元のスレッド
スクールランブルIF08【脳内補完】
- 1 名前:Classical名無しさん :04/05/10 00:42 ID:Fxxuq7bM
- 週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週7ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
SS保管庫
http://www13.ocn.ne.jp/~reason/
【過去スレ】
スクールランブルIf07【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1082299496/
スクールランブルIf06【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1078844925/
スクールランブルIf05【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1076661969/l50
スクールランブルIf04【脳内補完】(スレスト)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1076127601/
- 2 名前:Classical名無しさん :04/05/10 00:43 ID:Fxxuq7bM
- 関連スレ(21歳未満立ち入り禁止)
スクールランブル@エロパロ板2
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077723024/l50
【荒らし行為について】
“完全放置”で
よろしく頼(よろ)んだぜ
■ 削除ガイドライン
http://www.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide
- 3 名前:Classical名無しさん :04/05/10 00:45 ID:aNFulOyE
- >>1
乙です!
けど毎週9Pに変わったけどね
- 4 名前:Classical名無しさん :04/05/10 00:47 ID:QYM9SUFo
- 4ゲットしながら>>i乙
- 5 名前:Classical名無しさん :04/05/10 00:56 ID:1ie.FWTY
- >>1
乙
- 6 名前:Classical名無しさん :04/05/10 00:56 ID:UP3rarDA
- >>1
おつです。
職人さんもずいぶん増えましたし、いい感じですね。
- 7 名前:Classical名無しさん :04/05/10 01:02 ID:DSxhjImQ
- >1
乙。
今スレもまったりお付き合いさせていただきます。
- 8 名前:Classical名無しさん :04/05/10 01:14 ID:Y.NDobTM
- ゴールデンレター
このスレを見た人はコピペでもいいので
30分以内に7つのスレへ貼り付けてください
そうすれば14日後、好きな人から告白され
17日後にあなたに幸せが訪れるでしょう
- 9 名前:Classical名無しさん :04/05/10 04:33 ID:wsI8ET8g
- >>1
乙です!
今スレも楽しみですな。
ついでにぎりぎり一桁ゲットー
- 10 名前:Classical名無しさん :04/05/10 07:05 ID:Ur5yrgpw
- 一桁ゲトできなかった・・・('A`)
でも>>1乙
- 11 名前:Classical名無しさん :04/05/10 18:31 ID:TShaintE
- >>@乙
300作突破でキリの良い新スレだ
- 12 名前:Classical名無しさん :04/05/11 02:09 ID:VGHjeh8c
- ここで奈○を主役にしたSS書きたいんだけどNG登録されているから
投下しても無駄骨かなあ…?
- 13 名前:Classical名無しさん :04/05/11 02:26 ID:WrTUhrnI
- >>12
NG登録してある可能性は高いな(w
避難所に投下するってのも一つの手だぞ
- 14 名前:cat meets girl :04/05/11 03:04 ID:qWTM3Kjg
-
女はいくつもの店を知っている。
美味しい店、落ち着く店、友人と行く店、女同士で行く店……あと、男と行く店。
そして、一つだけ、誰にも教えない店がある、親友にも、恋人にも。なぜならそれは
一人で行きたい店、振られた夜に、一人で飲みたい店だから――
- 15 名前:cat meets girl :04/05/11 03:06 ID:qWTM3Kjg
-
「いらっしゃいませ」
バーテンダーは静かに、それでいて耳にほどよく聞こえるように歓迎の言葉を伝える。
視線は失礼ではないほど注がれ、無愛想に感じない程度にそらす。一流の店の対応は、
さり気なさにあると、姉ヶ崎妙は考えていた。その点、この店は満点と言っていい。
カウンターに腰を下ろす。静かにバーテンダーは近づいてきた、傍に立ち、グラスを洗
う。お客に注文を尋ねるなどというファミレスのようなことはしない。ただ、客が自分の
要望を伝えるのを、聞こえる範囲で静かに待つのだ。
「カミカゼ、お願いできます?」
「かしこまりました」
背筋の伸びた会釈。まるで浮いているかのように音も立てずに移動し、シェイクを始
めるバーテン。店の明かりはやや暗め、店内に響く音は、ゆるやかなlove songと、僅か
に聞こえる、他の客の囁き。
彼女はこのしっとりとした店の雰囲気が好きだった。特に、一人で過ごしたい夜は。
男に泣かされた夜は、この店でアルコールにほどよく酔うことが彼女にとってのお決ま
りの過ごし方だった。
- 16 名前:cat meets girl :04/05/11 03:07 ID:qWTM3Kjg
-
ふと気づくと、店内に黒猫が一匹いた。その佇まいは、なにやら高貴さを帯びており、
この店に似つかわしい風情を漂わせる。この店のゲストのようにも見え、スタッフのよう
にも見える。あるいはマスコットだろうか? なんにせよ、その猫がこの空間にいること
に疑問がわかないほど、彼はその場の雰囲気と融和していた。
それでも、飲食店に猫がいる不思議をバーテンに尋ねる。カミカゼを、ついと彼女の前
におきながら、質問を受けたバーテンはひっそりと語りだした。
「オーナーのゲストだそうです」
なんでも、店のオーナー直々にこの猫の入店を認めているとか。ただ、どうやら賢い猫
のようで、飲食物や厨房の周りには絶対近づかず、静かにやってきて静かに帰るそうだ。
女性客にはなかなかウケがよく、彼を楽しみにして来店する客もいるという。
「音楽を楽しんでいるのかしら? それとも人間を観察してるのかしらね」
ふと猫がこちらを向いた、目が合う。彼女は微笑みかけた。猫はゆっくりとこちらに近
づいてくる。そして、にゃあ、とひと鳴き。
「フフフ、もしかして慰めてくれてる? それとも口説いてるのかしら?」
バーテンに、ツアリーヌを注文するついでに彼に何か出すようにお願いした。彼は慣れ
た手つきで皿にミルクを注いでいく。どうやら、彼の猫に口説かれて、一杯奢ったのは自
分だけではないようだ。意外と女たらしなのかもしれない。
- 17 名前:cat meets girl :04/05/11 03:09 ID:qWTM3Kjg
-
「首輪があるなら……飼い猫よね」
そのあたりをさり気なく尋ねてみる、返答は予想通り分からないとのこと。ただ、最近
は毎晩来ているそうだ。
「もしかして、私と同じで、アナタも捨てられちゃったかな?」
返事は無く、ペロペロと小さな舌を上品に動かしてミルクを飲んでいる。彼は女に過去
を話さない主義のようだ。苦笑して自分もウオッカを喉に流し込む。美味しい、いつだっ
てアルコールの味と酔いは、心の傷の痛みを忘れさせてくれる。
窓を見る、空が泣き出しそうだ。まるで、自分のようだと一人思う。そして、傍らで孤
独であることを周りに気づかせないように振舞っているこの猫も、自分に似ている気が
する。似たもの同士、仲良くできるかな、そんな考えるがよぎる。
- 18 名前:cat meets girl :04/05/11 03:16 ID:qWTM3Kjg
-
「お姉さんの家に来る?」
何気ない一言。黒猫はわずかに視線を送り一度小さく鳴くと、スタスタと離れていった。
薄明かりでは、闇に溶ける彼の黒い姿はすぐに消えてしまう。一人、自分だけが残された。
どうやら彼にはまだ、帰る場所か、帰る人がいるらしい。
「また振られちゃった……」
雨音が聞こえた、空はもう泣き出している。もしかしたら、いつの間にか失恋で泣けなく
なってしまった自分の代わりに泣いてくれているのだろうか。それにしても、一晩で二回も
振られてしまうとは、いやはや、なんとも悲しい夜ではないか。
自分に男運がないからか、それともいい男は、すぐにいい女を見つけてしまうからか。
いや違う、いい男には、すでにいい女がいるのだろう。そして、残っている男達にはろくな
男がいないのだろう。そしてそれは、きっと女も同じ。
まあいい、新しくできた傷に、新しい一杯を捧げよう。
「もう一杯、いただけるかしら?」
「なんにいたしましょう」
「……そうね、あの子にちなんでPussy Catを」
「かしこまりました」
かずかに流れるLove songを聞きながら
それでは、一人身の夜に乾杯
cat meets girl,Next girl is Tenma…
- 19 名前:Classical名無しさん :04/05/11 07:31 ID:UP3rarDA
- 復活おめでとうございます。
店のオーナーが誰だか気になるところですが、それは置いといてw
お姉さんがいじらしくていいですね。次回の天満も期待大です。
- 20 名前:結婚後シリーズ@ :04/05/11 09:22 ID:rEWwHhaw
- 明日は俺達の結婚記念日!
今週の分の原稿は今日納め、ちょっと帰りが遅くなったけどプレゼントも買った!
ぬかりはねぇ。
「ただいまー」
播磨の声を聞き取り、主婦となった愛理がかけつけてきた。
最近の愛理はツインテールをやめ、首元でひとつに束ねているその綺麗な金髪は、愛理にゆられ嬉しそうに揺れている。
しかし表情には心配とイライラが混じっていた。
「今日はだいぶ遅かったわね…」
「ア、アァ。 打ち合わせが長引いてさ」
播磨は持っている茶封筒を大きな体で隠しながら部屋に逃げ込み、棚にしまった。
「ちょっとー、ごはんはー?」
播磨は日々上達する愛理の料理を食べ、風呂に入り、部屋に戻って椅子に腰掛けた。
「さて、プレゼントを買ったはいいが、何と言って渡せば愛理が一番喜んでくれるだろう…」
そんな事を考えながら、おもむろに茶封筒を手にすると、播磨の表情は一変した。
「な・ナイ…。 もしかして落としたか!」
播磨は愛理に気付かれないよう、慌てて外へ飛び出した。
暗い夜道で探す播磨、もぅかれこれ二時間はたった。
どうしてもプレゼントを見つける事はできず、播磨は諦めて家の扉を開けた。
「拳児君…? ちょっときなさい」
――弦子――!?!? 来てるのか!?
「ちょっと!早くきなさいよ」
な・なんだ愛理か…。愛理は最近、弦子に似てきた。
呼ばれるがままキッチンに行くと、テーブルの上には口紅の付いたハンカチがこれ見よがしに置いてあった。
- 21 名前:結婚後シリーズ@続き :04/05/11 09:25 ID:rEWwHhaw
- 「これはどーゆー事かしら?」
はっ!しまった!
「こ、これはー。 電車の中で付けられちゃってよー。ハンカチで拭いたんだよ!」
「その割には何種類もあるんだけど」
「いゃあ!そいつ何種類も塗ってる奴でよ!」
「へー、じゃあ、その口紅好きの彼女にコレあげるつもりだったのかしら?」
そう言って愛理がポケットから出した物は一つの高級な口紅だった。
「あー!あった! 愛理へのプレゼント!! …はっ、言っちゃった…」
「――へ? これ私になの?」
愛理はきょとんとした顔で播磨の目を覗き込んだ。
「ご・ごめん!隠してて! 明日は結婚記念日だろ…だから…」
「じゃ、じゃあこの口紅の付いたハンカチは…?」
「だって、俺が口紅して店出たら変だろ?」
「――自分の唇で試したの?!」
「いやー、どれが愛理に一番似合うか悩んだ揚げ句…」
播磨が…こんな大きな男が真剣な顔して口紅を塗ってる姿を想像してしまい、愛理はお腹を抱えて笑ってしまった。
「そんなに笑うなよ。俺だって恥ずかしかったんだからよー」
「アハハハ。 でも、覚えててくれてたんだ?」
「当たり前だろ」
「ありがと☆拳児」
- 22 名前:あずまゐ :04/05/11 09:27 ID:rEWwHhaw
- すみません。またしばらくお邪魔します。
300作品おめでとうございます。
- 23 名前:Classical名無しさん :04/05/11 11:35 ID:Vc5HHn9I
- >>14
全編通して改行位置がおかしい。
単語の途中で改行されると非常に読み難いです。
印刷すれば>14の様な書き方の方がキレイに見えるだろうけど
モニター上で見た場合、詰まり過ぎて汚く見えます。
紙媒体で1行の文字数を決めて両端を合わせるのは
読み易くする工夫でも何でも無いので
web上でそうする意味なんて無い、と個人的には思います。
- 24 名前:Classical名無しさん :04/05/11 12:00 ID:Gfhy1ChI
- >22
勢いのあって笑える作品GJ! 播磨は本当にバカでいい奴ですな。
アレで萎縮した人もいたんじゃないかと思っていたので安堵させられました。
でも! 他はともかく「・」だけは勘弁してください。そこは読点だ。
あと、その時間軸でシリーズ化は諸刃の剣。引き際が肝心だぞ〜。
- 25 名前:Classical名無しさん :04/05/11 12:08 ID:17IfhYw2
- >>22
実際読めたもんじゃない。
前スレに文章の書き方とか教えてくれた人がいたので少しは参考にして下さい。
あと余りにオリジナル過ぎて違和感ありまくりでした。
もう少し練習してから投下することを強く勧めます。
- 26 名前:Classical名無しさん :04/05/11 12:17 ID:rEWwHhaw
- >>14
確かに23の言う通り、「。」で改行してほしい。
改行すると流れがとまらないか?
改行は場面の切り替えを意味するんだ。 って考えなのでしょうか?
なんにせよ、作者のルールがハッキリ読み取れるので
作者側に立てば読みやすいのだろうけど、基本的に他人は読み手なので…
- 27 名前:Classical名無しさん :04/05/11 12:21 ID:rEWwHhaw
- …と、棚上げでいってみた。
- 28 名前:Classical ROMさん :04/05/11 12:44 ID:iadcGtv.
- 俺は逆に>>14のような改行が読みやすいんだけどな。
これって少数派なのかな?
というか、最早感性が古いのかもしれんな、俺…
- 29 名前:Classical名無しさん :04/05/11 12:50 ID:AsHe.pxk
- >>28
俺もそうだよ。
改行改行言う香具師が急に沸いてきたな。
- 30 名前:Classical名無しさん :04/05/11 12:51 ID:AsHe.pxk
- sage忘れスマソ。
- 31 名前:Classical ROMさん :04/05/11 13:34 ID:iadcGtv.
- とはいえ俺は、文章のスタイル自体は、各の職人さんが好きなスタイルで書いてヨロシと思っとりますんで、
俺のような外野の意見はあまり気にせずどんどん書いて、これからも楽しませてほしいと願っとりますです。
- 32 名前:Classical名無しさん :04/05/11 14:27 ID:tfr4QM5Y
- 無理に改行しなくても、表示部の右端までいきゃ勝手に折り返されるから別に気にならないけどなぁ・・・・・
- 33 名前:Classical名無しさん :04/05/11 16:38 ID:d1JiGx6s
- >>14-18
GJ!
cat meets girl シリーズ復活ですか。好きなんですよねこれ。
描写が凄くうまくてしんみりしました。( ´∀`)
次はララとかもあるのかな?出番少ないから難しいと思うけど。
>>22
>>25氏にほぼ同意します。
- 34 名前:Classical名無しさん :04/05/11 17:29 ID:.KKhM2kw
- >>20-22
ごめん、神!とまでは言えないけど、
そんな違和感なく楽しめた人間も居ますんで、
次も、頑張ってください。
>>25
具体的にどうなのか指摘してあげたら?
俺はあまり違和感感じなかったんだけど・・・
- 35 名前:Classical名無しさん :04/05/11 17:41 ID:AsHe.pxk
- >>32
端までいくと読みにくい。俺はね。
視線を左右に大きくとらなきゃいけなくなるから。
- 36 名前:Classical名無しさん :04/05/11 18:23 ID:ctykUnFM
- 改行も端で折り返されるからいいよと言う人と、適当な所で改行したほうが読みやすいと言う人がいるし。
段落での一文字空けも横書き文章だと微妙と感じる人もいるみたいだし。
形式にこだわりすぎて書き手も読み手も楽しめなくなってしまったら寂しいので、
あんまり意識しすぎなくてもいいんじゃないかと個人的には思うけどなぁ。
- 37 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:27 ID:jrv0mCSw
- 「それじゃ播磨君、先輩から色々教わってくれたまえ」
「うぃっす」
最近、俺はバイトを転々としていた
エアコンの整備だとか、引っ越しだとか
本当はバイトなんてかったるいが、家賃もろもろの支払いがあるのでやらない訳にもいかない
つい先日も
「拳児君」
「なんだよ」
「どうやら先月と今月の家賃及び高熱費の納入がまだみたいなんだが」
「……まあ、あれだ」
「言い訳は聞かない、今月の18日が期限だ。払わない場合は然るべき処置をとる」
「ぐっ」
「私も金の話なんかしたくはないんだ。君がしっかりしてくれれば私もラクなんだよ……」
「まぁ、悪かったな。なんとかして払う」
とまあ、一介の高校生にはバイトをするしか金銭を獲ることはできないんで、こうして深夜のコンビニのカウンターにいるんだがな
「それじゃあ、先輩にあいさつだ。高野君! 高野君! 私は行くから後は頼むよ」
「わかりました店長」
あ、こいつは……
「ぁ……」
- 38 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:29 ID:jrv0mCSw
- 「それじゃ、高野君、彼の事頼むよ」
足早に店長は去っていく
「おまえ、高野……だよな?」
「あなたもここのバイトなの?」
「まあ、短期なんだがな」
そう、と言うと高野はレジの方へ歩いていく
「レジは打てる?」
「ああ、バイトは色々やってるんでな」
「それなら教えることはほとんどないね」
ホントかよ!?、って言いたくなったが、やめとく
「接客は苦手なんだがな」
高野は俺に向き直って言った
「イヤなら、やらなければいい」
……まあ、正論なんだがそういうわけにもいかんしな
「まあ、働かなきゃいけない事情ってもんがあるんでな」
高野は特に反応する訳でもなく、ひたすらレジをいじっている
「おまえも、年令誤魔化してまで深夜のバイトしてんだ、なんか理由があるんだろ?
「あなたに言う必要はないわ」
「そうか……」
あーそう、言いたくねーならいいよ
こいつ、なんもしゃべんねーからどうすればいいか全然わからん
「そういえば、おまえとこうして話すのは、はじめてか?」
こいつと話した記憶があまりない
「……そうでもないわよ」
「そうか、よくおぼえてないが」
「そう」
「……」
会話終了
- 39 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:30 ID:jrv0mCSw
- だめだ、こいつと話しても話が広がんない
俺が奥に行こうと思ってたくらいに
「あの、話がつづかないんですけど……」
「あの時は、正直おどろいたわ」
いつだ? あんまりいい予感はしないな
「裸で女の子を羽交い絞めしてるヒトがいたから」
うがっ!!?
「最初はヘンタイかとおもった」
「あ、あんときゃーワザとやったんじゃ」
「分かってる」
「そ…うか」
「あなたはもっと周りを見るといいわ」
「周り……ね」
「そしたら思いもせぬ宝物が手に入るかもしれない」
「宝物……ね」
- 40 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:33 ID:jrv0mCSw
- 前後の繋がりが無い会話と一通り指導受け終えて休んでいた時
5、6人のヤンキーの客がきた
「いらっしゃいませ」
「っと、いらっしゃいませ」
そのヤンキー共は酒類の所で色々カゴに入れてる
客だし、当たり前の行為だ
だが気一つになる事がある
こいつらは二十歳にはみえない。
高校生位の奴らだ
「はい、コレよろしく」
――ドカッ
まあ、面倒だし売っちまえばいいだろ
でも、
「申し訳ありません、二十歳未満のお客さまに酒類の販売は出来ません」
ぬおっ!?
言いやがった!
「ああ? 俺が二十歳に見えねぇだと!?」
案の定怒ってるぞ
「二十歳以上だと証明出来るものはありますか?」
「面倒だし売っちまえばいいだろ・・・」
と、俺が小声で促しても
「ダメよ」
コレだ
「おい、証明出来るものはあるぜ」
「え?」
なにぃ?
高野も驚きを隠し切れていない
「ほら、大学の生徒証だぜぇ?」
たしかに、コレは近くの大学の生徒証に見える、後ろの連中がクスクス笑ってやがる
「ほら、早く酒売れよ!」
……なんだかな
- 41 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:34 ID:jrv0mCSw
- 高野は無言で計算をはじめようとていた
こいつは余り感情ってのを出さない
夏の旅行の時も、天満ちゃんといる時も
今だってそうだ、いつものポーカーフェイスだ
だけど
なんか違うよな
「……売んねーでいいよ」
「え?」
「売んねーでいいっていったんだ」
「はぁ?おいニーチャン! ふざけてんじゃねーぞ?」
正直俺は頭にキていた
いつもならここまでムカつかない
自分でも良くわからない
だから、口より先に手が出たんだと思う
「な、なんだ、この手はよ? はなせや」
「あ? 誰に向かってそんな口叩いてんだ?どうせこの生徒証もどっかからかっぱらってきたんだろ?」
「ん、んだとっ!」
その顔を見ると図星みたいだな
後ろ奴らがまじまじと俺を見てる
「あんた、もしかして播磨拳児か!?」
ザワ―――――
「マジかよ!」
「変な帽子かぶってるから気付かなかった!」
「おいっ、いいから行くぞ!」
「あ、ああ……」
「俺……結構有名なのかな?」
- 42 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:36 ID:jrv0mCSw
-
――なかなかやるのね、この男
「余計なお世話だったか?」
――そうかも
「店長にバレたらクビかもね」
「ぐっ」
――でも
「……あの程度なら、私だけでどうにかできたわ」
「なんか言ったか?」
「特に何も」
「まあ、いいや。それにしてもお前はスゲエ奴だな」
「なんで?」
「普通なら見てみぬ振りするもんだ」
「ほかはどうであれ、わたしは平気なの」
――わたしは平気
「でも……いい奴だ」
――何を言ってるの?
私がいい奴?どこをどう見ればそうなるの?
「動物たちの時も手伝ってくれたしな」
「私は何もしてない、頑張ったのは塚本さんよ」
「妹さんだけじゃないだろ」
「私は何もしてない」
「いや、おまえも……」
「分かったような口を叩かないで」
「な……」
- 43 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:38 ID:jrv0mCSw
- ――私がいい奴? 私は簡単に嘘をつく、ヒトの弱みを握って喜んでる
ヒトの困ってるところを見るのが好き、ヒトを傷つけることにも何も感じない女なのよ?
こんな私のどこがいい奴だっていえるの?
「……それだけじゃねえ」
「私はそれ以外であなたに恩を売った記憶は無いわ?」
「夏の旅行の時……」
「……」
「さっき言ってた羽交い絞めの時だ」
「それがなに?」
「ヒトはまず疑うところから入るもんだ。俺は知っての通り不良だ。そんな俺をだぞ?」
――だから……
「お前はすぐに誤解を解いてくれたろ」
――だって……
「それが嬉しかった」
…………
「誰がなんと言おうと、お前が自分の事どう思おうと、俺はいい奴だって思う。そんだけだ」
「あなたは……馬鹿だから」
「なっ!」
ああ
なんだか勘違いされてるみたいね
でも
もういい
好きにして
- 44 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:40 ID:jrv0mCSw
- 「この話はもう終わり。私は……監視カメラの編集してくるわ」
「なんかサラリと凄い事言わなかったか?」
「なにが?」
高野の目がギラリと光った
「いや、なんでも」
「これから先が思いやられるわ、辞めようかしら」
「お前が言うと冗談に聞こえない」
「冗談じゃないもの」
「ま、まぢで……?」
一気に青ざめる播磨
「今日の所は冗談にしておくわ」
(ワカラン、こいつの考えてる事が全くわからん!)
「それと、ありがとう」
突然で以外で不気味で、それでいて不思議な言葉が聞こえた
「あ、ああ、あんな不良なんていつでも追っ払ってやる」
「……道理で誰とも進展が無いわけね」
「なんか言ったか?」
「直に体験して分かったわ」
「は?」
「こっちの話よ」
- 45 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:40 ID:jrv0mCSw
-
数日後
「おい高野、シフトの事なんだが」
「ああ、それなら……」
「なんか珍しい組み合わせだね、あの二人」
「いわれてみりゃあ、そうかもしんねえな」
「あいつ! 晶にまで……!? ちょっとそこのハゲ! 何で晶とそんな仲良く話してるわけ!!?」
「なんでお前に教えなきゃなんねーんだ!! っていうかこれ剃ったのお前だろ!!」
「ふん、ねえ晶、あいつとどういう関係?」
「ただ同じ空間でいくつもの夜を越えていく関係」
「なっ!!」
「おい高野!!誤解され……いや、ワザと誤解させる言い方はやめろ!!」
「播磨君、約束したのに……お猿さんだったんだね」
「このドヘンタイ!!!」
「誤解だ!!」
「嘘じゃないわ」
威勢のいい声が響き渡る2−C
ここにまた新しい誤解が生まれた
高野の笑顔が見れたりする
高野としては、からかう為の新しい手段を手に入れただけかもしれないが
- 46 名前:Cool&Hot :04/05/11 23:44 ID:jrv0mCSw
- 職人様が晶を書かない理由が分かった気がします
難しいです、はい、とても
今回はこんな感じです
でわ
- 47 名前:Classical名無しさん :04/05/12 00:13 ID:ndwaBcT.
- グッジョブ!
初めて晶に萌えたかもしれません(*´Д`)
ストーリーが凄く面白かった
視点の切り替えもイイですね
- 48 名前:Classical名無しさん :04/05/12 00:44 ID:y6xJ.8cA
- GJ!
- 49 名前:Classical名無しさん :04/05/12 01:30 ID:m4TvLKu6
- 前スレの「秋は夕暮れ」と「Cool&Hot」
萌えました(*´д`*)
おにぎり派なんですが、・・・・ミコちん×播磨 晶×播磨って
結 構 イ ケ る ん で す ね。
グッドジョブでした
ということで、おにぎり&ミコ播&晶播SS応援します。
- 50 名前:Classical名無しさん :04/05/12 02:03 ID:xvBQ9CvE
- >>46
これは良いものだ。by マ
- 51 名前:Classical名無しさん :04/05/12 09:56 ID:Q.nD7ggU
- アク禁の辛さが和らぎました・・・GJ
- 52 名前:Classical名無しさん :04/05/12 20:35 ID:8PdtOLfM
- GJ!!!
晶播SSははじめてみたかな?でもかなりヨカターヨ・゚・(ノД`)・゚・
- 53 名前:168 :04/05/13 02:08 ID:w7anRfBQ
-
お待たせしました、続きです
- 54 名前:Cross Sky :04/05/13 02:09 ID:w7anRfBQ
- ――――――翌々日
「それじゃあ、先に失礼します」
道着から普段着に着替えた美琴は、稽古を終えた道場を後にする。今日は、午前中で終了だ。
花井は顔を出さなかった。
本人が言ったとおり、地元の友人と久々に再会したり、高校の恩師に挨拶に行っているのだろう。
別に会わなくても良い、といえば嘘になる。
だが一昨日に、あれだけ楽しんだのだ。これ以上望んでしまうと、別れが辛くなってしまう。
無理やり自分を納得させた。
(ま…仕方ないかっ)
そう言いながらも、彼女が今持っている携帯電話には、花井の携帯番号画面が映っているのだが。
その気持ちを振り切るかのように、パチンッと勢い良く携帯電話を閉じた。
(そういや…そろそろ冷蔵庫の中身が少なくなってたよな。家帰ってシャワー浴びたら、商店街に行くか)
帰路につきながら、この後の自分の予定を組み立てる美琴。
家に着くと、その予定通りにまずシャワーを浴び、再び着替えを済ませ、財布を持ち商店街に出かけた。
「さて、今日は何が安いのかな?」
商店街の一角にある行きつけのスーパーに向かう美琴。
春休みなので、普段よりも人ごみが出来ている。スーパーに着くのだけでも、少々骨が折れる。
それでも、何とか店の前に着いた。
そのまま店に入ろうとした、その時。
視界の端に、ある人物が映ったのに気付いた。そこに視線を向ける。
(あ……花井…!)
そこには、今日は道場では会うことは無かった幼なじみ。
思いがけない所で彼の姿を見つけたことで、胸の鼓動が高鳴った。
話しかけようと、傍に駆け寄る美琴。人ごみの間を縫うように近付く。
- 55 名前:Cross Sky :04/05/13 02:11 ID:w7anRfBQ
-
が、あることに気付いた。彼は一人ではないようだ。
横に顔を向け、何かを話しているのか口を動かしている。まだ少々遠いので、何を話しているのかまでは聞こえない。
(友達と一緒にいるのか?)
そう思いながら、さらに近付く。しかし、
(――――!!)
彼の横にいる人物が見えたと同時に、美琴は突然、声のない悲鳴をあげた。
何故なら、花井の傍にいたのは―――――彼と同じくらいの年齢の女性が一人。
それも、外見が自分とよく似た、活発そうなタイプ。
(まさか…)
その瞬間、美琴の頭がドス黒いもので満たされていく。
二人が特別な関係だと決め付けるのは、あまりにも尚早だということは言われなくても分かっている。
もし、一昨日の出来事が――――――――
突然、脳が美琴の気持ちを無視し始めた。
そんな考えを浮かべたくない。花井はそんな奴じゃない。
だが、そんな彼女の気持ちとは裏腹に、頭の中は勝手にその先を思いついていく。
今、花井の横にいる彼女との――――――――
首を勢いよく振り、その考えを頭の中から追い出そうとする。
しかし、それはこびりついているかの如く、彼女の頭から離れない。
(やめて…!)
耳をふさぐ美琴。全てを遮断するかのように。
それでも、そんな彼女の思いもむなしく、脳は最悪の想像を導き出す。
予行演習みたいなものだったとしたら――――――――
(――――――――――!?)
そして彼女は再び、誰にも聞こえることのない悲鳴を上げた。
- 56 名前:Cross Sky :04/05/13 02:12 ID:w7anRfBQ
-
元々、美琴は恋愛が苦手だ。意中の相手に積極的にアプローチをかけることなど、絶対にできない。
加えて彼女は、過去に手痛い失恋をしている。
1年以上好きだった、高校受験の際に家庭教師をしてくれた先輩。
久々に会ったとき、その先輩には彼女がいた。その時、笑顔を見せ祝福した。自分の気持ちを伝えることさえ出来なかった。
そんな終わり方を迎えた初恋を、心底辛いと思った。
親友達と見た花火のおかげで立ち直り、あれから時も経ったことで、今はもうその事には未練はない。
だが―――それが原因で、美琴の異性に対する恋愛が絡んだ気持ちは、更に頑なになってしまった。
言い換えれば、消極的に、悲観的になってしまっているのだ。自分に自信が無くなっていると言っても良い。
そんな彼女に、その状況はあまりにも酷だったのかもしれない。
(違う、花井はそんな奴なんかじゃない!)
頭の中から沸いて出た想像を必死に打ち消そうとする。
意識を再び、花井達の方へ向けた。今にも崩れそうな気持ちを、必死に支えながら。
しかし、ちょうどその時だった。
花井の横にいた女の子が、彼と腕を組んだのである。
急な行動に、花井は焦っているようではあったが、嫌がっているようには見えない。
ギリギリだった心が、折れた。
いつの間にか、自分と彼らの距離もせまっている。話している内容が耳に届くほどに。
「お、おい。離してくれないか?」
「良いじゃない、別に。久しぶりに会ったんだからさ」
美琴にも二人の会話が聞こえてきた。
その様子が、とても楽しそうに見える。
- 57 名前:Cross Sky :04/05/13 02:13 ID:w7anRfBQ
-
自分の視線の先にいる二人が、恋人同士に見えてもおかしくない。いや、むしろ見えないほうが不思議なくらいだ。
きっと遊園地で遊んでいた自分たちよりも、周りから見れば二人はお似合いに見えるだろう。
自分がそう思うのだから。
やはり、悲観的な考えしかできないことが災いした。
ショックで、手に持っていたバックを落とす。ドサッという音が辺りに響いた。
もう、ここにいるのは限界だった。
落としたバッグを拾おうともせず、美琴は身を翻して走り出す。
「周防!? 違、これは――――」
バッグを落とした音で、花井も美琴に気付いたようだ。
だが彼は、見られたくないものを見られてしまったような表情を見せている。それが、彼女へのとどめとなった。
花井の方を見ながら走っていた美琴は、もうためらう事もなく前を向き、加速する。
誤解されたのだと悟った花井は、それを解こうと、走り出そうとする。組まれていた腕を力任せに振り払った。
「ちょ、ちょっと花井君!?」
「すまない!」
隣にいた女の子が突然の彼の行動に、ビックリした声をあげる。そんな彼女に一言謝罪を述べ、花井も美琴の後を追いかけだす。
放ったらかしにされた彼女のバッグを拾って。
商店街を抜けても、二人の走るのをやめない。
辺りはいつの間にか、桜の花が植え揃えられた歩道に変わっていた。花の咲き具合は、いつかの時と同じく七分咲き。
だが、当然のことながら、二人にはそんな周りの様子を気にする余裕などない。
- 58 名前:Classical名無しさん :04/05/13 02:22 ID:Gh5WXF..
- 支援パピコ*´Д`)ハァハァ
- 59 名前:Cross Sky :04/05/13 02:22 ID:w7anRfBQ
- 「周防、待て!」
先ほどから、何度も美琴に叫びかける花井。だが、美琴は耳を貸さない。
追ってきて欲しくない、放っておいて欲しかった。
(なんで…なんで、あたしばっかりこんな……!…ッ、涙が勝手に…!)
視界が歪みだしていたことに、今更気付く。
前の恋愛もそうだった、どうして自分はこんなに報われないのか。
今まで、そんな事は思ったことなかった。だから、この気持ちをどうやって打ち消せば良いのか分からない。
ただ、怒りと悲しみが彼女の中で渦巻く。
「花井のバカヤローーーーーー!!」
前を向いたまま、後ろにいる花井に向かって叫んだ。
「周防! 待つんだ、周防!」
彼女の名を呼んだのは、これで何度目だろうか。
待つように言っても、彼女が止まるとは思っていない。無駄だということも分かっている。
それでも…それでも叫ばずにはいられなかった。
もし叫ぶのを止めてしまえば、彼女を傷つけてしまったことへの呵責で、もう追いかけることが出来ないと感じたからだ。
「周防ーーーー!」
渾身の力をこめて、花井はまた、目の前を走る幼なじみに向かって叫んだ。
やがて、段々と二人の距離が迫ってきた。
二人の脚の速さは、本来ほとんど差がない。しかし、美琴は今、丈の長いスカートをはいている。
脚を思いっきり動かせないので、全力疾走することが出来ないのだ。
花井の息を切らす声が、美琴の耳にも届きだす。もう彼は、自分のすぐ後ろにいるのだろう。
だが、追いつかれるということが分かっても、彼女は走るのを止めない。
とうとう花井が追いつく。
- 60 名前:Cross Sky :04/05/13 02:27 ID:w7anRfBQ
- 「―――あっ…!?」
懸命に手を伸ばし、彼女の左腕をガシッ、と掴んだ。美琴が声を上げる。
彼女が振り返る。
「周お…!?」
また名前を呼ぼうとした花井だったが、途中で言葉が詰まった。
何故なら、彼女の目から―――――――――涙が零れ落ちそうになっていたのだから。
それが合図になるかのように、二人は走るのを止めた。
互いに、そのままの状態で動かない。
美琴は、予想もしなかった光景を見てしまったことに。
花井は、彼女が今まで一度も自分に見せたことのない涙を流すくらい傷ついていることに。お互いが、ショックを受けていた。
「…………」
「…………」
風が吹き、桜の木のざわめく音だけが木霊する。
切れていた息を整え、花井は意を決して美琴に話しかけようとした。
その時。
「………よ」
美琴が呟く。身体はこちらに向けているものの、顔は俯いていてしまっている。
「え…?」
「誰なんだよっ!」
今度は顔をあげながら、美琴は花井に怒鳴る。目に溜まった涙が、音を立てずに流れた。
そしてまた、顔を伏せる。歯を噛み締めた。
そんな彼女の様子に花井は、やはり彼女を深く傷つけてしまってしまったのだと、改めて思い知る。
今まで見たことのない幼なじみに、花井の表情にも辛さが滲み出た。
そして、今まで掴んでいた腕を放す。
- 61 名前:Cross Sky :04/05/13 02:37 ID:w7anRfBQ
-
やべ、投稿規制かかった…
時間も遅いんで、日を改めて投下します
- 62 名前:Classical名無しさん :04/05/13 02:40 ID:Gh5WXF..
- 支援パピコ?
- 63 名前:Classical名無しさん :04/05/13 02:41 ID:1ie.FWTY
- うう…生殺し…激しく明日に期待です
- 64 名前:はっぴ :04/05/13 14:15 ID:xHJu6MGc
- えーなんというか…
今から投下するSSむちゃくちゃ「Cross Sky」とかぶってしまいました。
途中からやばいかなーとも思いましてが
とりあえず作ってしまったんで投下します。
なおこの作品は参考にさせていただいた
分校のエロの大家、矢上さんに捧げます
- 65 名前:ウェット :04/05/13 14:17 ID:xHJu6MGc
- 飲み会の後、2次会でカラオケに行った。
いつもなら好きなアーティストの歌を一番に歌うがそんな気には到底なれなかった
先輩の隣にはあの女がいる
二人はとても楽しそうに見えた
お互いの歌に拍手を送り浜崎のデュエット曲では二人息をそろえて歌っていた
二人は私が知らない半年を二人で歩んできたんだ…そう思うとひどく自分が惨めに思えた
カラオケBOXの2時間私は結局1曲も歌わなかった
「神津、お前の彼女今日どこ泊まるんだ?」
「ああ、彼女ここら辺に親友が住んでるみたいなんでそこに泊まるんだ」
「なーんだ、おれぁてっきりホテルで二人っきりかと思ってたぜ」
「言ってろ…っと、美琴ちゃん?だいじょうぶ?」
「あん?めずらしいな大して飲んでねーのにもうこんなになっちまってるぞ」
「まいったな、送っていくしかないか」
「正弘ー送っていったら?彼女と家近くなんでしょ?」
「うーん…そうするかな…。でもさ」
「だいじょうぶ、お前の彼女は俺がしっかりそこまで送ってってやるぜ」
「そうか、んじゃたのむ」
- 66 名前:ウェット :04/05/13 14:18 ID:xHJu6MGc
- 僕は彼女を背負い懐かしい道を歩き始めた
思えばこの道も半年振りだがもっと長いこと通ってない気がする
美琴ちゃんとの思いでもいっぱいあったな……
なつかしいおもいでをめぐらせていると背中の彼女が身じろぎした
「気がついた…」
「…うん」
「今美琴ちゃんのうちに向かっているから」
「……」
「ずいぶん酔ってたね、もっと強かったはずだよね」
「……」
「…美琴ちゃん?」
「…ちょっと、寄り道してもらっていいですか」
道場に着き二人は裸足になり中に進む
夜の道場は厳格な空気を残しつつ、闇に染まっていた
「…懐かしいな、変わってない」
「半年だもん、変わんないよ」
「美琴ちゃんは変わったね、たった半年だけどきれいになった」
(…残酷だよ、そんな言葉)
- 67 名前:ウェット :04/05/13 14:18 ID:xHJu6MGc
- 「…お世辞がうまくなったねセンパイ、彼女の影響?」
「うーん、そうかもね彼女あのとうり気さくな性格だから」
「…どっちから告白したんですか」
(何でこんなこと聞くんだろう)
「…言うの?」
「教えてください」
「うーん。まぁ彼女のほうからかな。なんか最初冷やかしだったんだって俺のこと」
「……」
「で、何度か友達みたいな感じで付き合って気がついたらって感じで…」
(なにそれ、ふざけてる)
「…もう…したんですか」
「え…」
(…………)
「もう…エッチしたんですか」
「美琴ちゃん。まだ酔って…」
「教えてください!教えて!」
「……」
沈黙
- 68 名前:ウェット :04/05/13 14:22 ID:xHJu6MGc
- それは明確な肯定の表現だと彼女は知っていた
「…美琴ちゃん、僕は彼女が好きだ。きっかけはどうあれ今は大切な人なんだ
君が何が気に入らないかはわかんないけど、そんなに嫌わないでほしい」
そして
決定打
「美琴ちゃんは僕にとって大切な妹のような存在だからね」
愕然、
憤怒、
憎悪、
憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪
憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪
憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪
暗転
- 69 名前:ウェット :04/05/13 14:22 ID:xHJu6MGc
- ほの暗い道場の更衣室、その真ん中に二人の男と女がいた
「ふふっ、合格のお礼だよ…」
私は神津センパイのものをつかんでやさしく息を吹きかけた
「み、美琴ちゃん…なにを…やめるんだ」
「……まだきちんと合格のお礼、やんなかったから…」
「何を言ってるんだ、こんなことしちゃいけない」
「…だめだよ…私の気がすむまでしっかりお礼するからね…」
「み、美琴ちゃん…?」
「そのために…」
先輩を縛り、裸になってもらったんだから
暗闇に湿った音が鳴り始めた
- 70 名前:Classical名無しさん :04/05/13 14:44 ID:tZhEwmU6
- エロパロ板へ!
right now !!!
- 71 名前:Classical名無しさん :04/05/13 15:07 ID:8/.kV9Yw
- え、続きがエロパロスレにあんの?
- 72 名前:Classical名無しさん :04/05/13 16:07 ID:1ie.FWTY
- いや…エロはここじゃマズいんでないかいと…
- 73 名前:Cross Sky :04/05/13 21:46 ID:w7anRfBQ
-
「さっきの娘とはな…まだ僕が高校生だった頃、一緒に生徒会役員をやっていたんだ」
そのまま自分と、さっきの娘との関係を語りだした。
「高校の恩師に挨拶に行って、友人達と会って、それから帰る途中に偶然会ったんだ。とても久々だったんで、つい懐かしくなってな…、それで話し込んでいただけだ」
美琴の顔をジッと見つめたまま、弁解を続ける。
「じゃあ…、何で腕なんか組んでたんだよ…」
俯いていた顔が、今度は横に向く。どうしても、花井と目を合わせられないようだ。
「彼女は誰にでもあんな感じなんだ。過度にスキンシップを取りたがる…とでも言うのかな」
「でも…あんまり嫌がってなかったじゃねえか」
流れる涙を人差し指で拭いながら、美琴は自分が最も傷ついた出来事を口にした。
「それは……その」
どもる花井。今までずっと彼女の顔に向けていた視線を、初めて逸らす。
「僕も…男だということだ」
照れ隠しに頬をポリポリと掻く。そしてまた視線を戻した。
「つまり…お前の誤解だ、周防」
子供をあやす様な口調で話しかける。
そして彼女が拭いたばかりの涙の跡を、指先でなぞった。
しかし、美琴は聞く耳を持たない。
「そんな言葉だけで…信用できるか……」
「周防…」
突っぱねた答え。
すでに折れてしまった心に言い訳をしても無駄なのだろうか。何を言っても聞き入れてくれないのだろうか。
だが、花井はあきらめない。
彼女に訴えかけるように、言葉を紡いだ。
「周防、僕がお前に嘘をついたことがあるか?」
「……」
- 74 名前:Cross Sky :04/05/13 21:47 ID:w7anRfBQ
-
沈黙する美琴。そんなことは言われなくても分かっている。自分と彼は幼なじみなのだから。
無論、彼の性格が、どんなものであるかも充分承知している。
呆れるまでに愚直で、妥協することを良しとしない。
そしてそんな彼を、自分は好きになったのだから。一昨日の出来事が心の底から楽しかったのも事実だ。
そこまで考えた結果、美琴は首を横に振ろうとした。彼を許そうと。
だが、今度は心が裏切った。
頭では納得できても、心がそれを良しとしなかった。
「これが…初めての嘘かもしれないだろ。」
「周防…」
本当はこんな事言いたくない。
彼は、自分だけでなく、誰にも嘘をつかない。だから、彼が言ったように自分の誤解なのだろうということは既に理解できていた。
それでも、口から出たのは本心とは全く逆の天邪鬼な言葉。
自分の言葉に、自分が傷つく。
言ってから後悔したが、もうどうしようもない。花井がもう、諦めてここから去ってしまってもおかしくないだろう。
だが、そんなことになれば。今度こそ、自分の心は壊れてしまう。
また涙が溢れそうになる。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、花井は彼女に言葉を返した。
「なら、僕はどうすれば…お前に許してもらえる?」
顔を上げる美琴。そして、ようやく花井の顔に視線を向けた。
「……」
無言のまま、彼に近付く。そして――――――不器用に抱きついた。
顔も、胸板に少しだけ押し付ける。
- 75 名前:Cross Sky :04/05/13 21:48 ID:w7anRfBQ
-
「…!」
突然の彼女の行動に、驚く花井。身体が緊張していく。
しかし、痺れて動かなくなりそうな腕を懸命に動かし、彼女の身体を少しだけ抱き返した。
「………で…」
「え?」
彼女が言葉を発する。あまりに小さな声だったので、つい聞き逃す花井。
そんな彼の様子に、美琴はもう一度呟いた。
「どこにも…行かないで……」
弱々しく、かすかに震えた声で。
口調も、気の強い普段の彼女とはまるで違った。
「このまま離れたくない、ずっと一緒にいたいよぉ……」
また涙が流れる。
声を絞り出し、必死に自分の気持ちを伝える美琴。花井の服をギュッと掴む。
ずっと隠していた気持ち。その外殻が剥がれだしていた。
そんな彼女が、自分に抱きつく幼なじみが、別人のように思えた。
彼女が押し付ける顔の辺りが、徐々に湿っていく。
花井は困っていた。
彼女をここまで追い詰めたのは、迂闊だったとはいえ自分の行動。
だからこそ、どうすれば許してもらえるか彼女に問いた。
しかし、返ってきた美琴の言葉に、どう言えば良いのか分からない。
明後日には、下宿先に戻らなければならない。かといって、今の彼女を放っていくわけにはいかなかった。
答えが見つからない――――――――
- 76 名前:Cross Sky :04/05/13 21:51 ID:w7anRfBQ
-
「周防…」
何とか彼女の名前を発する。
「周防、僕は…」
「分かってる」
美琴は、花井の言葉を遮った。弱々しさは残っていたものの、さっきとは違う、はっきりとした口調。
「言われなくたって、分かってるよ」
声がまた震えだした。それでも、言葉を紡ぐことを止めようとはしない。
殻が剥がれ、あらわになった気持ちに、もう歯止めは利かなかった。
「こんなの……希望でも…お願いでも…」
次に彼女が発した言葉に、花井はさらに顔を、身体を強張らせた。
「ましてや………恋心なんかでもない…!…」
自分に抱きつく幼なじみは、またしても俯く。
「ただの……わがままだ…」
その言葉を最後に、美琴は押し黙る。その代わりに、彼女の口から嗚咽が漏れ出した。
「……」
花井は何も言えなかった。遂に知った、彼女の本心に。
時が無意味なものになっていく。
唯一、ざわめく桜の枝だけが時間の刻みを忘れなかった。
どの位、そのままの状態でいたのだろうか。
美琴はようやく、嗚咽を止めた。思考を取り戻す。
自分の気持ちを、とうとう花井に伝えてしまった。美琴は、そのことに気恥ずかしさが募りだす。
潤んだ瞳のまま、一瞬だけ花井の顔をチラリと覗き見る。
- 77 名前:Classical名無しさん :04/05/13 21:51 ID:JZmhiykM
- >>70
流れ的にワラタ
- 78 名前:Cross Sky :04/05/13 21:53 ID:w7anRfBQ
-
仮面を被ったような、無表情な彼がそこにいた。
唯一感情を表した眉尻が、少しだけ下がっている。
視線を元に戻す。やはり迷惑だったのだろうか?
友人と一緒にいただけの彼を勘違いし、責めた自分に。その時のあまりにも子供な態度に、愛想が尽きたのかもしれない。
また、視界が歪みだす。
(ダメだ…)
やはり言うべきではなかった。美琴は後悔する。
そうだ、この想いを伝えなければ。自分と彼は、気心の知れた幼なじみのままでいれたのに。
ずっと一緒にいることはできなくても、これからも仲良くすることは出来た。いつものように。
だが。
もう、それすらも叶わないだろう。
遊園地で遊んだことが。道場で共に稽古したことが。高校時代の思い出が。幼い頃の記憶が。
花井との思い出全てが、走馬灯のように彼女の頭の中を駆けていく。
そして最後に、自分の中で結論がはじき出された。
花井にとってあたしは…ただの幼なじみでしかないんだ―――――――――
(もう、ここにいられない…)
彼の胸に手をつき、身体を離す。
自分の背中を優しく抱いていた腕は、抵抗なく、スルリと離れた。
涙を見られぬよう、すぐに後ろを向く。
顔を横に向けるが、もう花井の顔を見ることは出来なかった。そんな勇気は、とっくに使い果たしていたから。
前髪で目元を隠し、一言だけ呟く。
「ゴメン…」
- 79 名前:Cross Sky :04/05/13 21:54 ID:w7anRfBQ
-
もう、彼と楽しく話をすることは出来ないだろう。もしかしたら、顔を合わせることさえできないかもしれない。
しかし、仕方ない。彼を好きになってしまった自分がいけないのだから。
美琴は駆け出そうとする。
その時、
ガシッ
腕を掴まれた。誰が掴んだのかは言うまでもない。
美琴にとってその行動は、予想外だった。
「僕はまだ……」
口を開く花井。そのまま彼女の身体を引っ張った。
今度は花井が美琴を抱きしめる。さっきとは違い、背中から。
「何も答えていないぞ…」
美琴のすぐ後ろでかすれた声が響く。
「………」
何も言えない。口が動かない。
でも、答えなんてもう聞きたくなかった。
そんな彼女の気持ちを汲み取りきれなかったのか、花井はしばらく沈黙した後、口を開く。
「実は…、独り暮らしを始めてからずっと、好きな娘がいてな……」
「!!」
胸に刃物を突き立てられたような感覚が、美琴を襲う。
結果なんか言われなくても分かっていた。それでも、本人の口から言われるのとそうでないのとでは心の痛みがまるで違う。
何故わざわざ、こんなことを言われなければならないのか。
もうこれ以上、聞きたくない。花井の腕を振り払い、すぐにでも走りだそうとした。
- 80 名前:Cross Sky :04/05/13 21:56 ID:w7anRfBQ
-
しかし、それ以上の力が自分を抑えつける。
「周防、暴れるな」
「うるさいっ!」
力は完全に花井が勝っている。
それでも、美琴は花井から離れようともがき続けた。
「僕の言葉を、最後まで聞け」
暴れる子供をあやすような声に、彼女はさらに苛立った。
「聞いたって、どうせ同じだ!」
「周防!」
一転して厳しい口調になる花井。美琴はビクッと身体を震わせた。抵抗を止めてしまう。
同時に、スッと自分の髪をなでられた。
「しばらく会うことが出来なかったんだが、この間久々に会ってな。別れたときと全く変わってなくて、安心した」
彼女が暴れるのをやめたことを確認した花井は、語りだす。
自分が想いを寄せる娘がどんな女性なのかを。
しかし、当然美琴はそんなことは聞きたくない。耳を塞ぎたかった。
「その娘はな、クラスの人気者で、面倒見が良くて、人当たりも良い…」
そこで一旦言葉を切る。
美琴は何の反応も示さない。早くこの状況が過ぎ去ってしまえば良い、そう思っているらしかった。
しかし、彼女のそんな様子に構わず、花井は続ける。
「ずっと昔からの幼なじみで…」
その言葉に、美琴は俯かせていた顔を上げた。
そんな彼女に花井は顔を近づけ、息を吐き出すように耳元で囁く。
- 81 名前:Cross Sky :04/05/13 21:56 ID:w7anRfBQ
-
「そして今、僕が抱きしめている。」
「―――ぇ…?」
その言葉に、思わず美琴は振り返る。さっきは振りほどけなかった花井の腕が、いとも容易く解けた。
目に溜まった涙が、辺りに散らばる。
信じられない、といった表情のまま、さっきまで見つめるのが怖かった花井の顔に、視線を向けた。
そんな彼女の反応に、花井は少しだけ微笑む。
そして――――美琴の気持ちに答えを返した。
「周防………好きだ」
言い終わると同時に、再び彼女を抱きしめる。
離れてみて、初めて気付いた気持ち。
身近すぎた存在だったからこそ気付かなかった気持ち。
この想いを成就させるのは、互いに無理だろうと思っていた。
だから、言い出せなかった。言ってしまえば、昔からの自分たちの関係も崩れてしまうと感じていたから。
「ホ…ホントに……?」
「ああ、僕の偽らざる本心だ」
「嘘じゃ…、嘘じゃないよな?」
何度も問いかける美琴。その表情にはまだ、不安そうな色が残っている。
それを打ち消そうと、花井は先ほどと同じ台詞を口にした。
- 82 名前:Cross Sky :04/05/13 21:58 ID:w7anRfBQ
-
「周防、僕がお前に嘘をついたことがあるか?」
美琴の顔から、不安の色が無くなっていく。
そして、彼女は今度こそ首を横に振ることが出来た。
「ううん…」
「ならば、問題はあるまい。」
優しく話しかける花井。
そんな彼の対応に、美琴はまた目に涙を溜め、それが音もなく流れる。
しかしそれは、今までのとは違う歓喜の涙。
「泣くな、周防。お前に…泣き顔は似合わん」
そう言いながら、花井は指先で美琴の涙をぬぐっていく。
「だ、だってさ…」
一度は、もう無理だと思ったから。あきらめてしまっていたから。
それだけに、花井の気持ちを知った時には、すぐに信じることは出来なかった。
美琴も、花井の身体を抱きしめ返す。
「夢………でもないよな?」
「もちろん、まぎれもない現実だ」
その言葉にようやく彼女もそっと笑顔を見せた。柔らかい感覚が二人を包む。
徐々に、止まっていた時間が動き出した。
それでも、二人はそのまま動かない。
待ち焦がれたこの瞬間を、じっくりと味わうかのように。
――――やがて
「あの、さ…」
「なんだ、周防」
抱きしめあったまま、二人とも口を開く。
「その、えっと…」
歯切れの悪い美琴の口調に、花井は彼女が何かを言いたいのだということに気付く。
- 83 名前:Cross Sky :04/05/13 21:59 ID:w7anRfBQ
-
「周防、どうした?言いたいことがあるのなら、遠慮するな。」
その一言が、後押しすることとなったのか。勇気を振り絞り、美琴は口を開いた。
「やっぱり、言葉だけじゃ…不安なんだ……」
その一言に、花井は彼女の真意を掴む。
途端に平静でいられなくなったのが、自分でも分かる。
言葉だけでは不安ということは、言い換えれば、態度で示して欲しいという事だ。
それを証明する行動がどういうものであるか、いくら朴念仁の花井であっても分からないわけがない。
「……周防、いいのか?」
視界が狭くなり、動悸が激しくなる。だが、それは彼女も同じなのだろう。
正常に機能しなくなりかけた頭を必死に動かし、花井は美琴を見つめながら問いかけた。
「…………うん」
美琴は、俯いて目を逸らす。
それはさっきのように勇気がなくなったからではなく。
ただ、恥ずかしいから――――――
花井は抱きしめていた腕を解いた。
そして、美琴の両肩を優しく掴む。その時、彼女の方が大きく震えたのには気付かないフリをした。
すると彼女は急に目を開き、見つめ返してくる。
- 84 名前:Cross Sky :04/05/13 22:01 ID:w7anRfBQ
-
「は、初めてなんだからなっ」
顔を真っ赤にして、初々しい台詞を口にする美琴。
そんな様子に花井は、心の底から湧き上がる感情を抑えれなくなってきていた。
「分かった」
ぎこちなく顔を動かす。
それが合図になるかのように、美琴も顔を上げ、再び眼を閉じた。
二人の影が、顔が、そして唇が重なる―――――――――――――
やはりこれは夢なのではないだろうか。
心のどこかでそう思う自分がいる。
だが、周りで木霊する桜の花の擦れる音が、自分の髪を撫でる優しい風が、そして何より唇の感触がそれを否定した。
今、ずっと夢に見ていた人と、互いの気持ちを確かめている。
今まで一度も体験したことのない、表現することの出来ないおかしな感覚。
まるで、触れている箇所から身体全てが溶けてしまいそうな不思議な感覚。
このまま溶けてしまってもいい、美琴は心の底からそう思った。
やがて、名残惜しそうに唇を離す。
触れ合っていたのは、時間にしてみればわずか4、5秒程度。
だが、二人にとってそれは、永遠といっても過言ではない一瞬だった。
美琴は再び、花井に身体を預ける。
- 85 名前:Cross Sky :04/05/13 22:02 ID:w7anRfBQ
-
足元がおぼつかない。立っているのが、少々難しいように見えた。
やがて花井が、指先で美琴の顔をゆっくりと撫でる。
目の前にいる存在が、本物なのか確かめるかのように。
彼もこれは夢なのではないかと、心のどこかで思っていたのだろう。
やがて、納得したのかその行為を止める。
その代わりに、今度は遠慮することなく彼女の身体をギュッと抱きしめた。
その時―――
少々強い風が吹いた。
桜の花びらが舞い落ち、二人に降り注ぐ。
「桜吹雪、か」
思わず呟く花井。
一方美琴も、その光景が、どこかで見たことあったのを思い出す。
「…卒業式の時にも、こんな感じで花びらが舞ってたっけ」
「ああ、そうだったな」
あの頃を懐かしむ。
まだお互いに、特別な感情を抱いていなかった頃。
あの頃は、ただの幼なじみだった。
でも今は違う。
何よりも大切な、かけがえのない存在。
やがて美琴はあの時、彼に抱いた疑問があったのを思い出す。
「そういやお前、『桜吹雪が忘れられない光景になりそうだ』とか言ってたよな?」
「よく覚えているな、周防」
花井は、その言葉に敏感に反応する。
- 86 名前:Cross Sky :04/05/13 22:04 ID:w7anRfBQ
-
「あれって、どういう意味で言ったんだ?」
「…………」
花井は押し黙る。
だが、一言だけポツリと漏らした。
「あの時、お前に会う前に、僕が誰に何を言っていたか、忘れたわけではないだろう?」
卒業式の桜道。
花井は確かに自分と出会う前に、誰かと対峙していた。
その相手、その内容とは確か―――
「あ…」
美琴は思い出す。
彼には高校時代、別に想いを寄せていた女性がいたことを。
そして、卒業式に彼が玉砕したことを。
桜吹雪を忘れられないと言ったのは、おそらく。
そのときのことを思い出してしまうから――――
「あ…、悪い」
つい謝罪の言葉を口にする美琴。
「? 何を謝る?」
「だって…思い出しちまっただろ?…あの時のこと」
申し訳なさそうに、顔を沈めた。
だが、花井は笑みを湛えたまま彼女に言い放つ。
「気にすることはない。もう…2年も前のことだ。」
その様子は、彼がそのことに未練がないことを表していた。
更に花井は言葉を続ける。桜の木を見上げながら。
「それに、お前のおかげで違った意味で『忘れられない光景』になるだろうからな」
その言葉に、美琴は元に戻りかけた自分の顔色が、また赤くなっていくのが分かった。
- 87 名前:Cross Sky :04/05/13 22:05 ID:w7anRfBQ
-
「ば、ばかやろ……、そんな恥ずかしいこと言うなよな…」
軽く睨みながら文句を言う。
「そう言うな。本心なのだから仕方あるまい」
意に介することなく、花井は答えた。
そして、ゆっくりと身体を離す。
「そろそろ行くか、周防」
美琴の顔を覗き込みながら、優しく話しかける。
「……おう」
はにかみながら、美琴も答えた。
そして、ゆっくりと歩き出す。
その時。
花井は自分の腕が引っ張られたのを感じた。
見ると、顔を赤くしたままの美琴が、自分の人差し指と中指と薬指、その三本の指だけ掴んでいる。
本当は、しっかりと手を繋ぎたかったのだろう。
でも、そこまでの勇気が出せず、指だけをつかむ結果となったに違いない。
その美琴らしい行動に、花井はまた、フッと笑みを漏らす。
そのまま、二人は歩道を歩いていく。
ザワザワと揺らめく桜の枝が、舞い落ちる花びらが。
長い月日をかけて、ようやく心を通い合わせた二人を祝福しているかのようにみえた――――
- 88 名前:Cross Sky :04/05/13 22:06 ID:w7anRfBQ
-
それから二日後。
二人は駅のホームにいた。
そう、花井はもう下宿先に帰らなければならないのだ。
大きめのバッグを携え、電車を待っている。
そして美琴は、その見送りに来ていた。
「わざわざ、見送りに来る必要も無かったんだが」
「なんだよその言い草。折角時間を割いて来てやったんだから感謝しろっ」
本当は、少しでも長く一緒にいたくて来たのだが。
やはり、そう簡単には素直にはなれない。たとえ互いの気持ちが理解できても。
「忘れ物は無いだろうな?」
「ああ、もちろん無い。僕を誰だと思っている?」
「女心がちっとも分かってねえ、超がつく真面目バカ」
「………お前な」
プァーーーン
花井が言い返そうとしたその時、彼が乗る電車がホームに入ってきた。
乗客が降り、改札口へ向かっていく。
「……もうちょっとこっちにいれないのか?」
電車がホームに入ってきたことで、彼との別れが迫っていることを実感したのだろう。
ついつい本音を漏らす美琴。憂いの表情が滲み出る。
「スマン、もう向こうに帰ってからの予定を入れてあるんだ」
「…そっか」
「そんな顔をするな。この夏休みにはしばらくこっちにいるつもりだ。」
沈んだ表情の彼女を慰めようと、花井は優しい口調で言葉を紡ぐ。
その言葉に、ほんの少し驚いた様子をみせる美琴。
「え…、でもバイトで忙しいんじゃないのか? 仕送り無いんだろ?」
「もう僕も三年生だ。授業も減るからな、空いた時間にバイトをすれば、1、2週間位は帰ってこれる」
予想外の彼の言葉。
- 89 名前:Cross Sky :04/05/13 22:07 ID:w7anRfBQ
-
卒業するまで会えないだろうと思っていた美琴は、思わず顔をほころばせる。
「なんだ? そんなに僕に会えるのが嬉しいのか?」
「なっ…、そんなんじゃねえ!」
動揺し、顔が赤くなっていれば、当然ながら説得力は無いわけで。
「僕は楽しみだぞ、お前と次に会うときが」
「……言ってろ、ばかっ」
悪態をつきながらも、その顔は笑顔。
そんな彼女をさらに喜ばせる言葉を、花井は口にする。
「ずっと一緒にいるという約束を破ってしまったからな。それ位、当然だろう…男として」
「え…?」
そう、彼が口にしたのは。
それは昔、二人が指輪にこめた、淡い約束の一つ。
美琴は、観覧車の中で指輪を見せたときの会話を思い出す。
- 90 名前:Cross Sky :04/05/13 22:08 ID:w7anRfBQ
-
―――――――――――――
「これは覚えてるか?」
「これは……指輪か?」
「…すまん、ちょっと思い出せないな」
「そっか、忘れちまったか」
「覚えてて欲しかったんだけどな…」
「ならば、こっちにいる間に思い出してみせる」
「へぇ、そんな事言って、思い出せなかったらどうするんだ?」
「思い出してみせる」
「期待してるよ」
「ああ、期待してくれ」
―――――――――――――
「思い出したのか…」
彼は確かに言った。必ず思い出す、と。
そしてそれを約束した。
「忘れ物は無い、そう言ったはずだぞ?」
得意げな顔を見せる花井。
幼少の頃と比べ、随分変わってしまった彼だが、時折、子供っぽい表情を見せる。
それが、昔の面影をほんの少しだけ残していることを美琴は知っていた。
おそらく、そんなことを知っているのは自分だけだろう。
彼が、指輪の約束を思い出してくれたこと。
そして、昔の彼の面影を久々に見たことに美琴は、満足げに笑みを浮かべる。
- 91 名前:Cross Sky :04/05/13 22:09 ID:w7anRfBQ
-
「ふふっ、ありがと。わざわざ思い出してくれてさ」
「気にするな、忘れていた僕が悪いんだからな」
電車が出発するまであと3分ほど。
その時間が近付くにつれ、二人の顔から明るさが消えていく。
「もうすぐ…お別れか」
「そんな顔するな。寂しくなれば、電話でもメールでもしてくればいい」
「そうだけどさ…」
電話があれば話をすることは出来る。
しかし、会うことはできない。
電車がホームに入ってきたときと同様、また沈んだ表情になる。
その時花井は、彼女の口からある言葉を聞いていないのを思い出した。
「そういえば周防、大事なことを聞いていないのだが」
「な、何だよ。急に」
突然、まじめな顔になる彼の様子に、少々たじろぐ美琴。
「お前の口からまだ、僕への気持ちを聞いていないのだが」
「………は?」
この男は突然、何を言っているのだろうか。
あの日、先に自分の気持ちを打ち明けたのは自分ではなかったか。
その彼女に疑問を解消するように、花井は更に口を開く。
「僕のことを“どう思っているか”聞いていないのだが」
「………」
花井の言いたいことを理解する美琴。
- 92 名前:Cross Sky :04/05/13 22:10 ID:w7anRfBQ
-
しかし、そんなことを急に言われても、どうしていいか分からない。
「別に言わなくったって、分かってるだろ? ……あたしの気持ち」
なんとかかわそうとする。しかし、
「確かにそうだが…、お前の口から聞きたい」
食い下がる花井。
それは、彼女を困らせようだとか、ふざけて言っているようには見えない。
本当に聞きたいと思っているらしかった。
それに花井は、他人に願い事をすることなど滅多に無い。
それ程、自分の口から聞きたかったのだろう。
そんな彼の真摯な態度に、美琴は気持ちを改めた。
「わ、分かったよ」
急速に早くなる鼓動。視界がぼやける。
それを何とか抑え、意を決し、弾かれたように口を開いた。
「あ、あたしも………好きだよっ」
言い終わると同時に、あまりの恥ずかしさでつい俯く。
そして、今度は自分から先手を打った。
「も、もう言わないからなっ」
それから更に、顔をプイッと逸らす。
花井は彼女のそんな様子に、柔らかく笑いかける。
「ありがとう、周防」
その言葉が、彼の今の心情全てを表しているようだった。
- 93 名前:Cross Sky :04/05/13 22:14 ID:w7anRfBQ
-
やがて、美琴はおもむろに横を向いたまま、花井にあるものを差し出す。
それは少々分厚い茶封筒。中に何か入っているようだ。
「これは?」
「電車の中で、じっくり楽しみな」
つっけんどんに答える。まださっきのことが恥ずかしいようだ。
その時、
プルルルルルルルルッ
ホームに発車のベルが鳴り響く。
その音に、美琴は顔を上げる。もう、花井は電車に乗り込んでいた。
互いに、名残惜しげな顔を見せる。
「じゃあな、花井」
「ああ、お前も元気でな。周防」
その言葉を言い終わると同時に、ベルが鳴り終わる。
そして、ガタンッ、とドアが閉まった。
二人は顔を逸らさない。
もう、悲しげな顔は見せなかった。
笑顔で手を振り、電車がホームから出て行くのを、美琴は見守った。
- 94 名前:Cross Sky :04/05/13 22:15 ID:w7anRfBQ
-
(行っちゃった…か)
次に彼に会えるのは夏休み。
またしばらくは会えない。
その事での寂しさはあったものの、もう辛くはない。
どれだけ距離が離れていようと、心は常に繋がっているのだから。
ゆっくりと背を向け、美琴は帰路につく。
振り返りはしなかった。
楽しい思い出は、その時に新しく作れば良いだけのこと。
晴れ晴れとした表情のまま、美琴は駅を後にした。
(周防のヤツ、一体、何を渡したんだ?)
電車の中で、席に座り、先ほど渡された封筒を開ける花井。
開けるとそこには、4日前に彼女と行った、遊園地の写真が入っていた。
いきなり写されて、ビックリした顔をした自分。
遊園地のマスコットと一緒に写った、楽しそうな美琴。
その他にも、あの時撮った楽しい記憶を思い起こさせるものがそこには写っている。
彼女がこの写真を渡したのはきっと、このことを忘れて欲しくなかったからなのだろう。
美琴のそんな心情を察しながら、一つ一つ写真に目を通していく。
- 95 名前:Cross Sky :04/05/13 22:16 ID:w7anRfBQ
-
そして、最後の一枚。
それは、遊園地を出る直前に写した、自分と彼女が肩を組んだ写真。
その裏にマジックで何か書いてある。
裏返しにしてそれを見ると、美琴の字でこう書いてあった。
大事にしやがれ!
(アイツらしいな…)
ついほころぶ口許を、その写真で隠す。
言われなくったって、そのつもりだ。
この写真は、向こうにいる間、自分の支えとなるだろう。
今度帰ってきたとき、彼女とどこへ行こうか。早くもそんなことを考えだす。
ガタン、ゴトン
花井を乗せた電車は、矢神町から離れていく。
彼が次に戻ってくるときには、二人はどんな思い出を作るのだろうか。
そしてその時に、どんな新しい約束をするのだろうか。
それを知っているのは、二人を慰め、心から祝福した桜の木だけ――――――――――
〈終〉
- 96 名前:Cross Sky 〜後書き〜 :04/05/13 22:18 ID:w7anRfBQ
-
製作日数二週間あまり、ワードで54ページにもなった私的縦笛長編最終回、
何とか終わりまで書くことが出来ました。
1スレで終わらせられなかったのは無念ですが
遅筆で申し訳ないです
前述したとおり、このSSのきっかけとなったのは、縦笛絵師の交差天氏の絵でした
過去絵No1059、過去画像No136(こっちはまだ保管庫入りしてませんが)の二つの絵を元に書き始め、
題名も思いつかなかったので、氏の名前も拝借しました
交差(Cross)、天(sky)ってな感じで。
…交差天氏、勝手にすいませんでした。
一応、夏休みのアフターストーリーとかも考えてはあるんですが…多分書かないと思います
最後に、絵の使用を許してくださっただけでなく、挿絵まで描いてくれた交差天氏
このSSを読み、またレス下さった皆様方、ありがとうございました
しかし、想像以上に長くなった…
- 97 名前:Classical名無しさん :04/05/13 22:19 ID:qmlfIyEQ
- ……なんだかレスを付けるのが果てしなく野暮に思えてもしまうので。
ありがとうございました、この一言を以て感想に。
- 98 名前:Classical名無しさん :04/05/13 22:20 ID:Rb05B4II
- っ∀`) ありがとう、ほんとありがとう。
- 99 名前:Classical名無しさん :04/05/13 22:40 ID:18gxV4a2
- 本当に良いものを読ませて頂きました。
ありがとうございました。
- 100 名前:Classical名無しさん :04/05/13 23:01 ID:Hg/busGQ
- 長編お疲れ様でした。
素晴しい縦笛をありがとうございます。
っ∀`)どこまでもGJ!でつ
- 101 名前:sage :04/05/13 23:02 ID:Hg/busGQ
- あわわ、ageちまった、吊ってきます…
- 102 名前:嗚呼… :04/05/13 23:20 ID:Hg/busGQ
- もうだめぽ…
- 103 名前:Classical名無しさん :04/05/13 23:42 ID:9u9mt3js
- 俺は縦笛派じゃないんですが、
これだけ上手いと派閥関係なしに純粋に楽しめました。
次回作、非常に期待しています。GJ!
- 104 名前:Classical名無しさん :04/05/13 23:43 ID:fjGCxdoI
- 長編お疲れ様でした。そしてありがとう・・・
とてもすばらしいデキで、言葉では表しきれません。
私も頑張って、いい縦笛SSを書こうと思います。
- 105 名前:Classical名無しさん :04/05/13 23:58 ID:gDyB4jE2
- ほんとに楽しめました。スクラン本編より待ちどうしかった〜
いい縦笛をありがとう!縦笛万歳GJ!!
- 106 名前:Classical名無しさん :04/05/14 01:18 ID:w0Bdqwto
- ああ、いい作品読むと創造意欲がわくな……。自分も二作目書くかな。
- 107 名前:and I close to you :04/05/14 17:44 ID:UP3rarDA
- 雲一つ無い空の下、沢近愛理は一人駅前を歩いていた。暦の上ではとっくに秋になっている
はずなのだが、真上からの日差しはまったくそれを感じさせない。英国で過ごした時間の長い
沢近にとっては、この暑さは少々過酷である。沢近は近くにあったベンチに腰掛けると、
太陽を見上げて小さく溜め息をついた。
「まったく、こんなことなら素直に家にいるんだったわね」
そうつぶやいて、鬱陶しそうに前髪を掻き上げる。今日は日曜日であり、午前中からデートの
予定だった。それがどうしてこんな所に一人でいるのかというと、理由はひとえに彼女一流の
「気まぐれ」に尽きる。今回もデートの待ち合わせ場所にまでは行ったものの、急に気分が変わり、
そのままUターンして帰ってきてしまった。お嬢様育ちゆえのものなのか、それとも生まれつきの
ものなのか、その由来を知る術はない。
「恋愛不能症だね」
クラスメイトである高野晶の言葉が、ふと沢近の脳裏に浮かんだ。流れるような金髪に、
ギリシャ彫刻の如く整った顔立ち。そして抜群のスタイル。それを持ってしてまだ一度も男性と
付き合った事が無いというのは、晶に言わせると病気に他ならないらしい。もう一度太陽を見上げて、
小さな声で愚痴をこぼす。
「ま、これからよね……あら?」
その時、一人の少女の姿が沢近の目に止まった。雑踏の中を歩いていく少女の姿は、沢近に
負けず劣らず美しい。沢近はベンチから立ち上がると、そのまま少女の後を追った。
「ちょっと、そこのあなた!」
「……?」
沢近の声が届いたのか、少女が怪訝そうな表情で振り向く。彼女の予想通り、その顔はよく
見知ったものだった。
「……先輩」
- 108 名前:and I close to you :04/05/14 17:45 ID:UP3rarDA
- 「……シナモンティー、お待たせしました」
「ありがと」
カップを受け取ると、沢近は少しだけ紅茶を口に含んだ。シナモンの爽やかな風味が、口の中へと
広がってゆく。英国帰りの沢近にとっても、その味は充分に満足できるものだった。
「それにしても、まさかあなたがこんな所でアルバイトしてたなんてね。意外というか何というか」
「は、はい……すみません」
給仕服に身を包んだ先程の少女―――塚本八雲が、申し訳なさそうに頭を下げる。その姿を見て、
沢近は少しだけ顔をしかめた。
「別に謝ることじゃないでしょ。働いてるっていうのは、もっと誇っていいことだと思うけど」
「は、はい……」
沢近の言葉に、八雲が恐縮の表情を見せる。駅前での邂逅から数十分が経ち、沢近は八雲の働く
喫茶店を訪れていた。他にすることもないし、暇つぶしにはなるだろうと考えてのことである。
「ま、いいわ。あなたも大変ね」
「い、いえ、そんな……」
八雲はほんのり頬を赤く染めると、そのままうつむいてしまった。そんな彼女の仕草は、姉である
塚本天満とは似ても似つかない。言うなれば、昔ながらの日本女性の雰囲気をそのまま閉じこめた
ような感じである。花井春樹その他の男子が、血眼になって八雲を追いかけているというのも、
何だか沢近は納得できるような気がした。
- 109 名前:and I close to you :04/05/14 17:46 ID:UP3rarDA
- 「……ホント、天満の妹とは思えないわね」
「……?」
「何でもないわよ。そんなことより、あなた一応仕事中でしょ。入り口のベルが鳴ってるけど、
行かなくていいのかしら?」
「え? あ、はい!」
慌てて八雲は顔を上げると、入り口の方に向かって走っていった。八雲の足取りに合わせて、
深い色のスカートがひらひらと揺れる。「素直なコね」と小声でつぶやいて、沢近は再び紅茶を
口に運んだ。
「お一人ですか?」
「ああ、なるべく静かな席を頼むわ」
会話から察するに、どうやら今度の客は若い男のようである。沢近からしてみると、男一人で
喫茶店というのは珍しいことのように思えた。まして今は日曜の昼下がり、周りのテーブルにも
カップルの姿が多々見受けられる。よほどの物好きか、はたまたウェイトレス目当てか。
好奇心も手伝って、沢近は男の方へと視線を向けた。
- 110 名前:and I close to you :04/05/14 17:47 ID:UP3rarDA
- 「……え!?」
「……な!?」
一瞬の間をおいて、両者が同時に驚きの声を上げた。明らかにうろたえた様子で、男が八雲の
後ろへと隠れる。その姿を見て、沢近は迷わず席を立った。
「あ、あの……」
「どきなさい、そこの男に話があるわ」
「で、でも……」
「いいからどきなさい!」
沢近の迫力に、思わず八雲が後ずさりをする。半ば突き飛ばすようにして八雲をどけると、そのまま
沢近は男を自分の前へと引きずり出した。大柄な身体にサングラス、そして今時珍しいベレー帽。
沢近の知る限り、そんな男はこの世に一人しかいない。
「悪いけど、ちょっと話があるの。奥のテーブルまで来てもらえるかしら?」
「……人違いだ。悪いが他を当たってくれ」
「とぼけないで! アンタみたいな男が他にいるわけないでしょ!」
沢近が鬼の形相で男を問いつめる。結局その男―――播磨拳児は、健闘空しく店の奥へと
引きずり込まれていったのだった。
- 111 名前:and I close to you :04/05/14 17:50 ID:UP3rarDA
- 「……で、なんでこんな所にいるのよ」
苦虫を噛み潰したような表情で、沢近が口を開いた。二人の間に流れる空気は、いつもにも
増して重苦しい。「見つめ合っている」と言うよりは、「睨み付け合っている」と言った方が
正確だろう。
「……そりゃこっちの台詞だ」
憮然とした表情で、播磨が答える。それを聞いて、沢近は自らのカップをテーブルに叩き付けた。
「私のことはいいの。さっさと質問に答えなさい」
「はっ、何でテメーなんかに答える必要があんだよ」
「ふん、偉そうに。どうせやましいことでもあるんでしょ」
「な、何だと!?」
「ほら、図星じゃない」
「―――〜〜〜!」
テーブルの上の空間に、バチバチと火花が散る。路上告白の一件に加え、海での羽交い締め行為。
最近では播磨の髭にまつわる騒動もあった。沢近が未だにきちんと謝罪をしていないこともあり、
二人の関係は悪化の一途を辿っている。ここで二人が出会い、こうやって言い争いになったのも、
ある意味必然と言えるかもしれない。その時、
「あ、あの……」
険悪な様子の二人を見かねてか、八雲が一杯の紅茶を運んできた。播磨の表情が、一転して
柔和なものに変わる。
「あ、妹さん。すまねぇな」
「い、いえ……」
播磨はカップを受け取ると、そのまま一気に紅茶を飲み干した。空いたカップに、八雲がいそいそと
紅茶を注いでゆく。
- 112 名前:and I close to you :04/05/14 17:51 ID:UP3rarDA
- (―――そう言えば……)
二人のやりとりを見て、沢近は以前に聞いた噂話を思い出した。学校一の不良である播磨と、
学校屈指の美少女である八雲が、隠れてこそこそとデートを繰り返しているというのだ。
もちろんその話はただの噂であり、信憑性は低い。だがもしその噂が本当であれば、今日のことも
すべて説明がつく。沢近の頭の中で、話が一本へとつながった。
「……ふーん、なるほど。そういうこと」
「あ?何か言ったか?」
「私や美琴の次はその娘ってわけね、最低男」
「……は? 何言ってんだ?」
「あら、とぼけなくてもいいのよ? さぞかし楽しかったでしょうね、人の気持ちを弄ぶのは」
「……?」
訳がわからないといった様子で、播磨が沢近を見つめる。そんな二人を見て、慌てて八雲が
口を挟んだ。
「あ、あの、とりあえず、落ち着いた方がいいと思いますけど……」
「これが落ち着いていられるもんですか! だいたいあなたもあなたよ。キャンプの時、こいつは
誰にでも手を出す変態だって話をしたじゃないの。先輩として忠告しておくわ。悪いことは
言わないから、さっさとこの男とは手を切りなさい。さもないと、一生後悔するわよ」
激しい口調で、一方的に沢近がまくし立てる。その様子からも、彼女の怒りのほどが伺えた。
しかしながら、怒っているのは播磨も同じである。訳がわからないまま一方的に罵倒された上、
今回は八雲にまで被害が及んだ。ここまでされては、さすがの播磨も黙っていられない。
カップをテーブルに叩き付け、サングラス越しに沢近を睨み付ける。
- 113 名前:and I close to you :04/05/14 17:51 ID:UP3rarDA
- 「……おい、大概にしとけよ。妹さんが困ってるじゃねぇか」
「アンタは黙ってなさい! 元はと言えば悪いのはそっちでしょ!」
「だから、何のことかわかんねーっつってんだろ!」
テーブルを挟んで、再び二人は口論を始めた。お互いへの罵倒の言葉が、延々と繰り返されてゆく。
そしてそのまま十分ほどが経過し、今にも掴み合いに発展しそうなまでに二人の怒りが膨れ上がった
まさにその時、
「あ、あの!」
突然、八雲が話に割り込んできた。二人の視線が、同時に八雲へと向けられる。
「……何よ」
苛立ちを抑えられないといった様子で、沢近は八雲を睨み付けた。だが、八雲の瞳に迷いはない。
まっすぐに沢近を見据えながら、八雲は口を開いた。
「……播磨さんは、そんな人じゃないと思います」
- 114 名前:and I close to you :04/05/14 17:52 ID:UP3rarDA
- 「……何ですって?」
その言葉に、一瞬沢近は自分の耳を疑った。はっきりとした口調で、八雲が言い切る。
「播磨さんは、先輩の考えてるような人じゃないと思います」
「……あなた、本気で言ってるの?」
「はい」
「この男は天満に手を出してたのよ!? 夏休み前には私に告白してきたし、本命は美琴だって
話も聞いたわ。さんざん弄ばれた挙げ句、ゴミみたいに捨てられるのが落ちよ!」
「播磨さんはそんなことしません! 優しい人ですし、動物にだって好かれてます。何があったのか
私は知りませんが、きっと何かの間違いです!」
食い下がる沢近に対し、八雲は一歩も退こうとはしなかった。八雲の言葉の一つ一つが、沢近の心に
深々と突き刺さってゆく。憤怒、屈辱、そして嫉妬。沢近の中で、何かが弾けた。
―――何よ。
アンタがこいつの何を知ってるっていうのよ。
さっきまで泣きそうな顔してたくせに。
何も知らないくせに。
何も――――――
「―――っ!」
「あ、オイ、待て!」
ひったくるようにしてバッグを掴み、入り口へと向かって駆け出す。播磨が制止するのも聞かずに、
沢近は店から飛び出していった。
- 115 名前:and I close to you :04/05/14 17:53 ID:UP3rarDA
- 英国人の父親と、日本人の母親との間に沢近は生まれた。そのため、彼女は人生の半分を英国で
過ごしている。父親譲りの金髪と、母親譲りの美貌は見るものすべてを引きつけた。裕福な
家庭だったこともあってか、金銭的にも苦労したことはない。しかし、これまで沢近が送ってきた
人生が幸せなものだったかというと、決してそんなことはなかった。
何もしなくても男性からは次々に言い寄られ、それによって女性からは反感を買う。資産家の
令嬢ということもあってか、いわれのない誹謗中傷や嫌がらせを日常的に受けた。頼りの父親は
仕事でほとんど家にはおらず、悩みを打ち明けられる相手もいない。それでも、父親や母親に
心配をかけたくないという一心で、沢近は「いい子」を演じていた。次第に彼女は自分の感情を
心の奥へと押し込め、どんな人間とも上辺だけで付き合うようになってゆく。自分さえ我慢していれば、
他の誰も傷つくことはない。ニコニコ笑ってさえいれば、すべてが滞りなく進んでゆく。
これでいいのだ、これが一番いいのだ―――そう考えていた。日本に来て、天満たちと出会うまでは。
- 116 名前:and I close to you :04/05/14 17:53 ID:UP3rarDA
- 日本の高校に入学したことで、沢近の人生は大きく変わった。その中でも、天満たちとの出会いは
特別な意味を持つ。彼女たちのお陰で沢近は感情を表に出せるようになり、また自らに自信を
持つことができた。沢近にとって、彼女たちは何物にも代え難い存在である。もし日本に来ることが
なかったら、今の沢近は存在し得なかったであろう。
そんな沢近にも、二つだけ苦手なものがあった。一つは料理、もう一つは父親である。
幼い頃から「いい子」を演じてきた沢近は、どうしても他人に素直に甘えるということができなかった。
普段父親がほとんど家にいないこともあって、たまに会ってもどうしていいかわからない。悩んだ挙げ句、
会話すらできないままに別れてしまうことも少なくなかった。誰よりも父親からの愛情に飢えていながら、
どうしてもそれを満たすための行動に出ることができなかったわけである。少し前には特製の
肉じゃがを作り、それを食べてもらうことで気持ちを伝えようとしたのだが、結局それも失敗に
終わっている。
そしてその時、落ち込む沢近を慰め元気づけてくれたのが、他ならぬ播磨だった。不器用な優しさに、
最近の不良には似つかわしくない一本気な性格。突然路上で告白を受けたことも、沢近の心を
揺らした。この人なら大丈夫かもしれない、自分を甘えさせてくれるかもしれない。微かではあったが、
沢近の気持ちは確実に播磨へと傾いた。
- 117 名前:and I close to you :04/05/14 17:54 ID:UP3rarDA
- しかし、その思いは脆くも崩れる。その後も播磨の気持ちが沢近に向くことはなく、様々な
事件を通して二人の関係は悪化していった。誤解が誤解を呼び、憎しみが憎しみを呼ぶ。
極めつけは先程の言い争いである。播磨からはきっぱりと拒絶され、八雲には言い返すことすら
できなかった。当てもなく走る沢近の瞳から、大粒の涙が流れ落ちる。その時、
「―――!」
突然、沢近の前に人影が現れた。慌てて避けようとしたが、間に合わない。結局沢近は、その人影と
まともにぶつかってしまった。
「ちょっと! どこ見てるの―――!?」
言いかけて、沢近が言葉を飲み込む。沢近がぶつかった相手は、よりによってこの街でも名前の
知られた不良だった。仲間らしき男たちが、ニヤニヤと沢近を見つめる。
「あーあ、やっちゃった。キミ、ちゃんと前を見て歩かないとね?」
「ま、俺らは優しい不良だから別にいいんだけどさ」
「お、よく見たらすげーかわいいじゃん。俺ら今すげーヒマしてんだけど、一緒にどっか行かない?」
不良の一人が、沢近の腕を掴んだ。必死に抵抗を試みるが、女の力では到底振り解けそうにない。
周りにいた通行人の中にも、助けに来てくれる人間は一人としていなかった。沢近の瞳から、
もう一度涙が溢れる。
―――もう、イヤ。
どうして私ばっかりこんな目に遭うの?
一人にしないで。
誰か助けて。
誰か――――――
- 118 名前:and I close to you :04/05/14 17:56 ID:UP3rarDA
- 「おい、そこのバカども」
「!」
突然、一人の男が不良たちの前へと歩み出た。驚きの表情で、沢近が男の顔を見つめる。
何度沢近が目をこすってみても、その男は間違いなく播磨だった。
「取り込み中のとこワリーけどよ、そいつを離してやってくれねーか? とんでもねー女だけど、
一応俺の舎弟なんでな」
軽い口調で、播磨が不良たちに声をかける。その顔を見て、不良たちの表情が一変した。
「は、播磨さん! そ、そうとは知らず失礼しました!」
「お、おい、何やってんだ、逃げるぞ!」
蜘蛛の子を散らすように、そそくさと不良たちが逃げてゆく。残された播磨と沢近は、どちらともなく
顔を見合わせた。
「……何で助けに来たのよ」
「あん? ま、舎弟を守るのは不良の務めだからな」
「そうじゃなくて、何であの娘を放ってこっちに来たのかってことよ!」
「……『先輩の所へ行ってあげてください』だとよ。まったく、できた娘さんだぜ」
「―――!」
頭を掻きながら、播磨が答える。驚きのあまり、沢近はそのまま黙り込んでしまった。二人の間に、
しばしの静寂が訪れる。
- 119 名前:and I close to you :04/05/14 17:57 ID:UP3rarDA
- 「……じゃあ、さっさと戻ってあげなさいよ。あの娘、心配してると思うけど」
長い沈黙の後、沢近が静かに口を開いた。それに対し、播磨が訝しげな表情で聞き返す。
「何でだ? 荷物は持って来てるし、金もちゃんと払ってきたが」
「だって、その……あなた、あの娘と付き合ってるんでしょ?」
「はぁ!? ちょっと待て、どこをどうしたらそんな話になる!?」
「……違うの!?」
「当たり前だ! 誰だそんなこと言ったヤツは!」
「じゃ、何であの娘とデートなんかしてたのよ!? 学校中の噂になってるじゃない!」
「デ、デート!? そ、それはだな……」
沢近に問いつめられて、播磨は答えに窮してしまった。不良の播磨としては、まさか自分が漫画を
描いていて、そのことで八雲に相談に乗ってもらっていたなどとは言えない。しばらく考えた後に、
播磨は重々しい口調で説明を始めた。
「……猫だ」
「……はぁ?」
「いや、妹さんは黒猫を一匹飼っててな。そいつがまた可愛いんだ。『将を射んとすればまず馬を射よ』
って昔から言うだろ?」
「……」
「……」
気まずい空気が、辺りの空間を支配する。考えてみれば、不良のくせに猫好きというのも妙な話だろう。
そもそもとして、仮にも高校生である沢近が、こんな稚拙な言い訳を信じるはずはない。
もっと上手い誤魔化し方はなかったかと、播磨は激しく後悔した。
- 120 名前:and I close to you :04/05/14 17:59 ID:UP3rarDA
- しかし、
「……ぷっ」
「……?」
「アハハハハハハハハ!」
しばらくして、沢近は腹を抱えて笑い出した。その笑いっぷりに、さすがの播磨も顔を赤くする。
「なっ、何がおかしい!」
「だ、だって、そんな顔して猫だなんて、おかしくって」
「う、うるせぇ! だからって、そこまで笑うことはねーだろ!」
播磨が何を言っても、沢近の笑いは止まらなかった。心の中のわだかまりが、笑いと共にどこかへと
吹き飛んでゆく。ひとしきり笑い終えると、沢近はようやく播磨の方に視線を向けた。
「ま、そういうことなら別にいいわ。今日は悪かったわね」
「ん? あ、ああ。ま、こっちも言い過ぎたからな」
先程までの諍いが嘘のように、お互いが素直な謝罪の言葉を口にする。沢近の表情には、もう
播磨への憎しみはなかった。播磨の表情からも、安堵の色が見て取れる。その時、
「あら? 何かしら、これ?」
沢近は、播磨の足下に小さな紙が落ちているのを発見した。手を伸ばしてそれを拾い上げ、表側を
確認する。
「動物園の……チケット?」
それを聞いて、播磨は慌てて自分のポケットをまさぐった。その様子からすると、どうやら
チケットは播磨のものだったらしい。焦った様子で、播磨が沢近へと迫る。
「か、返せ!」
「イヤ。これは私が拾ったものよ」
「バ、バカ野郎! それは俺がバイトして稼いだ金で買った大切な……」
播磨の表情は、かつてないほどにせっぱつまったものだった。万年金欠状態の播磨にとっては、
動物園のチケット一枚といえども痛い出費である。少し考えた後、沢近は思いついたように
話を切り出した。
- 121 名前:and I close to you :04/05/14 18:00 ID:UP3rarDA
- 「……そうね、だったら一つ条件を出すわ。それを呑んでくれたら返してあげてもいいけど」
「わ、わかった! 何でもいいから早くしろ!」
その申し出を、二つ返事で播磨が承諾する。沢近は軽く呼吸を整えると、そのままゆっくり
言葉を続けた。
「……一回しか言わないから、よーく聞きなさいね。今週の土曜日午前11時、この動物園の
前に来なさい。そうしたらこのチケットは返してあげるわ。ただし、あなたはもう一枚私の分の
チケットを用意してくること。それから、絶対に時間には遅れないこと。わかったかしら?」
それを聞いて、播磨の目が点になる。頭の中でもう一度沢近の言葉を整理してみたが、どうも
よく状況が飲み込めない。幾分少なくなった髪を掻きむしりながら、播磨は呆れたように沢近のことを
見つめた。
「……はぁ? 何言ってんだお前」
「う、うるさいわね! あなたみたいな不良がこの私とデートできるのよ!? むしろ光栄に
思いなさい!」
「あぁ!? んなもんこっちから願い下げだっつーの! 舎弟の分際で何様のつもりだテメェ!」
「お黙りなさい! もしすっぽかしたりなんかしたら、その頭のことを学校中に言いふらしてやる
からね! 覚えときなさい!」
「なっ!? ちょ、おい、待て! それだけは勘弁してくれ! 頼む!」
顔を真っ赤にして歩く沢近の後ろを、慌てて播磨が追いかけてゆく。子供のようにまっすぐな男と、
素直になれない意地っ張りな女。こういった二人も、案外「お似合い」と言えるのかもしれない。
- 122 名前:and I close to you :04/05/14 18:01 ID:UP3rarDA
- というわけで、おにぎり風味の旗を一本。
今回の本編はホント旗でしたね。先生ズ大好きの自分としては悲しいですが。
絃子先生マダー?(AA略)
それにしても、ホント長くなってしまいました。申し訳ありません。
当初予定していた描写も結構削ったのですが、うーん……。
- 123 名前:Classical名無しさん :04/05/14 18:32 ID:ndwaBcT.
- 最高です(*´Д`)
旗もおにぎりも大好きですよ、はい。もちろんお姉さんズも。
心理描写巧いですね。萌えました。
グッジョブでした、
- 124 名前:Classical名無しさん :04/05/14 20:28 ID:qWTM3Kjg
- これはまたいいツンデレな旗ですね
削られた部分も読んでみたくなります
- 125 名前:遅いけど :04/05/14 22:31 ID:RWKgMOsM
- >>96
涙ぐんでしまいました。SSや同人作品でこんな風になったのは、初めてです。
良い作品を、ありがとう。
- 126 名前: