰らなくちゃいけないから、詳しいことはメールでやりとりして決めましょう」
と沢近は顔を赤めながら早口で喋り、言い終えると、教室の出口の方へ駆け出して、
「これは命令だからね。後でちゃんとメールを送りなさいよ」
途中振り返りそう言い残して、教室を出て行ってしまった。
播磨はわけ分からず、口をポカーンと半開きにしたまま、しばらくの間突っ立っていた。
もちろん、この命令に逆らえるはずもない播磨であった。
沢近は廊下を走りながら、どこか少し嬉しそうに、そしてどこか少し恥ずかしそうにしながら
こう考えていた。
『あいつにご馳走する料理はもう決まっている。それはもちろん私の手作りのカレーだ』
――Fin.
- 70 名前:前スレ629 :04/04/20 15:48 ID:Ji.f0ClU
- というわけで2作目です。本当は幽子SSを投下する予定でしたが、最近なぜか幽子SSが
が多かったの、急遽こちらを先に完成させて投下することにしました。にしても、今回
沢近を書くのにすごく苦労しました。
あと、前回皆さんに頂いたアドバイスを元に文体が硬くならないように書いてみたつもり
ですが、なかなか難しかったです……。
なので、またアドバイスを貰えるとうれしいです。
- 71 名前:Classical名無しさん :04/04/20 17:17 ID:MIxv/4SE
- GJでつ
面白かたったですよ
必死な沢近タソ(;´Д`)ハァハァ
- 72 名前:Classical名無しさん :04/04/20 18:04 ID:KlhVAudQ
- 「あ、あの、播磨さん…」
「ん?何だい妹さん」
「…刑部先生とはどういう関係なんですか?」
「!!!」
「じ、実は昨日、播磨さんと先生が一緒に買い物をしてるところを見てしまったんです…」
「……」
「それに夏休みに播磨さんの動物達の世話を先生が見てたのとか…
お願いです、誰にも話さないから本当のことを話してください播磨さん!」
「……」
「……」
「…ちっ、仕方ねぇなあ。誰にも言わねぇでくれよ?」
「は、はい」
「実はその…ちょっと訳ありで一緒に住んでるんだよ」
「……」
「その…あれだ、要するに俺の従姉妹なんだよ」
「(「俺の絃子」…やっぱりそういうことなんだ)あ、はい、わかりました…」
「…おいどうした妹さん?」
「え?」
「!!!…お、おいおいおいおいちょちょちょちょっと待ってくれ、俺なんか妹さん泣かせるようなことしたか?」
「え、私、泣いて、ますか…?」
「いやいやいやいや、だからその…何かよくわからないがとにかく申し訳ねぇってうぉぉっ!?」
- 73 名前:Classical名無しさん :04/04/20 18:05 ID:KlhVAudQ
- 「…すいません播磨さん、しばらくこのままでいさせて下さい…」
「あーいや、別に俺は構わねぇんだが、その…人に見られるとだなぁ」
「……」
「あーだからその、妹さん?」
「…刑部先生に見られると困るんですか?」
「へ?」
「私に胸を貸しているところを刑部先生に見られたくないんですか?」
「???…まぁ確かにイトコに見られると後でからかわれたりして面倒は面倒だが」
「そうなんですか…私だったらとてもじゃないけどからかうだけじゃ済ませられないです…先生やっぱ大人なんだな…」
「はい?高校生の従兄弟が困ってるのを見てからかう教師の何処が大人なんだい妹さん」
「え?だって先生と播磨さんは…」
「いやだから従姉弟同士でその誼で同居してるんだが」
「えっとその…つまり…その『イトコ』ってのは血縁関係の?」
「あぁ」
「従うに兄弟姉妹って書くやつですか?」
「そうだ」
「親同士が兄弟姉妹って意味のですか?」
「…それがどうかしたのか妹さん」
- 74 名前:Classical名無しさん :04/04/20 18:05 ID:KlhVAudQ
- 「す、すいませんっ!私『俺のイトコ』っての勘違いしてそれで播磨さんと刑部先生が…
その…同棲してるんだと思って思わず取り乱してしまってその…」
「はぁ」
「ほ、本当にすいませんでした播磨さん」
「…あーいや、俺の方こそ紛らわしい言い方して済まなかった」
「じ、じゃあこれでっ!」
「あ、あぁ…また今度な妹さん」
その後。
「どうしよう私取り乱してあんな恥ずかしいことを…今度から播磨さんの前でどんな顔したらいいんだろう…」
「妹さん俺とイトコが同棲してると勘違いして泣いてたな。俺が天満ちゃんを裏切ったと思って
あんな悲しむなんて優しい姉思いのいい娘さんだぜ…さすが天満ちゃんの妹だ。
安心してくれ妹さん、俺は絶対に天満ちゃんを泣かせるようなマネはしねぇぜ!」
…なんだかなぁ。
Fin.
- 75 名前:前スレ710 :04/04/20 18:16 ID:WiBE5f36
- >>59
痛いところ突かれました
確かになにやってるのか自分でもわからなくなってきてまして
最後まで話は考えてあるんですがどうにも迷走してしまって
それと次は全部書いてから投稿することにします
こうやって投稿するのも初めてでルールを知らなかったのもありますが
無知もそれは罪だと思いますから陳謝します
フォローしてくださった方ありがとうございました
- 76 名前:前スレ710 :04/04/20 18:37 ID:WiBE5f36
- ぐあ、言い回しが偉そうだ_| ̄|○
今度から3回見直すことにします
- 77 名前:Classical名無しさん :04/04/20 18:54 ID:ZFAzEowU
- >>74
良いですね
「絃子は俺のイトコだ!」発言は本編でもきっとあると信じてますよ
>>75
俺は長編の場合は何回かに分けてもが良いと思うんだが
むしろ分けて欲しい。連投規制もあるし
- 78 名前:Classical名無しさん :04/04/20 22:12 ID:6jhLkPTU
- なんか最近、投下が多いな
SS職人としては、感想が少ないのはちと悲しい
いいことなのは分かってるんだけどw
>>70
旗SSは個人的に一番難しい(つーか、書けない)ので、それだけですごいです
GJ!
>>74
やべェ、激萌えだw
こんな展開本編でも来てくれないかな・・
ただ、一つだけ言わせていただくと、74の八雲の台詞まわしが、八雲っぽくかんじないですね
いっつも小さい声でしゃべる印象があるので
>>75
一旦、完成したSSを客観的に見るように心がけてみては?
そうすると、直すところがたくさん出てきますから
あと、SS職人ならコテハンはあまり名乗らないほうがいいですよ
叩かれやすくなるんで
- 79 名前:Classical名無しさん :04/04/20 22:25 ID:W3rOnPx.
- >>70
GJ。メアドとかカレーとかの小道具の使いどころが凄い上手いなーと感心してしまいました。
>>74
「イトコ」ネタ八雲版でつね。
>>78も書いてるけどちょっと台詞回しが八雲っぽくないと思いますた。
- 80 名前:74 :04/04/20 22:34 ID:KlhVAudQ
- あー…確かにこれじゃあヤクモンというより何かイチさんっぽいなぁ
なんつーかこう、取り乱した感じを出したかったんだけど
会話SSSって簡単そうで案外ムズいわ
播磨イトコものの人とかホント尊敬しますよ、いやマジで
- 81 名前:Classical名無しさん :04/04/20 23:41 ID:MIxv/4SE
- 個人的には播磨絃子のSSは究極の萌えだった。(;´Д`)
- 82 名前:Classical名無しさん :04/04/21 01:02 ID:TF964buY
- >>70
GJ!
旗派はいいですねえ……話の展開にスピード感があってよかったと思います。
次回作も期待してます!
>>74
おにぎり派キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
個人的にキャラを掴むのが難しいと思っている、八雲の特長がよくでていると思います。
しかも会話のみで、表現されているのは、上手い証拠だと思います。
頑張って下さい。
>>81
姉萌えのSSが増えてくれると、個人的に(*´д`*)ハァハァです。
- 83 名前:Classical名無しさん :04/04/21 02:18 ID:JZmhiykM
- >>70
夜中だっていうのに俺をニヤニヤさすSS書きやがって。家族に見られたら弁解しきれ
ないじゃないかw
人物描写、地の文、そして連続投稿の一つ一つの長さのどれを取っても高いレベ
ルでまとまってるSSだと思う。個人的にはこの後日談的なSSも見たいな。
とにかくお疲れ様です。
- 84 名前:前スレ710 :04/04/21 02:53 ID:WiBE5f36
- 書けた
これで終わりです
最後まで書いてから出せばそれなりになったものを・・・・・・
前回の分は恥ずかしすぎて修正したい
- 85 名前:前スレ710 :04/04/21 02:54 ID:WiBE5f36
- After #73
災い転じて福となすか、今播磨家の中には天満と八雲が作ったカレーの匂いが充満している。
今回は八雲の働きの御蔭か、それとも天満の努力の賜物か、小火も出ず料理は無事完成した。
播磨は天満の料理を食べるというこのシチュエーションに浮き足立って、テレビを見ている振りをしながらも意識は完全にキッチンに向かっている。
「できたよ〜、播磨くん。お皿はどれ使えばいいかな?」
播磨の普段使っているエプロンを着けた天満が顔をだす。
ちなみに普段絃子が播磨に家事の大部分を任せていて、エプロンが他に見当たらなかったために八雲は制服の上から播磨のTシャツを被せられていた。
「皿くらい俺が出すからよ、ちょうど飯時だ。
4、5人分くらいは作ったんだろ。二人とも食べてきな」
「ええ……少し多めに作ったのでそのくらいはありますけど」
「へへ、実はわたしもちょっとお腹空いてきちゃった」
天満がエプロンを外して椅子に座る。
播磨がそれを見て口元を綻ばせながら皿を3枚並べていくので八雲もTシャツを畳んで席につく。
そうこうするうちに配膳は終わった。
- 86 名前:前スレ710 :04/04/21 02:55 ID:WiBE5f36
-
「来客を働かせちまってすまなかったな。そんじゃ、食べさせてもらうぜ」
「うん、自信あるから食べてみてよ」
「…………」
播磨は視線を感じつつもカレーを掬い、その一匙を口に含む。
「んぐ、む、こいつは………」
「どうかな?」
緊張する天満と八雲。その顔は真剣そのものだ。
その顔を見て播磨も真剣に批評を返す。
「うん、美味い。思ったよりずっと味がでてるな、作ってすぐとは思えねーくらいだよ」
「フッフ〜ン、見直したでしょ」
「ただちょっと味付けはもうちょっと辛口でもいいんじゃね―か?」
「あ、それは辛口だと姉さんが食べられないのでつい……」
播磨の指摘に八雲がすかさず言葉を返した。
「そっか、塚本は辛いの苦手なんだな」
「む、今ちょっと子供っぽいって思ったでしょ」
「いやそんなことねーって、誰だって苦手なモンくらいあるしな。それより俺一人だけ食ってるのを見られるのは居心地悪いからよ。二人とも食わないのか?」
「あ、それもそだね。それじゃ、いただきます」
「いただきます」
- 87 名前:前スレ710 :04/04/21 02:56 ID:WiBE5f36
-
二人が食べ始めるのを見て播磨もスプーンを動かす。
天満も八雲もカレーの味に満足したらしい、黙々と口に運んだ。
「ところでよ、塚本は確かいつも弁当だったが、料理得意なのか?」
「お弁当を作ってるのはいつも八雲で、私はカレーくらいしかレパートリーないんだよ」
その言葉に以前占いをしていたときに出会ったときのことを思い出す。
あまり触れない方がいいと判断してそれとなく話題を逸らすことにした。
「へぇ、それじゃ妹さんは料理が得意なんだな」
何気ない一言に八雲は気恥ずかしくなって隣の姉に視線を移す。
「はっきり言って播磨くん学校で浮いてるよね。八雲が料理得意なのは学校でも結構有名なんだよ」
「そうだったのか」
「もう!仲良しなのかと思ってたのに八雲のこと全然知らないんだね、播磨くん」
「いや、面目ない………って、あのーもしかして妹さん」
播磨の背中を冷や汗が伝う。ラブコメを描いてることがバレたとは思いたくない。
- 88 名前:前スレ710 :04/04/21 02:57 ID:WiBE5f36
-
「え、いえ……播磨さんが打ち込んでいることに相談に乗っていることは昨日伝えたんですけど、
あまり人には言ってほしくないようでしたから詳細までは」
「うんうん、わかってるよ。秘密にしたいことなら詮索しないから安心してよ」
天満は物知り顔で播磨に言うとまたカレーを食べ始める。
その様子に事が露見していないことを察して播磨は嘆息した。
「播磨くん外見ほど怖い人じゃなさそうだし、私は特に何にも言わないから。
八雲と仲良くしてあげてね、播磨くん」
「姉さん…………」
「オーケー。妹さんには日頃から世話になってるからな。それくらいならお安い御用だ」
そして播磨、ドツボにはまる。
「さーてと、もう一杯食べるとするか」
一足先に食べ終えた播磨は今のやり取りの重要性に気づかない。既に意識は鍋の中身に取られている。
そこに気づかないから勘違いをされるというのにやはりこの男にも責任の一端はあると言えよう。
「よっと、んじゃもう一度、いただきます」
- 89 名前:Classical名無しさん :04/04/21 03:22 ID:U8.Oa2E.
- 【俺専用しおり】
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
ここまで読んだ
- 90 名前:Classical名無しさん :04/04/21 03:29 ID:lwLIab0k
- まだかよ
- 91 名前:前スレ710 :04/04/21 04:20 ID:WiBE5f36
- 「へぇ、それで私の分はあるのかな。播磨くん」
背後から声をかけられる。見ると部屋の戸口には刑部絃子そのひとが立っていた。
「先生!!チャイム壊れてたんですか?」
「気配を感じなかった……」
突然の闖入者に驚いたのは塚本姉妹。その質問に絃子は平然と答える。
「ああ、どうやらそうらしいな。何時まで経っても出てこないものだからついね。
アポイントメントは取ってあったし大した問題でもないだろう?
それで心配で心配で心配しすぎたらちょっとお腹が空いてね。
私ももらっていいかな?」
「ええどーぞ、勿論です。こんな時間にわざわざ来ていただいてすいません」
冷や汗を流すのは播磨。その腰はやっぱり低い。
幸いなことに鍋には播磨の分とは別にもう一杯分くらいはありそうだ。
- 92 名前:前スレ710 :04/04/21 04:22 ID:WiBE5f36
- 「ふむ、これは君たち二人の作品か。折角来てくれた友人に炊事をさせるとは常識を疑うね」
「あの……先生、それは私たちが申し出たことなので」
「ああ、大丈夫だ。それくらい分かっているよ。君は気立てがいいからな。
ふむ、どうやら君たちの御蔭で朝方ほど酷い状態ではなさそうだ。明日は学校に来るんだぞ」
そう言うと絃子は播磨の隣に座り、カレーを食べる。
「よく出来てるな、評判通りといったところか。私には少し甘いがね」
「「「…………」」」
余りにも自然な態度の絃子に二人は絶句する。
播磨はボロが出ないように口を開かない。
食事だけが滞りなく進んでいく。
この後塚本姉妹が食べ終わるのと播磨と絃子が食べ終わるのはほぼ同時だった。
コップの水を飲み干して絃子は席を立ち上がる。
「さてと……それじゃ、何の心配も要りそうにない奴は放って置いて、
私は君たちを送っていくことにするよ。外はそろそろ暗くなってきたしな」
「え……あ、ホントだ。もうこんなに」
「今日ちゃんと先生から伝達されたはずだから君の潔白は証明された。
学校はサボっちゃいかん。明日は絶対に学校に行かないとな」
- 93 名前:前スレ710 :04/04/21 04:23 ID:WiBE5f36
-
そういう絃子の態度は学校の頼れる美人教師そのものだ。
先程感じた違和感は気のせいか。
「それなら俺が二人を送ってくぜ。恩義もあるしな」
「たわけ。君にはこれがある」
それはどこから見ても何の変哲もない原稿用紙のようだが。
「げ……。もしかして………」
「反省文……とも違うか。まあ報告書というべきかな。提出期限は明日だ」
「俺は作文苦手なんだが……」
「生徒側の報告も必要でね、苦手なのは知っている。さっさと書き始めた方がいいだろう?」
「はい……」
「そういうわけだ。君たちも邪魔にならないように行こうか」
「はい、また明日ね、播磨くん」
「……ではまた」
全く、一体何を書けというのか。
当事者ではあるがベッドで寝ていただけの播磨は3人を見送った後原稿用紙を埋めるのに四苦八苦することになった。
- 94 名前:前スレ710 :04/04/21 04:25 ID:WiBE5f36
-
そして、道すがら天満は絃子に質問をぶつける。
「先生は八雲のクラスの担任ですよね?それなのになんで播磨くんの家まで来たんですか?
谷先生が来るんなら分かりますけど?」
「ん、まあ、そうだな。それはその通りなんだが。ま、君たちなら言っても構わんかもな。
口外無用だってことだけ了承してくれたら教えてもいいが」
「ん〜、だってさ八雲」
「聞かせていただけますか?」
それは八雲も感じていた疑問のようだ。
「ついうっかりってのもなしだぞ。色々面倒だからな。
………アイツと私は実は従兄弟同士でね。
私もあの家に住んでるんだ」
「え、え、え〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「…………………」
八雲は言葉もない。
「昔から色々と面倒見てきてね、弟みたいなものなんだよ。
…………だからね、塚本」
- 95 名前:前スレ710 :04/04/21 04:26 ID:WiBE5f36
- そうして絃子は微笑む。播磨には決して見せないその顔は慈愛に満ちていた。
「アイツのことを分かってやってほしい。昔から勘違いされやすくてね。
捻くれてることは間違いないが、それでもアイツは真っ直ぐな奴だ。
周りがどういっててもちゃんとアイツを見て、嫌うならそれからにしてやってくれ」
その言葉が、その笑顔が、天満の、八雲の――――心に染みた。
二人がゆっくり頷いて、絃子はまたいつもの表情に戻る。
「ああ、ちなみに私がこんなことを言ったのはアイツには黙っておいてくれよ。
これはさっきの約束よりも優先される」
今の言葉が恥ずかしかったらしい。絃子は二人を追い抜いて背中を向ける。
珍しい絃子の照れた様子に二人の顔は自然と綻んだ。
- 96 名前:前スレ710 :04/04/21 04:27 ID:WiBE5f36
-
「む、確かここだったな。それじゃあ私は家に帰る。また明日学校で会おう」
「はい、気をつけてください」
「先生おやすみ〜〜」
天満は先に家の中に入った。八雲もそれに続いて玄関をくぐる。
「おう、そうだ。塚本」
絃子が八雲を呼び止める。
暗がりの中から絃子のシルエットが浮き上がって見えた。
八雲はその影を見つめて声をかけられるのを待つ。
「まあ、なんだ。色々大変だがお前も頑張れよ」
絃子の言うことは漠然としすぎて意味がわからない。
ただ応援してくれているということ以外は八雲には判断が付かなかった。
だから
「はい、頑張ります」
と、素直にそう答えることにした。
そして影は闇に溶けていく。
影が完全に消えても、絃子が何を言いたかったのかわからない八雲だったが、
そのうち伊織に晩ご飯をあげてないことを思い出して思考を打ち切った。
月のない夜だった。
- 97 名前:支援sage :04/04/21 04:29 ID:U8.Oa2E.
- 支援sage
- 98 名前:前スレ710 :04/04/21 04:40 ID:WiBE5f36
- 後書き
これで終わりです
場の描き方を始めに戻しました
完全に3人称
ギャグを間にいれたせいで元に戻りきらずに迷走してしまったようで
描きたいことを思い出させてくれた>59氏の助言に感謝です
流れとしては八雲があの事件におかしいと意見して
それから天満を連れて播磨宅を訪問
絃子先生に信じてやってくれみたいなことを言わせるというのが骨組みだったんですが
蛇足のせいでムカデになりそうですね
あと最初からやりたかったことと言えば安請け合いする播磨です
短くまとめきれずに申し訳ない
次くるときまでに場数踏んどきます
- 99 名前:Classical名無しさん :04/04/21 15:34 ID:0yc2kw5k
- GJでつ
やっぱり三人称、上手いですね
楽しく読ませていただきました
- 100 名前:Classical名無しさん :04/04/21 17:44 ID:PBLO60nY
- GJ。いいラストですね。
前回までよりも作品との距離が取れてる感じがしました。
- 101 名前:Classical名無しさん :04/04/22 05:18 ID:r45FT5cE
- いかん、ひとつのネタで、キャラが3つほど書けそう(あくまで未定)
1、最近数が減ってきた沢近
2、対抗馬としての八雲
3、スレの流れを意識しての絃子
どれを書けばいいと思います?
- 102 名前:Classical名無しさん :04/04/22 05:45 ID:vU9R.UnA
- 全部
- 103 名前:Classical名無しさん :04/04/22 07:28 ID:sSGCPuWs
- うほっ、なんか神SSがイパーイ
>>change stepの中の人
沢近完全に晶におもちゃにされてますな(w
謝ってたはずなのにいつの間にか「これは命令だからね」になっちゃう沢近ハァハァ
>>会話SSSの人
俺のイトコネタを八雲でやるとこうなるのか〜
個人的にはこっちのが萌えだなぁ
しかしヤクモンにそこまでさせといてそれでも気付かないのか播磨…
>>前スレからの長編連載の人
うまくまとめましたな
つーか天満に思いっきり勘違いされてるぞ!気付け播磨!(w
>>101
漏れも3つのバージョン全部キボンヌ
- 104 名前:Classical名無しさん :04/04/22 08:13 ID:2/xo3W9.
- サラ分が足りない
- 105 名前:Classical名無しさん :04/04/22 10:41 ID:ICoZ2whA
- >>101
選べません(*´Д`) ハァハァ
- 106 名前:騎馬戦 :04/04/22 15:02 ID:6gWpwnUI
- 騎馬戦は白熱化していた。
力ずくで圧倒するハリー・ララ騎。
もう、10騎以上を倒している。
対して、技の周防・麻生騎。
周防の運動能力と、麻生の判断能力でこちらも順調。
一方、一条・花井騎。
いつのまに?という間もなく、一撃離脱戦法でトップの成績を挙げていた。
そして、沢近・播磨騎。
愛理は苛立っていた。
不良の播磨を恐れ、誰も近づいてこないのだ。
しかし、鉢巻はそこそこ奪っている。
播磨が一言、対戦相手に放つ。
「オウ、ソレよこしな」
「ハ、ハイ どうぞ」
びびった相手が沢近に鉢巻を渡す。
これの繰り返しだった。
「もお、このままじゃ私が活躍できないじゃない!
アンタ、どうにかしなさいよ!」
播磨のベレー帽をグリグリやる。
むかつきながらも、播磨は言った。
「じゃ、アレいくか。」と顎で指し示す。
その先には…
- 107 名前:騎馬戦 :04/04/22 15:04 ID:6gWpwnUI
- 一条とララが争っていた。
両手でガッチリと組み合っている。
あまりの迫力に、周りは近付けないでいた。
「な…アソコに行くの?」
「なんだ、怖いのか?」
「べ…別に怖くないわよ! 行くわよ!」
ダッシュで現場にむかう。
近づいて来た沢近騎に気付くハリーと花田。
「イチさん、メガネ! そのまま組み合ってろ!」と播磨が叫ぶ。
「貴様の指図は受けたくないが…やむをえん!」
「いかん、離れろララ」
しかし、握力100キロの一条に阻まれ、離れられない。
「離せ イチ・ジョー!」
「今です、沢近さん!」
「OK! まかせて!」
ザッ! ララの頭から鉢巻を奪い取る愛理。
「よし!!」 愛理がガッツポーズを決める。
「うわー、愛理ちゃんすごーい」と天満。
「これで、きまったわね」と晶。
愛理は嬉しそうに言う。
「何よ、やればできるじゃないの!」
「ふん、まあな。 よし、次いくぞ!」
新たなターゲットを見つけて、走り始めた。
- 108 名前:騎馬戦 :04/04/22 15:11 ID:6gWpwnUI
- ハリー・ララ組が負けた事によって、D組は弱体化していた。
その状態で尚、孤軍奮戦する騎馬がいた。
D組委員長、東郷である。
ララが鉢巻をとられた場面を目の当たりにした東郷は、怒りに燃えた。
「おのれ、C組。 このままではすまさん!」
近くにいた騎馬に襲い掛かる。
「うわぁ!」「キャー!」潰された騎馬の生徒から悲鳴が上がる。
そして、東郷の視界に天満騎が現れた。
ドカッ! 奈良に体当たりをかます、東郷。
「あ、あ、あ」バランスを崩した天満騎。
「すきあり」と鉢巻に手を伸ばす、モブ女子。
天満、防戦むなしくも、奪われてしまう。
「あー、とられちゃったぁー」
この場面を、播磨が見逃すはずがない。
(む! 天満ちゃんがやられた? 誰が…ヤツか!)
ギラーンと目つき鋭い播磨。
「お嬢! あのマユゲにいくぞ!」
「マユゲ…D組の委員長ね OK,いきましょ!」
東郷騎に向かう播磨騎。そこに一条騎も加わる。
「東郷! これでおしまいだ!」花井が叫ぶ。
「フン やられはせんよ、やられは!」東郷も怒鳴る。
2人がやりあっている所へ播磨、東郷の後ろに回りこむ。
「やれ、お嬢!」
「わかってるわよ!」
バッ 愛理が東郷騎の鉢巻を奪う。
<ピー> 審判・烏丸の笛が響く。 「D組全滅。 よって、勝者・2−C!」
「やったぁー!」C組の生徒たちが一斉に喜ぶ。
だが、東郷と花井は、まだやりあっていた。
「東郷、この勝負 預けといてやる。 次の…」
「次のリレーで勝負だ!」
「さ、三度目も? 三度目もいえなかった…」
- 109 名前:騎馬戦 :04/04/22 15:13 ID:6gWpwnUI
- 来週はこんな風かなと思いつつ書きました。
- 110 名前:Classical名無しさん :04/04/22 15:16 ID:SxmQGCWY
- 違う!
「やらせはせん!やらせはせんずぉぉぉぉ〜!!!」だ
- 111 名前:Classical名無しさん :04/04/22 15:21 ID:SxmQGCWY
- ハッ!
もしかしてまたバレか!?
やられた……orz
- 112 名前:Classical名無しさん :04/04/22 15:34 ID:RHV79pbo
- いや、バレじゃないから
けどこんな展開になればいいなー
- 113 名前:HAPPY BIVOUAC :04/04/22 23:32 ID:bUGHSDN6
- 「……あん…駄目…ちょっと強すぎ」
「こ…このくらいか?」
「そう…あんまり力は入れなくていいから。丁寧に…ね」
「お、おう」
「そうそう………ふふっ、でもずいぶん巧くなった」
「毎日やってりゃ、嫌でも上達はするだろ…」
「あっ……言ったそばからコレだ……。出しすぎだってば。もう少し絞って…」
「……………………………………………〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「?───どうした?拳児君」
「いちいちいちいちウルセエんだよ!水の出し方にまで文句つけんなら皿洗いくらいテメエでやればいいだろーが!」
「だってソレ君の仕事だし」
「いつからそうなったんだ!?つーか掃除・洗濯・炊事まで全部俺に押し付けやがって!」
「居候には相応の仕事量だと思うが…」
「前も言ったが、家賃・食費・光熱費その他諸々折半で出してるだろ!大体テメエは───」
カキン
───振り向いた瞬間、ソファーに腰掛けた絃子の右手には、撃鉄を起こしたリヴォルバーが冷たく光っていた。
「いいから口より先に手を動かす。それと私を呼ぶ時は『テメエ』じゃなくて『絃子さん』だ」
「…ハイ、かしこまりました絃子サン」
不貞腐れた顔で食器洗いを再開した播磨を見て、絃子は思わず苦笑した。
モデルガンの弾丸が当たった所で大して痛くもないはずだが────
幼少期に培われた力関係というものは、背丈が逆転した今でもどうやら有効であるらしい。
しばらくは黙って洗い物に専念していた播磨だったが、
絃子が手入れをはじめたモデルガンを見て、どうやら反撃を思いついたようだった。
- 114 名前:HAPPY BIVOUAC :04/04/22 23:37 ID:bUGHSDN6
- 「その時は、拳児君に貰ってもらうからイイよ」
「な!?」
思わず洗い途中の茶碗を取り落とす。
十中八、九は後頭部への六連射が来ると信じていただけに、播磨のほうが絶句してしまった。
「どうした?何かおかしなことでも言ったか?」
「わ、ワケわかんねーコト口走ってんじゃねえよ!第一、親戚同士でケッコンできるワケねえだろ!」
「………………………………………拳児君、それマジで言ってる?」
「はあ?何が?」
「親族で婚姻できないのは三親等以内。従姉弟は四親等。私と君とは従姉弟どうし。つまり……」
「………つまり………?」
「私が君と結婚しても、法的には何の問題もない…ってコト」
「──────────────ッ!?」
突然近くなった絃子の声と、肩にかすかな吐息を感じて播磨は大きくのけぞった。
いつのまにかシンクの横に絃子が立っている。
知らずあわせた視線の先には今までに見たこともない、真剣な眼差しを浮かべた絃子の顔があった。
心臓が早鐘を打ち、一瞬で顔が紅潮するのを自覚した。
耳が痛いくらいに熱くなっているのが手にとるようにわかる。
「いいい、イヤその……なんというか………つまりだな………………………」
「───つまり?」
そう尋ねながら、播磨に少しずつ近づく絃子。播磨は気圧されるように後ずさりしていく。
「だだだだだ、だから、その、だな……………………──ッ!?」
どん、と背中がつっかえる。気が付けば台所の端まで追い詰められてしまった。
絃子は歩みを止めず、ゆっくりと播磨に近づいていく。
胸と胸が触れそうな距離。サングラスを占領していく絃子の顔。うるんだ瞳。形のいい鼻。ぬれた唇───
- 115 名前:HAPPY BIVOUAC :04/04/22 23:43 ID:bUGHSDN6
- 「すっすまねえ!!お、俺には──────心に決めたひとが居るんだ!!」
「……………………」
「だ、だからお前とはその……………ケッコンは…」
「………………………………………………………………プッ」
「できな……………へ?」
「アハッ、アハハハハハハハハハハ!」
とうとうこらえきれずに、腹を抱えて笑い出した絃子。
笑い声を聞きながらしばらくポカンと口を開けていた播磨だったが────────
「…………!!テ、テメエ、はめやがったな!?」
「人聞きの悪いことを言うな。君が勝手に勘違いしただけだろう?大体私は引く手数多だしな。君に貰ってもらうほど落ちぶれはせんよ」
「ああ言えばこう言いやがって!そもそも俺には───」
「大好きな塚本君がいるんだろう?ま、この程度でよろめいてるようじゃ先行き不安だな?拳児君」
「よ、よろめいてなんかいねえ!俺はいつでも天満ちゃん一筋で……!」
「わかったわかった。それはいいからとっとと洗い物を済ませるように。私は明日早いからもう寝る」
そう言い捨てて、絃子は寝室に歩いていった。
「ったく、いつもいいようにからかいやがって……あの鉄面冷血女…」
「あ、言い忘れてたけど、明日朝6時きっかりに起こすように」
「ぬお!!!!………………カシコマリマシタ、絃子サン」
悪口を叩き始めた出端で思わぬ奇襲を受け、またもかしこまってしまった播磨。
結局、この日は(も)最後まで軍配は絃子に上がりつづけたのだった。
- 116 名前:HAPPY BIVOUAC :04/04/22 23:46 ID:bUGHSDN6
- 「……わりと本気だったんだけどな……」
枕に顔を埋めて、絃子はそう呟いた。
正直なところ、彼女の播磨に対する感情については不明瞭の極みだった。
物心ついた時から、あたりまえのように傍にいた男。
やんちゃな弟、年下の恋人、気安い男友達、素行不良の生徒、手のかかる被保護者……
どれもが当てはまるようでもあり、そうでもないようでもある。
あらゆる事例 ─人間関係においても─ に常に明晰・明快な回答を欲してきた彼女にとって、
この状態は不愉快なものであるはずだったが───同時に安住できるものであることも確かだった。
「結果を怖がって先延ばしにしている…私も同じか。拳児君を笑えないな」
寝返りをうった絃子の耳に、かすかにまな板を叩く音が聞こえてきた。
播磨が、早朝出勤する自分用の朝食の準備をしているのだろう。
口では何やかやと文句を言っている割には、ここ最近忙しそうにしている絃子に気を遣っている。
自分や近しい人間だけが知っている播磨の優しさが、今は素直に嬉しかった。
もうしばらくは、このままでもいいと思えるほどに。
「明日は大根の味噌汁かな…?」
手馴れた感じの、リズミカルな包丁の音を聞きながら、絃子は静かに眠りに落ちていった。
- 117 名前:Classical名無しさん :04/04/22 23:47 ID:YPk8PEPo
- 何か大事な部分を忘れていませんか
- 118 名前:113-116 :04/04/22 23:56 ID:bUGHSDN6
- 雑談スレ>440氏の設定にやられてしまい、
初SSを書いてしまいました…
みなさんお手柔らかに。
>>117
すいません…思いっきり忘れてます。次レスで再度部分うpします。
- 119 名前:113-114間 :04/04/23 00:01 ID:bUGHSDN6
- 「…また新しい銃買ったのか。えらく長え拳銃だな」
「ああ、かっこいいだろう?バントライン・スペシャル」
「んなモン振り回してる上に家事も駄目と来ちゃますます嫁の貰い手がなくなるなあ、コリャ」
皮肉っぽく言い放った憎まれ口への反応は──────播磨の予想を180度裏切るものだった。
改行エラーに引っかかったので抜けた部分のみです。
しかも誤爆まで…俺ってやつは…_| ̄|○
- 120 名前:Classical名無しさん :04/04/23 00:07 ID:r45FT5cE
- ……まずい、ネタが被った(;゚□゚)
- 121 名前:Classical名無しさん :04/04/23 00:28 ID:0yc2kw5k
- >>118
GJ!
絃子さん好きの俺としてはまさに神です。いいなぁホントに
>>120
いやいや、似たシチュでも職人さんによって全然違う雰囲気になるものです
完成したらぜひ読ませて下さい
しかし最近絃子さん大人気だな。姉萌え派にとっては聖地のようだ
- 122 名前:Fatal action :04/04/23 01:47 ID:DSxhjImQ
- 出会いはいつだって唐突だ、とは誰の言葉だったか。ともあれ、今現在沢近の頭を悩ませているのは
まさしくその言葉。
「お嬢サン――私と付き合ってもらえないカ?」
「……はあ?」
中身はともかく、というのは冗談めかした美琴による評だが、入学当初から声をかけてくる相手は
数知れず、そのことごとくを断りつづけている、という事実を以ってしてもなお続く者は後を絶たない、
という沢近。
それでも、唐突に目の前に現れた金髪の男がやたらと芝居がかった仕草で髪をかき上げながら声を
かけてくれば、驚く以前に呆れるというものである。
「いきなり何言ってるの?あなた」
ともあれ、恋については一家言ある沢近、丁重にお帰り願うべく口を開く。
――が。
「初めて会ったときカラ思っていたよ……君ハ私の……」
「初めてって、今さっきじゃない!」
「フッ……」
会話が噛み合わない、と言うよりそもそもその気がないのでは、と思わせるほどに一方的に会話を
進める男に調子が狂う沢近。
(……そういえばいたわね、あっちにも)
眉をひそめつつそんなことを思い出す。本人はキザだなんだと思い込んでいるが、どうにも手の付け
られない手合い、というヤツである。
この手の相手には有無を言わさぬ対応で、と余計なニュアンスの入らない英語に切り替えて――ちなみに、
目の前の男がどう見ても日本人ではない、という判断からである――会話を再開する。
- 123 名前:Fatal action :04/04/23 01:47 ID:DSxhjImQ
- 『ごめんなさい、私今は誰ともお付き合いするつもりはないの』
『――おや、君は英語が出来るのか』
その言葉にカチンとくる沢近。彼は単なる驚きを表しただけ――というのはこの際問題にならない。要は、
彼女がそれをどう受け取ったか、という話。
『……あら?何か問題でもあるのかしら』
『いや、そんなことはないさ、レディ』
一度そう取ってしまえば、続く言葉もすべて小馬鹿にしているように聞こえてくるのだから、とかく人の
心とは難しいものである。
『ところで、君は「今」と言ったね。ではこれからそれが変わるということも……』
ないわね、そう断言した沢近は、あっさりとこの交渉における最後のカードを切る。
『おあいにくさま。誰ともって言ったのわね、私、もうお付き合いしてる人がいるの』
『なっ……!この私より君に相応しい男がいるというのか?』
その自信がどこから来るのか、という驚き方をしてみせる彼に、ええ、とあっさり答えて勝利を確信する沢近。
――そこに大きな落とし穴があるとも気がつかず。
『ではその男に会わせてくれないか?』
『ええ、いいわよ』
(――え?)
しまった、と思っても後の祭、肝心なところで詰めが甘い沢近である。
「それデハ今週末ニでも」
「あっ!ちょっ、待ちなさいよ!」
そう言って去っていこうとする背中を呼び止める。対する男は怪訝そうな顔で振り返ってから、すぐに
分かった、という表情をして。
「ソウ、まだ言っていなかった。私の名はハリー。ハリー・マッケンジー」
きっちり斜め四十五度の角度で言い残し、歩み去る。当然、そうじゃなくて、という沢近の言葉は
誰の耳にも届かないわけで。
- 124 名前:Fatal action :04/04/23 01:48 ID:DSxhjImQ
- かくして。
「……どうするのよ」
目下沢近の頭を散々悩ましている懸案が誕生した、というわけである。
(誰かに相談……なんて出来ないわよね)
美琴に恋の相談などするわけにはいかないし、晶に言った日にはどうなることか想像も出来ない。天満に
訊いたところで、謝っちゃえ、などと言われるのが関の山、そして沢近の性格上、当然そんな選択肢はない。
となれば、ダミーでも何でも、恋人をでっち上げるしかないのだが。
「ああもう、ダメよダメ。普通の相手に付き合ってあげる、なんて言ったらつけ上がるだけ」
加えて、本当に付き合うわけでも何でもない以上、さすがに相手に悪いと思うし、それで妙な噂でも
流れることになってしまえば。
(――また昔みたいに)
今なら自分の周りには確かに『友達』がいる。でもだからこそ、余計な迷惑はかけられない。
「絶対に勘違いしないような相手……なんて、そんなのいるわけないじゃない」
そもそもアイツが悪いのよ、何よ、ハリー・マッケンジーって、どっかの誰かみたいな、とそこまで考えて。
「――――――――あ」
付き合うと言ってもつけ上がることなく。
たとえ偽装デートでもそんなことを言いふらすはずもなく。
勘違いなんてしようとしても土台不可能な。
そんな、ヤツ。
「……いるじゃない、一人」
それはプライドからしても行動理念からしても、どう見ても外れた選択肢。
けれど。
「仕方ないじゃない」
誰に対する言い訳なのか、そう呟いて――
「アンタ、私と付き合いなさい」
「ハァ?何言ってんだテメェ」
- 125 名前:Fatal action :04/04/23 01:49 ID:DSxhjImQ
- その結果どうなったのか、は当然ながら。
「さ、行くわよ」
「……」
「何よ、文句あるの?」
カミソリ事件からこちら、播磨が下手に出なければならないような失態はなく、むしろ沢近の方が謝るべき
はずなのに、結局こうなってしまうのはもはや運命なのか何なのか。播磨拳児、未だに沢近愛理に連敗中である。
「分かってるわね、私の言う通りにしてなさいよ」
「……」
この期に及んで反論しても無駄と思い、返事なしの播磨。それを見て小言の一つも言おうとした沢近だったが、
今日これからのことを考えてやめておく。どのみち、今日は数え切れないくらいそんなことがあるに違いないのだから。
そして、待ち合わせ場所では。
「……ホウ」
「……テメェ」
いつぞやのファーストコンタクトを思い出し、火花を散らす二人。
「知り合いだったの?あなたたち」
まあいいわ、とそんな様子を気にも留めずにそう言って。
「行きましょ、播磨君」
「なっ!お前、おい!」
播磨に腕を絡めて沢近は歩き出した。
- 126 名前: