元のスレッド
スクールランブルIF09【脳内補完】
- 1 名前:浮舟 :04/06/13 12:34 ID:1HPeLaRY
- 週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週9ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫
SS保管庫
http://www13.ocn.ne.jp/~reason/
【過去スレ】
スクールランブルIf08【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1084117367/
スクールランブルIf07【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1082299496/
スクールランブルIf06【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1078844925/
スクールランブルIf05【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1076661969/
スクールランブルIf04【脳内補完】(スレスト)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1076127601/
- 2 名前:浮舟 :04/06/13 12:35 ID:1HPeLaRY
- 関連スレ(21歳未満立ち入り禁止)
【スクラン】スクランスレ@エロパロ板3【限定!】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082689480/l50
【荒らし行為について】
“完全放置”でよろしくお願いします
■ 削除ガイドライン
http://www.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide
- 3 名前:浮舟 :04/06/13 12:37 ID:1HPeLaRY
- ネタばれSSも当然不可です。
テンプレはここまでです。
- 4 名前: :04/06/13 13:04 ID:5Sa8V8Nk
- 次スレはこっちでいいのかな?
>>1
乙
- 5 名前:やまぶき色 ◆LlOW5GoY :04/06/13 13:20 ID:1.kX531A
- | ∧
| ゚w゚) サワチカ
- 6 名前:Classical名無しさん :04/06/13 13:30 ID:6gWpwnUI
- スレたて乙です。
- 7 名前:Classical名無しさん :04/06/13 14:44 ID:N7H8Cg6o
- >>1
乙です!
- 8 名前:Classical名無しさん :04/06/13 16:20 ID:cUrJJ65Q
- 兄弟リンク
『工具楽屋』こわしや我聞ブレイク2弾目!
http://comic4.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1081316205/
こわしや我聞で801
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/801/1079198635/
関連リンク
「こわしや我聞」社長&家長 工具楽我聞だぜ!
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi/TheSun/1084550869/
【スクールランブル】キャラハン雑談広場【こわしや我聞】
http://etc.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1080240220/
尚、これは荒らしとは関係ありません。スクラン住人とこわしや住人の間で
公認済みです。
ひょっとしたら、今後、このIfスレに我聞×沢近のSSが再投下される
可能性がないわけでもありません。
- 9 名前:Classical名無しさん :04/06/13 16:36 ID:UP3rarDA
- >>1
乙です。
それにしても、もう9スレ目ですか。
月日の流れるのは早いですね……。
そろそろID変わってるかな?
- 10 名前:Classical名無しさん :04/06/13 18:00 ID:0XNUd2Yw
- >>1
乙カレリン。
>>9
ところがどっこい変わっていない様子。
さぁスレッド数一桁の最後のスレ。
今回はどんな作品が投下されるやら、今から楽しみだ。
- 11 名前:Classical名無しさん :04/06/13 20:43 ID:gMPH46vY
- 初書きSS投下します。
お題は『サラ麻生』で。
最初なのでベタといえばベタなネタで。
それでは行ってみます。
- 12 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:44 ID:gMPH46vY
-
「あ、あのっ……! 私、麻生先輩のことが好きです! もし迷惑でなければ……
つ、付き合ってください!」
恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤にしながら、少女は彼女の意中の人へと秘めた
想いを打ち明けた。
木々の緑を揺らして、突然の気まぐれな風が吹く。
――何気ない日常の中の、ある日の小さな出来事。
(……来た)
予期していた言葉を聞きながら麻生広義は心情を表に出さないように落ち着けと
自分に言い聞かせた。
神様なんてこれっぽっちも信じてはいないが、今は少しだけいるかもしれないと
思い始めたりもする。……それも悪い方の意味で、だ。
そう、彼にとってこれは――試練なのだ。
ひと気のない放課後の体育館裏。館内からは運動部の声が遠く聞こえてくる。
放課後とはいっても夏の太陽はまだ高い。建物を取り巻く木立は日差しを受けて
涼しげな影を落とすと同時に人の目をも遮ってくれる。
普段から訪れる人間の限られる場所であるが、少し遅い時間であることが周囲を
いっそう特別な空間へと変えていた。
- 13 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:45 ID:gMPH46vY
-
麻生は意を決して大きく息を吐くと目の前の少女に視線を向ける。
「……せっかくだが俺はあんたのことをよく知らないし、はっきり言って特別な
感情は全く持っていない。第一、相手の都合も考えずにいきなり自分の気持ちを
押しつけること自体理解できねえ。付き合うとか以前の問題だ。悪いな」
――少女の期待を裏切る冷たい声。
ここに来る前から用件を察していた麻生は顔見知りの一年生に対して淡々と用意
していた拒絶の言葉を返した。
努めて表情を殺してはいるが、その瞳にかすかに浮かんだ困惑の色が残酷なまでに
少女の想いを突き放す。
「そう……ですか。こんなところに呼び出して、ごめんなさ……ううっ!」
よほど傷ついたのだろう。
少女は最後まで言葉を続けることができず、途中で麻生にくるりと背を向け
口元を押さえて走り去って行った。
「……」
その背中を見送りながら麻生は小さくため息をつく。
後に残ったのは言いようのない後ろめたさだけだ。
「また断っちゃったんですか?」
不意に麻生の背後から呆れたような声が聞こえた。
振り返らなくてもその声の主が誰か、彼にはすぐにわかる。
「立ち聞きかよ。趣味ワリィな」
麻生は苦々しい顔でそこにいる人物に視線を巡らせた。
- 14 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:46 ID:gMPH46vY
-
「偶然ですよ? 私、掃除当番ですから」
ブロンドの髪を頭の後ろで清楚に編み上げた、穏やかな顔立ちの少女――麻生の
バイト仲間でもある一年生のサラ・アディエマスは心外だという顔で答えた。
なるほど、確かに体育館の反対側にはゴミの集積場があり、サラは白い大きな
ポリ袋を重そうにずりずりと引きずっている。
こちら側を通る生徒は少ないとはいえ、特別おかしなことではない。
「はいはい。そりゃ悪かったな。全部俺が悪い」
サラの言葉に納得はしたものの、気まずい場面を見られたという意識が先に立って
麻生は全く心のこもっていない謝罪の言葉を吐き捨てた。
言葉と正反対の内心を少しも隠そうとしていないが、麻生の口の悪さはいつもの
ことなのでサラは気にする様子もない。
むしろここで問題なのは今の話の内容だ。
「もったいないなぁ。可愛い娘だったじゃないですか。彼女、泣いてましたよ?」
わずかに眉を寄せて言うサラの言葉には明らかに麻生を責める響きがある。
「……俺にどうしろって言うんだ? まともに口をきいたこともない相手だぞ。
向こうだって俺の何を知ってるんだか教えてほしいくらいだ」
彼女を泣かせたことに対してサラが怒っているのはわかったが、それでも全く
悪びれずに麻生は平然と答えた。
- 15 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:47 ID:gMPH46vY
-
サラの非難の視線を無視して麻生は体育館脇のコンクリート階段の一番上に腰を
下ろすと当たり前のように煙草を一本取り出して口にくわえる。
彼はいわゆる不良高校生ではなかったが、人並みに煙草を嗜むくらいの嗜好は
持ち合わせていた。
「言い逃れする気ですか?」
麻生がおもむろにライターを取り出すのを見て、サラは慣れた様子でまだ火の
ついていない煙草を彼からひょいっと没収しつつ、静かな口調で尋ねる。
「……聞こえねえな」
麻生はサラの手にある煙草をあっさりとあきらめ、残りの煙草のカートンと安物の
ジッポをポケットに突っ込みながら面倒くさそうに答えた。
「はあ……もっと紳士的な対応ができる人だと信じてたのに」
「何とでも言え」
「知ってます? 恋愛のもつれによる傷害事件の発生率は日本が世界一なんですよ」
「平和なもんだ」
「あ! 先輩に女難の相が……」
「現在進行形でな」
「……。……私、泣いちゃいますよ?」
「勝手に泣け」
- 16 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:48 ID:gMPH46vY
-
「む〜!」
何を言ってもまともに取り合ってくれない麻生にサラは不満そうに頬を
ふくらませる。
「もう! そんなことばかり言ってるとそのうち誰も好きだって言ってくれなく
なっちゃいますよ!?」
「そいつは静かになって助かるな」
麻生はどこまでもそっけない態度でサラをあしらう。
その態度にサラは心底呆れたという顔で肩をすくめた。
「ヒドイですね。乙女心をモテアソブなんて『女の敵』ですか」
――グサッとえぐる一言。
そもそも自分に非のないことで何でここまで言われなきゃならない――次第に
理不尽なものを感じて彼の堪忍袋の緒も切れる。
「うるせえ! 黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって! 大体、そんな言葉
どこで覚えやがった!?」
「女の子にはヒミツが多いんです。あれ? 核心を突いちゃいましたか?」
しれっとした顔で尋ね返すサラ。
「とんだ言いがかりだ。……お前がどう思ってるか知らねえが、さっきの
一年だってたまたま絡まれてるところを助けてやっただけだ。そんなモンで
いちいち惚れたの何だの言われる方の身にもなってみろ。相手すんのも
バカらしい」
親切心でやった結果がこれかとうんざりしたように麻生は言った。
- 17 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:49 ID:gMPH46vY
-
「……バカらしくなんてないです」
サラはそっと目を閉じて静かに反論する。
「……それがただの思い込みでもか?」
いまさら引くに引けず、口をついて出るのは辛辣な言葉。
そんな麻生の言葉を遮るように、サラは彼の目の前にすっと人差し指を立てる。
「それでも――あの娘にとって先輩は特別で、伝えたかった気持ちはきっと本物
だから――だから精一杯の勇気を振り絞って、ここに来たんだと思いますよ?」
穏やかな、そしてちょっとだけ哀しそうな優しい表情でサラは諭すように
そう言った。
「……」
その顔は反則だろうと麻生は思う。そんな顔をされてしまっては、彼にはもう
どうすることもできない。
それに実際サラの方が正しいのだから、これ以上何も言えるはずがなかった。
わずかな沈黙――。
「悪いとは……思ってる」
まっすぐに見つめるサラの視線から逃れるように目を逸らして、麻生は小さく
ぽつりと呟いた。
女の子の方から告白することがどれほどの決心を要するかくらい彼にもわかる。
けれど――いや、だからこそ、その想いに応えられない以上、相手に期待を
持たせるようなことは言えなかった。
- 18 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:50 ID:gMPH46vY
-
それが不器用な麻生なりの優しさなのだと本当はサラにもちゃんとわかっていた。
誰かを傷つけて平気でいられるような人ではないのだから。
たった一言だけの短い彼の言葉――でもそれだけで充分。
「――少しは、楽になりました?」
不意に耳に流れ込んできた意外なサラの言葉に、麻生はハッとして顔を上げた。
その瞳に映ったのは、何も言わずに自分を見つめて微笑んでいるサラの笑顔。
「――!」
きっと今の自分は情けない顔をしているに違いない――そう思った麻生は、咄嗟に
もう一度彼女から視線を逸らす。
「……何のことだかわからねえよ」
わかってもらえたことが嬉しくて、けれど心のうちを見抜かれたことが恥ずかしく
思えて――麻生は微かに顔を赤くしながら、それを隠すように憮然として答えた。
それっきり、何も言おうとはしない。
口を開けば意地を張れなくなりそうで、弱い自分を見せてしまいそうで――何も
言うことができなかった。
- 19 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:51 ID:gMPH46vY
-
サワサワと木々の囁きだけが静寂の中に広がっていく――。
黙ってしまった麻生を見て、サラは少し困ったような優しい微笑を浮かべる。
「……先輩、好きな人いるんでしょう?」
何気ない口調で唐突にサラが尋ねた。
「はあっ!? いきなり何言ってやがる!」
思いもよらない不意討ちに麻生の声が裏返る。
サラの真意を測りかねて、麻生は彼女の表情をちらっと窺う。
これではにかんでいるようなら少しは可愛げもあると思うのだが、彼女はいつもと
変わらないにこやかな笑顔だ。
「なんとなく、です。先輩、今年に入ってから告白されても全部断ってるそうじゃ
ないですか。特別な人がいるくらい、察しはつきます」
興味津々といった顔で瞳を輝かせるサラ。
(誰に聞きやがったんだ、コイツ)
……と思ったが、彼女にそんなことを吹き込むのは謎の多い茶道部の部長くらい
だとすぐに思い当たったので口に出すのはやめにした。
事実、サラの言っていることは当たっていた。
しかし、認めたくはないが麻生の片想いだ。おまけに相手は全く気づいていないと
きている。
だが、その『本人』を目の前にして本当のことが言えるはずがないし、言える
性格の麻生でもない。
- 20 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:53 ID:gMPH46vY
-
「……んなもんいねぇよ」
麻生は不機嫌そうに答えると、立ち上がって何も言わずにサラの手から重いゴミ袋
を取りあげる。
「あん」
ちょっとびっくりした顔のサラを無視して、彼はそれを集積場のすでにうずたかく
積まれているゴミ袋の山に積み上げに向かった。
「ありがとうござい……マス」
そのぶっきらぼうな優しさにサラは苦笑しながら、ゆっくり彼の後をついて行って
拗ねたような背中に感謝の言葉を贈る。
無愛想でも口が悪くても、こんなふうに彼はいつだって優しい。
柔らかな眼差しでふわりと微笑む彼女の表情は後ろ姿の麻生には見えなかった。
やがて袋を放り投げて戻ってきた麻生は小さくため息をつくとジロリとサラを
にらんだ。
「……お前、そんなに俺を誰かとくっつけたいのか?」
「さあ、どうでしょうね? 例えば先輩に気になっている人がいて、その人のことを
これからもちゃんと考えてくれるなら、私は応援します。
でも、そうじゃなくて、いい加減な気持ちで女の子と付き合うなら、私は反対です」
サラはにっこり笑って、さらりと答えた。
「変な奴だな。……ま、お前にとっちゃどうでもいい話か」
内心の落胆をポーカーフェイスに隠して、麻生は肩をすくめた。
- 21 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:54 ID:gMPH46vY
-
「アラ、どうでもよければこんなこと言わないですよ?」
意外そうな顔をしてサラは麻生の言葉を訂正する。
「そりゃどうも。……俺はもう行くぞ」
麻生は投げやりにそう言うとサラを残してスタスタと歩き出す。
『……特別だから、ですよ』
サラは麻生の背中を見つめて、彼に聞こえないように小さく呟いた。
「何か言ったか?」
ふと足を止めて麻生が振り返った。
「別に」
サラはすました顔で斜め上に視線を向けてとぼける。
「……教えろ」
聞き流してもよかったが、その態度が気に障ってツカツカと戻ってくる麻生。
「嫌です」
ぷいっとそっぽを向くサラ。
「気になるだろうが! おとなしく言え!」
普段のクールさもどこへやら、もどかしそうに麻生は詰め寄る。
「先輩みたいに、意地悪で鈍感な人には教えてあげません」
つんとしてサラは麻生の横をすり抜け、彼を置いて歩き出す。
- 22 名前:Apple of the Eye :04/06/13 20:55 ID:gMPH46vY
-
「お、おい?」
怒ったのか?――そう思い、麻生は慌ててサラを呼び止める。
その声にサラはくるりと振り向くと、ぴっと人差し指を立てながら
いたずらっぽく笑ってこう言った。
「『 Let all that you do be done with love(何事も愛をもって行いなさい)』
ですよ。先輩♪」
まぶしいくらいのとびっきりの笑顔。
「はあ?」
その笑顔を見つめながら、麻生はますます混乱する。
「先輩! そろそろ行かないとお店に遅れちゃいますよ!」
体育館の角のところで手を振りながら、元気にサラが呼んでいる。
(ま、いいか……)
心の中で呟くと麻生は彼女の元へと歩き出した。
この瞬間に最高の笑顔を自分に向けてくれる――それだけで今は充分だ。
彼女の瞳の中に、いつも自分の姿が映っていることに麻生が気づくのは
もう少し先の話。それはきっと決して遠くはない未来の話――。
木々の間を吹き抜ける風が爽やかに二人を包み込む。
――何気ない日常の中の、そんな小さな出来事。
fin.
- 23 名前:Apple of the Eye書いた人 :04/06/13 20:56 ID:gMPH46vY
-
以上です。
いろいろと言い訳したい気もしますが、それは次のSSでリベンジです。
でも、ちょっと気になったことだけ。
・果たして矢神高校に焼却炉はあるのか?
→展開の都合で集積式にしました。イマドキの学校だし。
・そもそもこの二人でいいのか?
→この二人、好きなんですけど♭13を読んでないんでイマイチ自信がありません。
必然的に麻生の性格も掴みきれてないわけで……偽者っぽいかな?
……とはいえ、いまさら後には引けないので2本ほどネタが待機中です。
5巻と本編読んでも書く気力があれば……ですが。
まだまだ練習中ですが、読んでいただいてありがとうございました♪
- 24 名前:Classical名無しさん :04/06/13 21:30 ID:V3kQJTq6
- 本当に初めて書いたSSなんでしょうか…上手すぎです
ちゃんとSSの手順を踏んでいるし、何より読みやすい
内容も素晴らしかったです
二人のやりとりや、
ラストの、サラが麻生に分からないよう英語で言うシーンも最高でした
次回作期待してます
- 25 名前:Classical名無しさん :04/06/13 21:55 ID:XkaztUX6
- なんか2人の雰囲気がイイネー!!
読んでて違和感ないし、何よりサラの描写がカワイイ!
それとなぜか麻生にも萌え(*゚∀゚)
- 26 名前:Classical名無しさん :04/06/14 13:36 ID:UCe9uo0Q
- 「…ただいま」
「あぁ、おかえり拳児君」
「……」
「体育祭で疲れただろう。今夜は私が用意しておいたよ」
「あ、あぁ…」
「…どうした?大活躍だったのにいやに落ち込んでるじゃないか」
「……」(無言で帽子をとる)
「ああ、それか…道理で最近家の中でも帽子をかぶってると思ったよ」
「…ちっ」
「まぁ落ち込むのも無理はないか…で、その頭は沢近君と何か関係があるのかね?」
「なっ!何でそれを」
「やはりそうか…いや、騎馬戦の時の沢近君の落ち方がおかしかったからな。
沢近君がキミの頭のソレを隠すために落馬して足を痛めリレーで転倒したと考えれば
キミが帽子を飛ばしてまで力走したことも含めて全てつじつまが合うなと思ったのだよ」
「なるほどな…全くよく見てやがるぜ」
「それに沢近君とキミは犬猿の仲らしいと聞いてるからな。彼女自身がその頭に直接関わっていなければ
わざわざキミのその頭を隠すために落馬したりはしないだろう」
「んなことまで知ってんのか?…あぁそうか、確か天満ちゃんやお嬢なんかと仲がいいあの女」
「高野君だ」
「そうソイツだ…あの女そういや確か茶道部だったな」
「キミがクラスでうまくやれてるかどうかが心配なのだよ…」
- 27 名前:Classical名無しさん :04/06/14 13:37 ID:UCe9uo0Q
- 「…言ってろ、どうせ面白がってるだけのクセして」
「塚本君とどうなのかも気になるしな」
「なっ、う、うるせぇ」
「…まぁその頭では大変だろうが頑張りたまえ拳児君」
「畜生イトコてめぇ言いたい放題言いやがって…つーか天満ちゃんは
現場に居合わせてたんだから元々この頭のことは知ってたはずだぜ」
「そうなのか…でそもそもその『現場』とやらで一体何があってその頭になったのかね」
「どうもこうもねぇよ。あのお嬢がオレの髭を切りやがって、天満ちゃん達に言われて謝りに来たはずが
何をどう虫の居所悪くしたか知らねぇが急に癇癪起こして頭まで剃っていきやがったんだよ」
「…一体何を言ったんだ?」
「いや、確かに最初はあのお嬢が珍しく下手に出てやがるから日頃のウサ晴らそうと調子に乗って
舎弟になれだろハゲヅラかぶせたりだのして一発貰ったんだが、その後は普通の話してたはずなんだよな」
「ほぅ」
「確かそもそもなんでヒゲ伸ばしてるんだとか全部剃っちまったほうがいいとか何とか…そうそう、確かそこで
天満ちゃんも剃ったほうがいいって言うからソッコーで自分で全部剃ったら突然あのお嬢がキレてジョリっと」
「…なるほど、拳児君も大変だな」
「わかってくれるかイトコ…全く本当に災難だったぜ」
「いや、これからがだよ」
「ん?…あぁ、この頭な。畜生、しばらくはガッコーで物笑いの種か」
「いやそれもだが…」
「???」
「…まぁいい、とにかく頑張りたまえ」
「あ、あぁ…」
fin.
- 28 名前:Classical名無しさん :04/06/14 16:19 ID:Z1t788nA
- GJ!
相変わらず雰囲気出てますねー
- 29 名前:Apple of the Eye書いた人 :04/06/15 00:44 ID:gMPH46vY
- >>24様>>25様
遅くなりましたが、感想ありがとうございました。
誉めてもらえるとは思わなかったのですごく嬉しかったです。
次できたらまた読んでやって下さい♪
- 30 名前:Classical名無しさん :04/06/15 10:55 ID:z9UDQokM
- >前スレ706
熱いSS楽しませてもらいました。
本編以上にライバルの2-Dのキャラが魅力的に動いていたと思います。
ハリーと天王寺との戦いが燃えました。
GJ
>Apple of the eye
麻生かっこいいですね・・・
告白を断る場面が雰囲気が出てて、とっても良かったです。
その反面、サラのキャラがちょっと掴みづらいキャラに仕上がっちゃってますね・・・
そのせいで掛け合いがちょっと読みづらいです。
- 31 名前:Classical名無しさん :04/06/15 16:20 ID:xA19qcsU
- >>29
♪←とかかなり腐女子っぽいので止めた方が良いかも…
- 32 名前:Out of festival :04/06/16 04:57 ID:qWTM3Kjg
-
「体育祭も、もう大詰めですね」
「ですね」
保健室で、見目麗しい女教師二人が優雅に紅茶を飲んでいる。
現在校内人気女教師のブッチギリ1・2位の姉ヶ崎妙と刑部絃子である。
盛り上がるグラウンドとは距離的にも立場的にも離れたこの場所は、異常なまでに静かさを漂わせていた。
「リレー、どっちが勝つと思います? C組とD組」
「いきなりですね」
子供のように、おかしそうに質問をする妙。
ソレを見て、絃子は役得だな、と思う。
同姓の自分さえも、可愛らしいと思うのだから。
「で、どっちだと思います?」
「ま、個々のタイム、リレーのタイム、見ればどちらもD組の方が速いですね」
「それじゃあ、刑部先生はD組が勝つと思いですか?」
しばし、間――
「これは知り合いに聞いた言葉ですがね、陸上というのは『速いものが勝つ』ではないそうです」
「はぁ……」
「『勝ったほうが速い』だそうですよ」
姉ヶ崎が、ポカンとした顔になる。
それを見て、絃子が少し笑った。
「なんだか答えになってませんね」
「バレましたか」
二人は軽く笑いあい、再び、しばしの間――
- 33 名前:cat meets girl ♭ :04/06/16 04:58 ID:qWTM3Kjg
-
「そういえば、ハリオ……ああ、ええと播磨くんがC組のアンカーだそうですね」
「そうらしいですね、まったく似合うと思いませんが」
「まあ、刑部先生はなかなか厳しいですね……播磨君にアンカーは向いていないと考えてるんですか?」
絃子はしばらく虚空を見つめると、上品に、まさしくどこかの女帝のように口の端を上げた。
一瞬、妙でさえもゾクリとする妖艶ともいえる笑みだ。
そして、やや呆然としていた妙に言葉を投げかけてきた。
「アンカーに必要なものをご存知ですか?」
「あ、え〜と……足が一番速いコト……ですか?」
「まあ、それもありますが……」
しとやかに絃子はカップに手を伸ばす。
「アイツなら、大丈夫だと思わせてくれる安心感、アイツならどうにかしてくれるという期待感……」
絃子は紅茶をすすりながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そして、なによりアンカーという重圧を撥ね退ける精神的タフネス」
体育祭の喧騒から少し外れたこの保健室では、絃子の声は驚くほど響き渡る。
「足の速さも大事ですか、こういう大舞台です、勝負強さも必要なファクターなんですよ」
にっこりと笑い、カチャリ、と上品にカップを置く。
妙も笑い返して、言葉も返す。
「要は、どれだけ肝が座っているか、根性があるか、ですか?」
「まあ、ざっくばらんに言ってしまえばね」
- 34 名前:Out of festival :04/06/16 05:01 ID:qWTM3Kjg
-
見もふたもない姉ヶ崎の言いように、絃子も笑いがこぼれる。
二人の笑いが収まると、絃子が先に言葉を出した。
「そしてね、あの馬鹿は、私が言うのもなんですが」
絃子は一度言葉を切ると、思い出したように、今までにない笑顔を見せる。
そして、言葉を続けた。
「恐ろしく、全力で、馬鹿みたいに馬鹿なんですよ」
――遠くで、この体育祭中もっとも大きな歓声があがった。
- 35 名前:Out of festival :04/06/16 05:03 ID:qWTM3Kjg
-
「まあ、馬鹿だなんて……」
「……まあ、馬鹿ですから」
二人は何度目か、クスクスと笑いあった。それぞれが色々な思惑を込めて。
そのとき、再びひときわ大きな歓声が巻き起こった。
それは、宴の決着と終わりを示す大歓声であった。
「……どうやら、リレーも優勝も決まったみたいですね」
「そうですね」
絃子は興味がなさそうに、視線を紅茶へと送っている。
「先生は結果に興味がないんですか?」
「あればこんな所でお茶なんか飲んでませんよ」
冗談をたっぷり込めて、自嘲気味に絃子が笑う。
それとは正反対に、なにかを見透かしたかのような視線を投げかける妙。
「……あるいは、刑部先生は最初から結果は分かってた、とか?」
- 36 名前:Out of festival :04/06/16 05:07 ID:qWTM3Kjg
-
絃子は、クスリ、と小さく笑うと、カップを皿の上に置いた。
そして、妙の視線も、言葉も、言葉の外の思惑も、綺麗に受け流す。
「私は未来なんて分かりませんし、知りませんよ。……それではそろそろ失礼させていただきます」
やれやれ、と少し妙は肩をすくめる。
ふと見れば、絃子は扉の前で一度立ち止まったいた。
妙が怪訝な顔で見ていると、もう一度、絃子は唇の端を少しだけ上げた。
そして、一言つぶやいた。
「私が誰よりも知ってるのは、あの馬鹿のことだけ………なんてネ」
今度は、いたずら小僧のような笑み。
もう一度、失礼、という言葉だけを置いて、絃子は保健室を後にした。
置いてけぼりのように、妙は椅子に座ったままにして。
予想通り、ううん、予想以上の強敵だなぁ――
一人になった保健室の椅子に、背中を力いっぱい預けて伸びをしながら、姉ヶ崎はそう思った。
しばしの沈黙と思案の後、むん! 自分にと気合を入れると、元気よく保健室を後にする。
役目の終わった二つのカップが、所在なさげにテーブルの上に残された。
−了−
- 37 名前:Out of festivalの中の犬 :04/06/16 05:08 ID:qWTM3Kjg
- スレたて乙です、そして、一個題名を間違えてる自分
_| ̄|○<ソンナノバッカダヨ…
- 38 名前:Classical名無しさん :04/06/16 09:48 ID:FtBg37xk
- おまいら……そろいもそろって初っぱなから飛ばしてきやがったな。
>>29
>>24にそこはかとなく同意。
ホントにこのスレは初心者のLvが高い。
麻生の喫煙というオリジナル設定がちょっと引っかかりましたが、流れるように進むストーリーが
読みやすさと読了感を底上げしていますね。
確かに麻生とサラに少々違和感を感じましたがそれを補ってあまりある文章力と構成力。
次回作以降も楽しみな職人の誕生となるベネな処女作でした。
>>26
長い。
いつもの会話SSSの人なのかどうか分からないけど説明台詞が多すぎる気がします。
そこら辺を大胆カットすればより読みやすくなり、話の密度も上がるかと。
あと相変わらず晶の名前を覚えていない播磨にはワラタ。
気のせいか会話SSSは播磨と絃子さんというシチュエーションが多いような……。
>>37
姉ヶ崎先生が絃子さんと播磨の関係を知っていることが前提に話が進んでいますね。
そこの点に対する説明が欲しかったです。
あとはもう何というか、ジャブの応酬が続く(時にイイやつを一発)大人の会話が展開されていてGood。
楽しませてもらいました。
- 39 名前:Classical名無しさん :04/06/16 10:21 ID:fab4xAPk
- >>37
最後の絃子さんのセリフが(*´Д`)でした。
ただ、二人の話し方がちょっと堅すぎるような気がしました。
描写は相変わらず巧いですね。GJ!
- 40 名前:Classical名無しさん :04/06/16 17:51 ID:H39HDLXI
- >>37
GJ!
とても読みやすかったです。
>予想通り、ううん、予想以上の強敵だなぁ――
良いですね、実に良い。萌える
お姉さんは二人が従姉弟なのを知ってるのかな?
- 41 名前:Classical名無しさん :04/06/16 21:16 ID:pEz4UIs.
- 「なんてネ」のところで萌え狂った
- 42 名前:Classical名無しさん :04/06/17 18:28 ID:.KKhM2kw
- 限定版の小冊子いいなあ、
SS職人のみなさま、ぜひSSを!
- 43 名前:Classical名無しさん :04/06/17 20:30 ID:vXjrPlwY
- 書きたいのは山々だがまだ手に入れていない orz
- 44 名前:Classical名無しさん :04/06/17 20:39 ID:UP3rarDA
- 一応手に入れたんですが、えらい豪華でしたね。
お姉さんズの過去が衝撃的でした。
でも、一番驚いたのは本編口絵の笹倉先生のカラーだったり。
縦笛書いてたんですが、このままだと絃子先生たちの過去話に流されそうです。
- 45 名前:Classical名無しさん :04/06/17 20:53 ID:K2Kh6IBg
- お姉さんズは最高でしたね。
まあ自分は前から超姉萌え派でしたけど。
- 46 名前:Classical名無しさん :04/06/17 21:11 ID:k6eiuN.U
- 旗派は本編が仁丹が神掛り杉だから、しばらくお腹いっぱいだなー
限定版読んで妄想は膨らむが、残念ながら自分には文才はまるでない orz
SS職人様の妄想に期待してます
- 47 名前:Classical名無しさん :04/06/17 21:35 ID:9u9mt3js
- 限定版が良かったのは同意ですが雑談はそろそろ止めにしましょう。
>>46
そういう発言は曲解すると旗SSはあんまり書かないでくれ、
と言ってると取られかねないので注意。
まぁそんな意図はないと思うけど一応ね。
- 48 名前:cat meets girl :04/06/18 11:00 ID:qWTM3Kjg
-
気が付けば 逃げに逃げたり 幾星霜
ここまできたら 帰れませんがな
(作者注・上記の短歌は、本編に一切合切拍手喝采、関係ありません)
「う〜〜ん、困ったな〜…」
校舎の横の、小さな並木がある小道
道行く少女が全く悩ましげではないが、悩みながら歩いている。
聞こえる声から察するに、その少女は、多分、恐らく、確か、一応、きっと、本編の主人公の塚本天満である。
その彼女が悩み、困っていることとは、主人公なのに最近出番が少ないとか
ヒロインなのにSSの主役にあまりなっていないとか
そんな些細なことではない(些細か?)。
最近、妹である塚本八雲に元気がないのだ。
理由は分かっている、数日前に失踪した飼い猫、伊織のことである。
姉の身から言うのもなんだが、妹の八雲は
空よりも広く、海よりも深く、ウルトラマンよりも強い、そんな優しい心を持った女の子だ。
伊織が心配でたまらないのだろう、ここ数日の間、伊織を探し回っている。
……数ヶ月前からじゃないか? という気もするが、それはきっと気のせいだ。
気のせいと言ったら気のせいだ(断言)。
- 49 名前:cat meets girl :04/06/18 10:58 ID:qWTM3Kjg
-
ともかく、天満の身としては、これ以上八雲を悲しませるわけにはいかない。
しからばお姉ちゃんのやることは一つ、伊織をゲットだぜ!! である。
だがしかし、そんなに簡単に伊織が見つかるわけがない。
「は〜…すぐそこに伊織がいればいいのになー」
ガサッ テコテコ テコテコ
「そうそう、そうやって藪の中から伊織がテコテコ出てきてくれれば――」
テコテコ テコテコ テコテコ にゃ〜ん
「いいいいい伊織ぃぃ!?」
天満が歩けば猫に当たる、なんとも幸運なことに、目の前には目標たる飼い猫が。
ご都合主義と言う無かれ、これもまた話の都合である、ご容赦願いたい。
ゲフン、ともかく天満は捕獲捕獲とすぐさま飛びつこうと考えた。
が、それではあの俊敏で賢しげな猫を捕まえられるワケがない。
いやいや落ち着け私、と自分を冷静にさせる天満。
これは願ってもないチャンス、逆に言えばこれを逃すはけにはいかない。
- 50 名前:cat meets girl :04/06/18 11:00 ID:qWTM3Kjg
-
塚本天満の伊織捕獲作戦がスタートした。
その1・エサで釣る
「よ〜し! エサエサ…伊織はししゃもが好きだから…………あ」
ここでちょっとした疑問なのだが、通常学校にししゃもなんて持っていくか?
たとえ塚本天満でもそれはない、持っていそうなのは烏丸大路ぐらいだろう。
よって失敗以前の問題。
その2・ねこじゃらしで釣る
「ほ〜ら、伊織お出で〜」
伊織、全く興味なしで失敗
その3・ネズミを捕まえて、それで釣る
「………………」
しばらく考えなくても分かることだが、普通に無理。よって失敗
- 51 名前:cat meets girl :04/06/18 11:01 ID:qWTM3Kjg
-
その4・正攻法
「…伊織」
そっと伊織に呼びかけ、じっと見つめる天満、なに? といった表情で見つめ返す伊織。
「…帰っておいでよ、八雲も、もちろん私もすっごく心配してるよ?」
優しい言葉と少し憂いを帯びた表情で伊織を見つめる。
どこぞのグラサンやら県名少年なら、清水の舞台からカッ飛んで逝きそうな表情&セリフ。
駄菓子菓子、悲しいけど、この子、猫なのよね。
無視ぶっちぎりでステステと歩き去る黒猫。
残されたるは、無駄にトーンやらキラキラやらを背負った少女一人。
完膚なまでに作戦に失敗してしまった塚本天満であった。
- 52 名前:cat meets girl :04/06/18 11:02 ID:qWTM3Kjg
-
ルックスもスタイルも普通(たぶん)
クラスでも目立たない方―――
運動、ダメ 勉強、ダメ
そんな自分だが、誇れることはある。
それは、八雲のお姉ちゃんであること。
それだけは自信を持って言える、私は八雲お姉ちゃんだ。
今の自分を省みる。
このままで、お姉ちゃんたる資格はあろうか?
いや、断じてないッ!
そうっ! お姉ちゃんがお姉ちゃんたる所以は、お姉ちゃんたればこそッ!
天満の両目がキラリとひかる!
突き出す両手は力と愛!
ピコンと立った、アホ毛がぷりちー!
溢れるパワーは八雲のためにッ!
かつてないほどのぱわぁが塚本天満に漲りだした!
それはもうメータ振り切りぶっちぎり、スカウターだって吹っ飛ばす!
天下無敵、銀河ギリギリブッチギリの最強パワァーは無限大!
全ては妹のために、塚本天満は駆け出した――
- 53 名前:cat meets girl :04/06/18 11:03 ID:qWTM3Kjg
-
野性の本能か、はたまた動物の第六感か、ともかく伊織は後ろから迫るプレッシャーを感じた。
振り返ると、昼間なのに両目をキュピン☆ と光らせて、疾走、いや爆走して接近する
人間? と語尾に疑問符がつけたくなるソノの物体。
空は轟き地は裂ける、ズドドドドドドド……地響き立てて、ヤツが来た。
「おぉぉおお姉ちゃんパァァ〜ワアアぁぁぁ〜ッ!!!!」
その瞬間、伊織は一目散に逃げ出した。
本能が警告を告げる、ヤツは強い、ひたすら逃げるしかない、と。
しかし、普段からは考えられないスピードで迫る天満。
逃走のプロフェッショナル、百戦錬磨、不敵で無敵の伊織が振り切れない。
かくして始まった、天馬vs伊織の壮絶な追いかけっこ。
伊織の小回り&隠し通路が勝つか、それとも天馬の天地最強のお姉ちゃんパワーが勝つか
よほどの玄人でもまったく先が読めるわけがないだろコンチクショーなこの勝負。
舞台は矢神高校全域、制限時間はナシ。
伊織と天満の、生き残りはかけていないが、なかなかサバイバーのバトルになりそうだ。
- 54 名前:cat meets girl :04/06/18 11:03 ID:qWTM3Kjg
-
「マテマテマテマテェー!!」
「フニャー!」
まずは軽いお互いベーシックな追いかけっこをする二人。
ドタバタドタバタ無駄に手足を動かしながら、脅威の速さで迫る天満。
しかし、周囲の予想以上にこの猫は冷静だった。
敵はかなりのスピードとはいっても、所詮は人。
伊織はまず、人が入ってこれないような森のなかに飛び込んだ。
通常なら、人間は木々に邪魔されて動きは遅くなる。
……しかし、それは塚本天満には通用しなかった。
「てりゃぁぁぁぁッ!」
キュピン、シュピン、シュババッ!
野生の動きで木々を避け、通常時から数%も速度を落とさず迫る天満。
その慣性の法則を無視した動きは、まるでブースターを搭載しているかのようだった。
あまりに通常離れした動きに伊織の動きも凍りつく。
あわやすぐそこといった所で、なんとか窮地を脱する体たらくだ。
その後、獣道、抜け道、隠し通路、塀の上、屋根の上、教室内
火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中、あの子のスカートの中(キャー)
ありとあらゆる逃走経路を伊織を走り抜ける。
が、バーサーカーのよう色々とブッちぎっている塚本天満には通用しなかった。
時には気にせず、時には無視し、時には破壊し、時には踏み潰し
「マテマテマテマテ! まぁぁーてぇぇぇー!!!」
と、雄たけびをあげながら、ただひたすらに伊織目指して突っ込んでくる。
流石の伊織も汗のマークとスダレを顔に貼り付けて、ビビりつつ、あせりだした。
しかし、この壮絶な追いかけっこ、天満はそこまで無理・無茶・無謀をしている。
この人型二足歩行の暴走台風によって、当然被害者も出てくるワケで……。
- 55 名前:cat meets girl :04/06/18 11:04 ID:qWTM3Kjg
-
「ハァ……塚本とどうれば仲良くなれるのかな」
ため息をつく男、奈良健太郎。彼はご周知の通り、恋に悩めるこーこーせー
大多数の方が周知、かつどうでもいいと思っているが、本人はやはり考え悩む。
ため息吐きつつ、とぼとぼと道を歩いておった。
と、そんな悩める奈良少年に、聞き覚えのある美声が。
「まぁぁ〜〜て〜〜〜!!!」
彼女に関しては聖徳太子なみに聞き分け可能な奈良健太郎。
振り返れば、愛しい彼の人が大声張り上げ、なかなか必死な形相でこちらに向かっている。
「塚本……もしかして僕に言ってるのかな?」
必死な顔で追いかけて、待てと叫ぶ女の子。
奈良の頭の中で考え出される結論は一つしかない。
「つ、塚本!!」
がばりと前に立って待ち受ける。
- 56 名前:cat meets girl :04/06/18 11:04 ID:qWTM3Kjg
-
ここで基礎の物理学、というか常識の問題
闘牛以上にまわりが見えてない、驚くべきスピードとパワーで突進してくる
女の子の前にアホみたいに立ちはだかるとどうなるか?
答え、ばこーん。
「ぁあ……」
翼も生えていないのに飛ぶことに成功した奈良。
しかし、古代神話のイカロスよろしく地面に叩き落された。
「…………ぐふッ」
遠のく意識の中、奈良健太郎が考えていたのは
塚本って……か、固い……などということであった。
奈良健太郎、17歳の悲劇である。
- 57 名前:cat meets girl :04/06/18 11:08 ID:qWTM3Kjg
-
「俺はシチケン(七)」
「あ、俺も〜」
「フッフッフッフッフ、アソ、悪いな……オイチョ(八)だ」
「お前等…どういう引きだ」
2−C教室内。ここにいるのは麻生広義ほか、生徒数名。
彼らは今日も花札でオイチョカブをやっている。
いまどき花札でカブとはジジ臭いにもほどがあるが、まあそれは置いておこう。
たとえジジ臭くとも、かかっているのはお金のマネー。
無論、真剣勝負の真っ只中。
ちなみに現在の状況としては、親の麻生がかなり不利。
「やっとお前にぎゃふんと言わすことができそうだ」
「いまどきギャフンをないだろ」
「やかましい!」
軽口を叩きつつも、内心はちょっぴりあせっている麻生君。
ふと遠くのほうからなにやら騒音とともに地響きが聞こえてきた。
「……ん、なんの音だ? ずいぶん窓の外が騒がしいな」
「「「あ〜? どれどれ」」」
身を乗り出して、窓を見下ろす意外と素直な三バカ
そこで三人が見たもの、それはクラスメイトの女の子が、鬼神のような面構えで
ものごっついスピードで砂煙を撒き散らしながら、黒猫を追いかけている映像だった。
- 58 名前:cat meets girl :04/06/18 11:09 ID:qWTM3Kjg
-
「「「…………なんだ、ありゃ」」」
ごもっとも。
その異常な光景に、しばらく視線を外せない三人。
そして、そのスキを見逃さない不逞な輩がここに一人。
「オイ、勝負の最中だぞ……ほらよ、カブ(九)だ」
「「「ああぁーーっ!!!!」」」
麻生は事も無げに札を見せて、勝負の結果は親の総取りとなった。
ただし、やや疑惑の残る勝負だったが。
「……アソ、お前…まさか……」
「いいから金を出せ、早くしろよ」
悔しさに泣き咽びながらも、サイフから夏目漱石たちを取り出す野郎ども。
一方、麻生は表情を全く乱さずに、頬杖をつきながら眼下に繰り広げられる勝負を眺めていた。
「それにしても……なにやってんだ、ありゃ」
ごもっとも。
- 59 名前:cat meets girl :04/06/18 11:10 ID:qWTM3Kjg
-
「あの、ハリーさん、ありがとうございます!」
「フ、当然のコトをしたまでサ」
眩しいまでのルックスとキラリと光る歯に、女子生徒はもうメロメロメロンパン。
キャーキャー言いながら、ハリーのもとから走り去っていった。
「女子生徒への助太刀か、相変わらずだな、ハリー」
いつの間にやら横にたたずむ、およそ全く高校生らしくない剛毅さ持つ男、東郷一雅。
どこかの悪夢な少佐を髣髴とさせるこの男、ハリーも只者ではないと感じている。
自分が聞いた、サムライのような友人を、彼は高く評価していた。
「トーゴー見てたのカ、それにしても日本ノ女の子はシャイなんだナ」
「フム、それが日本の女性だからな、内気ではなく、慎みを持っているのさ」
(すごい遠くで)
「伊織! どこ〜!! あ、ここに居た! 待ちなさい伊織!」
「おわっ! 塚本! ここは男子便所だぞ! のぉぉ〜! そっちは更衣室!!」
「……そして、まれに見せる弱さも魅力のひとつだ
「ナルホドナ、弱さか……ハカナサ、と言ったかナ?」
(やや遠くで)
「……邪魔よ! てりゃぁぁッ!!」バキバキバキッ!
「げ! アイツ木製の柵を突き破りやがった!!」
- 60 名前:cat meets girl :04/06/18 11:17 ID:qWTM3Kjg
-
「いつも落ち着き、静かに行動する……日本が誇る『静の美』だ」
「『静の美しさ』か……たしかに日本の女性はそうイッタ美しさがあるナ」
(少し遠くで)
「伊織〜ドコドコドコドコドコドコドコ!!! ここかッ! それともここか! あ、そこね!」
どごーん。ばこーん。どごーん。ガガガガガガガ!
「おい、なにやってんだが知らねえが、落ち着けって塚本!」
「とはいえ、お前に女性のことを話すなど、釈迦に説法だったかな?」
「イヤ、おかげでニホンの女性への見識が深まったサ」
ニヤリと笑う二人。
正反対のようで、根本では似ている二人でしか出来ない、息の合った行動だった。
(すぐ後ろで)
「ここにはいなみたいね…………あ! 伊織発見! 待てぇ〜!!」
ここで、ふと気が付いたようにハリーが振り返る。
後方を眺めて不思議がっているハリーを見て、東郷も振り返るが、特にこれといったことはない。
「どうかしたのか?」
「……なにやらさっきカラ後ろガ騒がしくナカッタカ?」
「そうだったか、俺は気づかなかったが」
「そうか、やはり私の気のせいカ……」
ガッツリ気のせいじゃありません、ご両人。
しかし、そんな声が聞こえるワケもなく、二人はザッザッザッと去っていった。
- 61 名前:cat meets girl :04/06/18 11:17 ID:qWTM3Kjg
-
「……う〜ん、ここまで来ると大分静かだね」
「そ、そうだな」
部活中のはずなのに、グラウンドからやや離れた木陰にて座っている二人。
もっぱらお似合いな二人、とご近所でも評判の梅津茂雄と城戸円の両人である。
まあ部活中、といっても今は休憩時間、ここにいても問題はない
問題はないのだが、梅津の頭の中にはイロイロと思うところがあるらしい。
(こ、今度こそ……俺から、俺から……キキキキキスを…)
真昼間の部活中にナニを考えてやがる、という意見はさておき
二人の関係において、今のところ主導権をすっかり円に奪われている梅津少年。
男の面子(強がりとも言う)にかけて、自分に主導権を取り戻したい!
そう、今度こそ自分が素直に! 積極的に! 自分から! と考えている。
……というのは表向きのことで
実際はただ単にチュー☆ がしたいだけだったりする、梅津君もお年頃だねえ……
コホン、それにしてもこんな部活中に? という疑問も浮かぶが
野外の方が燃えるというのはグル−バルでワールドワイドな共通認識。
そして、ついに一人オーバーヒートな梅津少年は、今がそのときと行動を起こした。
「ま、まど……」
「ニギャー!!」
「待て待て待て待て待て待て待て!!!!!」
横の木立から、暴走する二匹の獣が飛び出してきた。
その二匹(?)は、さんざん二人の周りでバトルちっくな追いかけっこをしたかと思うと、
呆然とする二人の恋人のことなど無視して、というか気づいていなかったのか、
再びズドドドドドドドとドップラー効果よろしく駆けていった。
- 62 名前:cat meets girl :04/06/18 11:18 ID:qWTM3Kjg
-
「……今のって、塚本さん?」
「……あ、ああ、たぶんな。ただ、俺も自信はない」
奇妙な沈黙とともに、なんともなしに、テンションがゼロに戻ってしまった梅津。
テンションマックスだっただけに、空振ることで一気に落ち込んでしまったようだ。
木に手をついて、意気消沈する梅津少年。
しかし、今の彼は今までの彼とは一味も二味も、アジの開きも違うのだ。
こんなことで落ち込んでいたら。2−Cの生徒などやっていられない。
「ま、円!」
と、あらゆるものを振絞って、ガシっと肩をつかむ、が
「あ、もう休憩時間が終わるね、もどろっか?」
_| ̄|○
そんなお久しぶりネな絵文字が入る。
つくづく運とタイミングとその他諸々が悪い男である。
そうだな、ハハハハ…、と乾きまくった言葉とともに、フラフラとグラウンドへと向かう梅津
しかし、そこに不意打ちィッ!(卑怯とは言うまいね)
チュ♪
「まままままままま円!?」」
「えへへへ、早く戻ろ! 怒られちゃうから!」
顔をやや赤くしながら、たったったと円は駆けて行く。
残された梅津は、頬に手を当てる、微かに残る感触を感じると、顔がゆるゆるに緩む。
ヒャッホー! と叫びをあげながら、全速力でグラウンドへと駆けだした。
- 63 名前:cat meets girl :04/06/18 11:18 ID:qWTM3Kjg
-
ほかにも、今鳥のナンパを邪魔したり
西本願司の厳選ビデオ20傑を粉々にしたり
盗撮中(本人曰く芸術)の冬木を、女子の前に引きずり出したりと
行く先々で、どこぞの名探偵の孫のように事件を巻き起こす一人と一匹
あまりに激しすぎるバトルに、もはや周りに生徒はいない、まさに荒野の二人。
己を削り、魂を削り、ついでに女の子としてもいろいろと削ったりしながら、追いかけっこは続いた。
しかし、いつかは決着はつくものである。
こち亀に最終回がくる……かどうか実は微妙だが、この勝負も終わりが近づいた。
「はあ…はあ…ここに居るのは分かってるんだからね!」
そう、ついに天満は伊織を追い詰めたのだ。
そこは体育館倉庫、薄暗く、狭い空間、決着の場としては少々閉鎖的だがそれは致し方なし。
「フッフッフ、伊織、年貢の納め時よ、観念してお縄につきなさい!」
まずは鉄製の扉をガコンと閉める。
これで逃げ道は塞いだ、あとはあの猫をとっ捕まえるのみである。
「伊織〜、どこだー、君達は完全に包囲されている〜」
なぜ複数形、というか包囲はしてないだろ、という突っ込みはしないでくれ。
彼女なりにこの状況を楽しんでくるらこそ出る言葉なのだ。
- 64 名前:cat meets girl :04/06/18 11:19 ID:qWTM3Kjg
-
ゴソゴソ…
キュピン☆ と天満のアホ毛レーダーが反応した(父さん、妖気です!)
物音は1時の方向、2m、静かに、そっと近寄る……
そしてがばちょ! と飛び掛る!
「捕まえた!!!」
がっしり掴んだその物体、抵抗もせずにおとなしく腕の中に納まっている。
よし! と天満が思った瞬間……はて、なぜに伊織はこんなに大きいのか?
「……やっぱりマットは眠りにくい」
「かかかかかかかかかかかかかかかか烏丸くん!!?」
けっ、予想通りだな、という声がディスプレイの向こうから聞こえてきそうだが、気にしない。
これも話の都合と、というか許してくださいゴメンナサイ。
ゲフン、なんと、伊織と間違って、体育館倉庫で寝ている烏丸に飛びついてしまった天満
状況を把握した瞬間、瞬時にバーサーカーから恋する乙女へジョブチェンジ。
「か、烏丸くん、ごめんなさい! 今のはその、えーと、なんていうか……」
「あれ、塚本さん」
「決してそういうつもりがあった訳では……ないとも言えないけどってなに言ってるの私!?」
「おはよう、塚本さん」
会話がかみ合ってねえ、というか会話ではない。
それはともかく、一人テンパイ即リーチの天満であったが、お姉ちゃんパワーは微かに残っていた。
周りを見回して伊織を探す。
さすがお姉ちゃん筆頭、ただの色恋バカとは違うのだ。
- 65 名前:cat meets girl :04/06/18 11:20 ID:qWTM3Kjg
-
「烏丸君! 伊織…あ、え〜と、これぐらいの黒猫見なかった!?」
「……あれのこと?」
自分の後ろを指差す烏丸、その指の先には、スルリと窓から逃走する伊織の姿がかろうじて見れた。
というか、こいつなんで後ろが見えるんだ? 白眼でも持っているのだろうか?
「あー!!! 伊織!!!」
叫んだところで後のフェスティバル、倉庫の裏は校舎外、もはや追跡の芽は摘まれてしまった。
この数時間に及ぶ激闘はなんだったのか。
これでは死んでいったクラスメイト達(死んでません)に申し訳がない。
「あうう、そんな……」
打ちひしがれる天満、もはや立つ気力も根性もなくなってしまった。
「塚本さん、大丈夫?」
「うう、だいじょうぶぅ〜、烏丸くん、ありがとぉ〜〜」
負けるな天満、きっといつかいいことあるさ!
まずはこの状況をうまく使って、烏丸とカレーにでも食べに行って来い!
きっと、それぐらいの役得はしてもいいだろう。
とまあ、かなり色々ありすぎたが、もはや西の空が真っ赤っ赤に染まっている。
校内に甚大な損害と膨大な被害者を大量生産した二人の壮絶な追いかけっこはこれにて幕。
かくして勝敗は、紙一重ながら伊織に軍配があがったのだった。
fin
- 66 名前:cat meets girlの中の犬 :04/06/18 11:30 ID:qWTM3Kjg
- …最後に英語の文を入れ忘れてる
_| ̄|○<マタミスディスカー
- 67 名前:Classical名無しさん :04/06/18 17:32 ID:9vGUIyyE
- 無敵看板娘のような展開と
某ラノベ作家のような語り口調がなんか新鮮な感じですな。
- 68 名前:Classical名無しさん :04/06/18 17:41 ID:X6i2Dcos
- 弾けた作風にすると一人よがりになっていつもの良さが消えてしまう
と言ってみるテスト。
まああくまで好き嫌いの問題なんですが…
- 69 名前:Classical名無しさん :04/06/18 20:16 ID:2Kp9EKDo
- 新鮮ですね〜こういうトリッキーな作品もたまには面白いかもね。
パロディ要素を全部見抜けたかどうかが気になるなw
- 70 名前:Classical名無しさん :04/06/18 20:25 ID:JbgYONAM
- 好みの問題だろうけど、初期チックな雰囲気で好きだ。
ありがとうございました!
- 71 名前:Classical名無しさん :04/06/19 03:11 ID:VV9cQvLU
- 久しぶりにSS投下します。
先週分のを読んで、思い付いたネタですが……今週分が神がかっていますので
イマイチかもしれませんが(;´Д`)
- 72 名前:Classical名無しさん :04/06/19 03:12 ID:VV9cQvLU
- 「それじゃ、2-Cの勝利を祝って、カンパーイ!!」
美琴の声が、居間に響く。それと同時に、皆の手に握られたグラスが宙に上がり、
そして、お互いのグラスがぶつかる乾いた音が響き渡った。
ここ、美琴の家では、体育祭の勝利を祝い、ささやかな祝宴が開かれていた。
女子リレーで追いつかれてしまった2-Cであったが、その後の男子リレーチームの奮迅の活躍により、
見事に逆転優勝を決めたのだ。
閉会式の後、優勝のお祝いということで、有志達が美琴の家で集まることになった。
メンバーは、おなじみ3バカに4人娘、そしてリレーで活躍した麻生、その他八雲とサラ、
さらには絃子先生と姉ヶ崎先生も集まっているという、そうそうたるメンバーである。
乾杯の後、女性陣が分担して作った料理が、次々と運びこまれ、皆思い思いの料理に箸を延ばしていた。
「えっへっへー、美コちん、どうだった? オレ、結構足速かったでしょう?」
既に半分酔いが回っているのか、今鳥が顔を赤くしながら、隣でのんびり飲んでいた、美琴のほうに近づいていった。
「そうだなー、確かに意外と言えば意外だったが、速かったな……って、あたしにスリ寄るなぁ!!」
酔った勢いで、美琴の胸に自分の顔をうずめようとした今鳥に、問答無用で鉄拳制裁を加える美琴。
「ぐふ……ヤッパE……」
そのままばたりと後ろに倒れ込む今鳥。その表情は、なぜか恍惚の表情が浮かんでいた。
「ったく……って、高野!何撮ってるんだぁ!!」
そんな二人の様子を、なぜかデジカメで撮っていた晶に、思わず美琴が声をあげた。
「……面白そうだし……」
「だぁ!やめろー!!」
- 73 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:15 ID:VV9cQvLU
- 美琴と晶がたわむれている一方で、丁度テーブルを挟んだ反対側では、
これまた微妙に酔った花井が、八雲に話しかけていた。
「はっはっは! 八雲君、僕の勇姿をみてくれたかい!?」
「え……は、はい……」
少し困った様子で答える八雲。
「はっはっは! いやー、照れるなぁ!」
何故か照れ笑いを浮かべる花井。そんな花井を、八雲は、やはり困ったように見つめた。
「よっと──」
ふと、八雲の目の前を、一組の箸が横切る。ふと横を見ると、播磨が自分の席から少し離れた料理をとろうとして、
四苦八苦している姿があった。
「あ、播磨さん……えっと、何かとりましょうか?」
それに気付いた八雲が、自分の横に座っていた播磨に申し出る。
「お、妹さんか。それじゃ悪いけど、そこにあるおにぎり、2,3個とってくれないか?」
播磨は、八雲を挟んで自分と反対側、花井と八雲の間ぐらいにおいてあったおにぎりを指さした。
八雲は、小さく返事をすると、播磨の箸と紙皿をとり、丁寧におにぎりを紙皿の上にのせた。
「あの……ど、どうぞ……」
おずおずと、おにぎりののった紙皿を差し出す八雲。
播磨は、軽く礼を一つ言うと、そのままおにぎりを、自分の口にひょいひょいと続けて放り込んだ。
「ありがとな……お、このおにぎり美味いな!」
「そ、そうですか?……よかった」
播磨の返答を聞いた八雲は、胸をなで下ろすかのように、ほっとため息をつく。
そんな八雲の姿を見て、ふと思うことがあったのか、播磨が八雲に尋ねた。
「――ひょっとして、このおにぎり、妹さんが作ったのかい?」
「え?……あ、はい……」
八雲は、少し驚いた様子で、播磨に答えた。
「そうか。いつかの時も美味かったが、今回も美味いぜ。サンキューな、妹さん」
「い、いえ!そんな──」
八雲は、わずかに顔を赤らめ、播磨のほうから視線を外すかのように、わずかにうつむいてしまった。
随分以前のことになるのに、それでも播磨拳児が覚えていてくれたこと。
小さなことかもしれないが、八雲にとっては、そんな小さな事を覚えていてくれたことが、何よりも嬉しかった。
- 74 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:19 ID:VV9cQvLU
- わずかに顔を赤らめ、うつむく八雲の姿を、少し離れたところにいたサラは、優しい笑みを浮かべながら見つめていた。
「ふふ──よかったね、八雲」
サラは、小さくそうつぶやくと、その形のよい唇から、わずかに笑みがこぼれる。
「うん?──何がよかったんだ?」
サラの横に座って、ジュースを飲んでいた麻生が、不思議そうに尋ねた。
「あ、いえいえ。なんでもありませんよ……あ、先輩。せっかくですし、何か料理とりましょうか?」
サラは、軽く手をパタパタと振りながら、麻生に申し出た。
「そうだな……それじゃ、あそこにある野菜炒めを少し取ってもらえるかな?」
「はい、任せて下さい」
麻生から差し出された紙皿を取ると、サラはテーブルの中央においてあった野菜炒めを、その紙皿の上に盛りつけた。
「はい、お待たせしました。これ、実は私がつくったんですよ」
サラはニッコリと笑うと、麻生に野菜炒めがのった紙皿を手渡す。
「ああ、ありがとう──」
麻生は、サラに軽く礼を言うと、そのまま野菜炒めを口の中に運ぶ。そんな様子をサラは、ニコニコしながら眺めていた。
- 75 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:19 ID:VV9cQvLU
- 「先輩、どうですか?」
サラの問いかけに、麻生は一瞬思案顔を浮かべる。
「ん──そうだな、なかなか美味いんじゃないか?」
麻生にしては珍しく歯切れの悪い回答に、サラは何か思うことがあったのか、
いぶかしげな表情を浮かべた。そして、人差し指をたてると、少し怒ったかのように声をあげる。
「もう、先輩!ちゃんと本当のことを言ってください」
「い、いや、別に嘘をついたわけじゃないんだが──」
麻生は、困ったかのように、右手で頭を軽く掻く。そして、自分の箸で、丁寧に刻まれた野菜を一つつまむと、サラのほうに見せた。
「──そうだなぁ。強いて言えば、下準備の段階で、
野菜にもう少し手を加えておいた方が味が良くなるかな?
でも、このままでも十分にうまいと思うよ」
そんな麻生の答えに、サラは満足したのか、ニッコリと微笑みかけた。
「先輩、ありがとうございます──そういえば、先輩の家って、確かラーメン屋さんでしたよね?」
「あぁ。そうだけど……」
それがどうした?という感じの麻生。
「今度、私に、先輩の野菜炒めの作り方を教えてくれませんか?」
「え? ああ、それぐらいならいつでもかまわないけど……」
麻生は、少し驚いたかのような表情を浮かべる。
「はい。それじゃ約束ですよ」
そう言うと、サラは、嬉しそうに自分も野菜炒めを口に運ぶ。
そんなサラを見ると、麻生は、まるで照れ隠しのように、軽く咳をつくのだった。
- 76 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:22 ID:VV9cQvLU
- 各人が好きな料理に手を伸ばし、思い思いの人と楽しく話を交わす。
そんな楽しげな様子を、沢近は、まるで辺りから取り残されたかのように、
ぽつんと一人で、部屋の端のからぼんやりとながめていた。
「──どうしたの?」
沢近が、ふと声がしたほうを見ると、姉ヶ崎先生が、ビールの入ったコップをもって、立っていた。
「いえ、別に──」
思わず視線を外してしまう沢近。そんな様子に気付いたのか、それともあえて無視したのか、
姉ヶ崎先生は、そのまま沢近の横に腰掛けた。
「そういえば──ええっと、沢近さんだったかな──足のほうは大丈夫? 随分無理していたようだけど……」
「え?──あ、はい。もう大丈夫です……迷惑をおかけました」
驚いたのか、一瞬顔をあげる沢近。だが、一言謝ると、再び視線を床のほうに落としてしまった。
「いいのよ──無事でよかったわ」
姉ヶ崎先生は、そう言うと、優しく沢近に微笑みかける。
しばらくの間、二人は一言もしゃべらなかった。ただ、黙って皆の楽しげな様子を、ぼんやりと眺めていた。
そして、姉ヶ崎先生が、自分のコップを空ける頃、ゆっくりと口を開く。
「そういば、ハリオ──播磨君、足速かったわね」
『播磨君』──その言葉が出た瞬間、わずかに沢近の体がびくりと動く。だが、表情を変えることなく、静かに言葉を返す。
「──そうですね」
わずかに言いよどんだ、沢近の返答。だが、姉ヶ崎先生はそんな様子に気付いた様子もなく、
そのまま楽しそうに言葉を続けた。
「うんうんかっこよかったわね。さっすがハリオ!──あなたも、そう思わない?」
「……はい」
ほんの少しだけ、小さく握りしめられる拳。そして、長い睫がわずかに揺れ動く。
「うんうん、そうよね!」
一方、姉ヶ崎先生は、そう言うと、ころころと楽しそうに笑った。
そして、再び二人の間に沈黙が流れる。
いくばくかの時間が流れた後、その沈黙を打ち破るかのように、沢近が静かに口を開いた。
「──先生、申し訳ないですけど、私はそろそろこの辺で帰ろうと思います」
「そう……お大事にね」
姉ヶ崎先生は、そう言うと、沢近に優しく微笑みかけた。
「──はい」
沢近は、静かに微笑むと、ゆっくりと席を立つのだった。
- 77 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:24 ID:VV9cQvLU
- 途中、部屋を出る時に、美琴に声をかけられる。
「あれ、沢近、どうしたんだ?」
「うん……ちょっと、ね──そろそろ帰ろうかなって」
表情はいつもと変わらない様子であったが、その雰囲気から、
ただならぬ様子を感じ取ったのか、美琴は心配そうに尋ねる。
「だ、大丈夫か?」
「うん。少し足が痛むだけ……それじゃあね。今日はありがとう」
沢近は、ほんの少しだけ微笑んでみせると、静かに立ち去った。
いつもとどこか違う様子に、ひっかかりを感じる美琴。だが、なぜかそれ以上声をかけることが出来ず、
ただ、見送ることだけしかできなかった。
- 78 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:27 ID:VV9cQvLU
- 一方沢近は、美琴の家を出ると、足が痛むのにもかかわらず、思わず走り出していた。
なぜ、走り出したのか。その理由は自分でも分からない。ただ、あの空間にいるのが、なぜかつらかった。
ふと気がつくと、小さな公園の前まで来ていた。辺りは、既に赤く染まっており、
公園の中には、2,3人の子供が、無邪気に遊んでいる姿があった。
「──痛っ!」
足が痛いにもかかわらず、走ったのが災いになったのか、足の痛みに思わず顔をしかめる。
沢近は、自分の左足をみつめると、一つため息をついた。
そして、公園のベンチまでたどり着くと、ゆっくりと腰を下ろす。
しばらくの間、沢近はぼんやりと、公園の中で遊んでいる子供達の姿を眺めていた。
目の前にあるのは、一組の少年と少女の姿。彼らが兄妹なのか、それとも仲の良い友達同士なのかはわからない。
目の前の少女は、どうやらかなり無理なことを、少年に命令しているようだった。
その少年は、困ったような顔をしていたが、やがてニッコリと笑うと、その少女の言うことを素直にきいていた。
そんな少年の反応に、少女は満足そうに微笑むと、再び、二人で仲良く遊び始めるのだった。
沢近は、そんな二人の様子を見て、ひどく自分がみじめに思えた。
そして、そんなふうに思えてしまう自分がイヤになり、再び大きくため息をつく。
ふと、頭の中に、播磨の姿が思い出される。
- 79 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:28 ID:VV9cQvLU
- ──自分が雨の中に濡れていたとき、優しく傘を差しだしてくれた姿
──海で、素っ裸で自分の後ろから抱きついてきた姿
──自分に、力強く告白してきた姿
次々と思い出される姿。
「ふふ……」
なぜか、自然に笑みがこぼれでる。
「──なにニヤニヤ一人で笑ってるんだ?」
ふと上を見上げると、そこには相変わらずのサングラスをかけた播磨の姿があった。
「え──」
何故、彼がここにいるのだろう?
突然のことに頭がまわらなかったのか、なんとも間の抜けた返事を返してしまう。
だが、次の瞬間、すぐにいつもの強気な彼女に戻る。
「──べ、別に。ちょっと休んでいるだけよ。だ、大体、アンタこそどうしてここにいるのよ?
まだ、打ち上げは続いてるんでしょう?」
「う……そ、それはだな……その、先生が……」
播磨の脳裏に、先ほどのやりとりが思い出される。
- 80 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:30 ID:VV9cQvLU
- 「──ハーリオ、ちょっといいかしら?」
「うん、どした?」
サンドイッチを食べながら、くつろいでいた播磨に、姉ヶ崎先生が、突然話しかけてきた。
「悪いんだけど、沢近さんを家まで送ってくれない?」
「?……いまいち事情が飲み込めないんだが……」
播磨がいぶかしげな表情を浮かべると、姉ヶ崎先生は事情を説明した。
「な、なんだよ。そりゃ……だ、大体、お、俺には関係ねェし……」
今までのこともあり、フンと横をむいてしまう播磨。それを見た姉ヶ崎先生は、
なぜか小さく笑うと、わざとらしくため息をつく。
「そっかぁ……うん、ハリオの言うことも一理あるかもしれないわね。
……そういえば、沢近さん、随分足のケガが酷そうだったけど……大丈夫かしら?」
「……ふ、フン! だ、大丈夫なんじゃねえの……多分」
一瞬、播磨の脳裏に、沢近のケガの様子が思い出される。だが、それを打ち払うかのように
右手に持ったお茶を、一気に喉の奥へと流し込んだ。
「そうよね……邪魔してごめんね」
姉ヶ崎先生は、そう一言謝ると、絃子先生のほうへと戻っていった。
播磨は、しばらくじっとしていたが、やがて軽く舌打ちをうつと、ゆっくりと立ち上がった。
そして、そのまま部屋から出ようとしたが、突然、絃子に呼び止めらる。
「おや、拳児クン。どこに行くんだい?」
「え……えーっとだな……そ、そう! 忘れ物! 家に忘れ物しちゃってよ、ちょっとひとっぱしりいってくるわ」
突然呼び止められたことに驚いたせいもあるのか、しどろもどろになりながら答える播磨。
その慌てた様子をみた絃子は、クスリと忍び笑いをもらした。
「そうか……『忘れ物』はちゃんと取りに行かないとな……いってきたまえ、拳児クン」
「あ、ああ。それじゃ!」
播磨はそう言い残すと、そそくさと部屋をでていった。
そんな後ろ姿を、絃子は、優しい目で見送る。
- 81 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:32 ID:VV9cQvLU
- 「──いいんですか? あのまま彼を行かせて……」
絃子がふと横を見ると、自分と同じようにお酒の入ったコップを片手に持っていた、
姉ヶ崎先生が、にこやかに話しかけてきた。
「……どういうことかな?」
「──本当は、引き留めたかったんじゃありません?」
普段、滅多に本心をみせない絃子。その心の内側を探るかのように、姉ヶ崎先生は
じっと絃子の目を見つめた。
絃子は、そんな視線を真っ向から受け止めていたが、やがて、ゆっくりと口を開いた。
「何をおっしゃりたいのか、よくわかりませんが……」
そこまで言うと、絃子は、静かに目を閉じる。そして、つぶやくように言うのだった。
「彼は優しいコです……誤解されやすいですけどね。
でも──だからこそ私は──」
そこまで言うと、絃子はゆっくりと姉ヶ崎先生の方に向き直り、柔らかな笑みを浮かべる。
「──拳児クンを信じていますから」
その迷いのない言葉に、思わずハッとしてしまう姉ヶ崎先生。
だが、次の瞬間には、同じように微笑を浮かべる。
「そうですね──では、刑部先生、一つ乾杯といきませんか?」
「──いいですね。それでは……乾杯」
「乾杯です」
そして、二人はゆっくりとグラスをかかげると、お互いのグラスを軽くぶつけ合う。
カチンという乾いた音が、二人の間に静かに広がった。
もちろん、こんなやりとりが行われていようとは、当の播磨には知るよしもない。
- 82 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:34 ID:VV9cQvLU
- 「と、とにかく! 俺がここにいる理由は、なんだっていいだろう!
……も、もう時間も遅いんだし、そろそろ帰ったほうがいいんじゃないのか?」
播磨が、目の前でベンチに腰掛けている沢近に、少しぶっきらぼうに言う。
辺りは夕日に染まり、一段とその赤みを増していた。
先ほどまで遊んでいた子供達も、自分たちの家に帰ったのか、いつの間にか見えなくなっていた。
「──もうちょっと休んでから帰るわよ」
沢近は、わずかに視線をそらしながら言った。そんな様子に、播磨はやれやれといった様子で、
軽く一息ため息をつく。
「──見せてみろよ」
「え……?」
一瞬、ぽかんとした表情をみせる沢近。
「足、痛むんだろ? 見せてみろよ」
「な、なんでアンタにそんなこと……」
沢近は、ぷいと横を向いてしまう。だが、播磨はそんな様子にはおかまいなしに、沢近の足のケガの状態をみる。
沢近の頬が、わずかに赤く染まる。多分、それは、夕焼けのせいだけではないだろう。
「いいから……うわ、こりゃひどいな」
しゃがんで、半ば強引にケガの部分を見た播磨は、おもわず顔をしかめる。
包帯でぐるぐる巻きにされた左足は、包帯の上からでもわかるほど、腫れ上がっていた。
「……誰のせいでこうなったと思ってるのよ」
横を向きながら、播磨に聞こえるか聞こえないかという小さな声で、沢近がつぶやく。
「ん? なんか言ったか?」
「な、なんでもないわよ! とにかく、私、もう帰るから!」
そう言うと、勢いよくベンチから立ち上がった。だが、ケガのせいかのか、
その端正な顔立ちが、一瞬苦痛にゆがむ。
「──ッ!」
「お、おいおい。大丈夫か?」
さすがに心配になったのか、播磨が声をかける。
「うっさいわね! ほっといてちょうだい!」
そう言うと、沢近はヒョコヒョコと足を引きずりながら、歩き始めた。
播磨は、そんな後ろ姿をしばらく見ていたが、やがて頭を軽く掻くと、沢近のほうに近づいていった。
- 83 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:40 ID:VV9cQvLU
- 「──ったく」
一つ不満の声をあげると、播磨は沢近の前で、背を向けるとそのまましゃがみ込んだ。
「……なんのマネよ」
「みりゃわかるだろ。家までおぶっていってやるよ」
「な! なんでアンタなんかにそんなこと……」
沢再びプイと横を向いてしまう沢近。
「……目の前にケガした女がいるってのに、そのまま帰れるかよ……」
「──え?」
思いもよらない播磨の言葉に、一瞬気を取られてしまう沢近。
「と、とにかく! 人の好意は、素直に受け取っておくほうがいいぞ」
播磨は、沢近に背を向けたままそう言った。一方沢近は、その背中をじっと見つめていたが、
やがて観念したかのように、ゆっくりと近づいていった。
「わかったわよ……言っておくけど、変なことしたら、その場でぶっとばすからね!」
そう言いながら、沢近は、ゆっくりと播磨の背中に、自分の身を預けるのだった。
「ばっ……バッカヤロ! 誰がそんなことするかよ!」
播磨は、不満の声をあげながらも、沢近の体をずり落ちないように固定すると、ゆっくりと立ち上がった。
自分の背中ごしに感じられる、女性特有の柔らかい体。そして、沢近の女性としての香りが、
播磨の鼻をくすぐる。
(へぇ……思ったより軽いんだな。コイツも女の子ってワケか……)
自分の想像以上の軽さに、少々驚きを覚える。
「──こら、ヒゲ! 変なこと考えてないでしょうね?」
突然、背中から、沢近の怒ったような声が飛んできた。
「な、何も考えてねえよ! と、とにかく、お前の家、どっちだよ?」
「……向こうよ」
播磨の肩越しに、沢近は、自分の家へと続く道を指さした。
そして、播磨は、沢近が指し示した方へと、ゆっくりと歩き出した。
ただ黙々と歩き続ける播磨。素直に体を預ける沢近。二人の間に、言葉は一言もない。
辺りはいつの間にか暗くなってきていた。行き交う人々も少なくなり、辺りに聞こえるのは、
ただ風の音と、たまに通り過ぎる車の音、そして二人の息づかいだけだった。
- 84 名前:Classical名無しさん :04/06/19 03:41 ID:qWTM3Kjg
- 支援?
- 85 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:41 ID:VV9cQvLU
- 播磨の肩越しに、沢近は、自分の家へと続く道を指さした。
そして、播磨は、沢近が指し示した方へと、ゆっくりと歩き出した。
しばらくの間、二人は一言もしゃべらなかった。ただ黙々と歩き続ける播磨。
辺りはいつの間にか暗くなってきていた。行き交う人々も少なくなり、辺りに聞こえるのは、
ただ風の音と、たまに通り過ぎる車の音、そして二人の息づかいだけだった。
「──アンタに、まさか一日で二度も背負われるなんてね」
ふと、沢近が肩越しに、話しかけてきた。
「ん? あぁ、騎馬戦のことか。そういやそうだな……」
そして、播磨は、ちょっと照れたように頬を掻く。
「あー、あのよ。あの時はサンキューな……俺の帽子、取れないようにしてくれただろ?」
「……か、勘違いしないでよね! あれはたまたまよ。グーゼンなんだからね!」
沢近は、慌てて取り繕うかのように言った。
「へーへー」
「な、なによ! その言い方、なんかムカツクわね!」
じたばたと背中の上で暴れ始める沢近。
「わ、バカヤロ! 危ないから暴れるなって!」
そう言うと、播磨は、ずり落ちないように、沢近の体を抱え直した。
そして、再び訪れる沈黙。
たまに訪れる車から漏れるライトが、二人を一瞬照らしだし、再び暗闇の中へとけ込んだ。
- 86 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:43 ID:VV9cQvLU
- 「──ねえ、ヒゲ」
何台目かの車が通りすぎたとき、沢近が、ためらいがちに話しかけてきた。
「あん? どうした?」
「──今から言うことは、私の独り言だから……いいわね?」
「な、なんだよ。そりゃ?」
播磨が、訳が分からないといった感じで、振り向こうとしたその時、
沢近の手が、ガッシリと播磨の頭を、帽子ごと掴む。
「『一人ごと』なの! い・い・わ・ね・?」
「イテテテ……わ、わかったわかった。わかったからやめて下さい、サワチカサン」
ギリギリと締め付けられる痛みと、有無を言わせぬ沢近の迫力に、つい降参してしまう播磨。
それからしばらくの間、播磨は沢近の言葉を待ち、黙っていたが、
なぜか背中の上の沢近は、一言もしゃべらない。
「──?」
不思議に思った播磨が、首を後ろに向けようとしたその時、
「──ゴメンね」
ためらいがちにかけられた小さな声が、播磨の鼓膜をふるわせる。
普段の強気な沢近からは、考えられないほどの小さく、消えそうな声だった。
「──素直になれなくて、ゴメンね」
一言一言、ゆっくりと紡ぎ出される言葉。
不思議に思った播磨は、つい声をかけようとする。
「おい、お嬢──?」
「──私がもっと素直だったら──素直にあなたに謝れていれば、こんなことにはならなかったのにね……
本当にごめんなさい」
文字通り、震えるような声で、一言一言つむぎだす。
播磨の両肩に置かれたその手は、わずかに震えていた。
播磨からは沢近の顔を見ることは出来なかったが、なぜかその時は、沢近が泣いているように思えた。
- 87 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:47 ID:VV9cQvLU
- 「あー、あのよ……」
しばらく播磨は黙っていたが、やがてゆっくりと話し始める。
「今から俺が言うことは、俺の独り言なんだが……」
「──」
「……まぁ、その、なんだ……俺は、そんなに気にしてないぜ。それに──」
そこまで言うと、ゴホンと軽く咳払いをする播磨。一方の沢近は、播磨の背中でおとなしく聞いていた。
「──その、今、こうして、ちゃんと素直に謝れているんだから、いいんじゃないか?」
自分で言っていて、少し恥ずかしくなったのか、再び頬を軽く掻く。
沢近は、しばらく黙っていたが、やがてクスクスと笑い出した。
「お、おい。ど、どうしたんだ? 急に笑い出したりして……」
「──ふふ、ばっかみたい。私の独り言に、独り言で答えるなんて……」
そう言うと、沢近は再びクスクスと忍び笑いを漏らすのだった。
「な!なんだよ! 一体だれのせいで──」
播磨が、非難の声をあげようとしたその時、
──キュッ
播磨の首に、沢近の細い腕が、ためらいがちに回される。
沢近は、自分の腕に軽く力を入れると、播磨の背中に抱きついた。
そして、顔を播磨の耳元に近づけると、ささやくようにつぶやく。
「──アリガトね、播磨君」
そう言うと、恥ずかしくなったのか、播磨の背中に、静かに自分の顔を埋める。
「お、おう……」
一方播磨は、なんとも言えない間の抜けたような返事を返すと、しっかりと沢近の体を抱え直し、歩き始めた。
いつの間にか、太陽は、その姿を完全に地平線の向こうに隠し、
雲一つ無い空には、きらめく星空が広がっていた。
- 88 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:49 ID:VV9cQvLU
- 「ふう──」
沢近は、大きく一息つくと、自分のベッドの上に身を投げ出した。
あの後二人は一言もしゃべらなかった。
そして、播磨に無事家まで送り届けてもらった後、自分の部屋に戻っていた。
ちらりと、自分のベッドの上に広げられた、播磨のジャージを見つめる。
「──ふ、ふん! 元はといえば、あのバカのせいなんだから!」
そして、そのジャージから目をそらすかのように、プイと横を向いてしまう。
だが、やがて、恐る恐るという感じで、ジャージを自分の手に取った。
そのまま目の前で広げると、「播磨」とかかかれたネームの部分をじっと見つめる。
「……ホントに、バカなんだから……播磨君のバカ……」
沢近は、誰ともなしにそうささやく。そして、小さな微笑がゆっくりと広がる。
──明日からは、今よりもう少しだけ素直になろう。
いつの間にかジャージを胸に抱くと、沢近は心の中でそうつぶやいていた。
(了)
- 89 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/19 03:51 ID:VV9cQvLU
- 以上です。
久々にSS書きましたが、難しいですねえ(;´Д`)
漏れ自信はイトコ萌えなんですけど、旗派もいいもんですねえ(*´д`*)ハァハァ
感想、批判、技術的な指摘、遠慮無くお願いしますщ(゚д゚щ)カモーン
読んで下さった方々、ありがとうございました。
- 90 名前:「DANCER IN THE DARK」 Er ◆i//qLXXY :04/06/19 04:41 ID:SMYnl9Mc
-
正統派の良作SSのあとで気がひけますが……冬木&舞で。
なんでこの二人かというと……ただマイタケって言ってみたかっただけだったりして _| ̄|○ スマン
- 91 名前:Classical名無しさん :04/06/19 04:42 ID:r5tOG00g
- こんな時間にキターーーーーー
GJ!
- 92 名前:○とりあえず、被写体は周防。○ :04/06/19 04:43 ID:SMYnl9Mc
-
冬木 武一による、体育祭の定義。それは ”年に一度の、躍動する美の祭典”。
写真に撮らなきゃ、もったいない。
ミョーな義務感のようなものが冬木をつき動かす。
すっかり手に馴染んだ写真機は、トレードマークという枠を超え、もはや身体の一部といった感じだ。
硬質な、冷たい感触が心地良い。
見た目の美しさではない。恋する女の子の内面から溢れ出る、一瞬の美。
それを捕らえるべく、冬木は今日も超ローアングルで攻める。
ごすっ。
ファインダー越しに広がる靴の裏の映像。すんでのところでデジカメを死守する。
自分の顔面を守りきれなかったのは──ご愛嬌。
「みんな真剣にやってるのに、何やってんの冬木くん!」
「ふあ……委員長。もち卒業アルバム用にイベントの写真を」
「嘘ばっか。またエッチな写真撮ってるんだ」
「芸術と言ってくれない? ゲージツと」
「顔も写らないようなアングルで、卒業写真も芸術もあったもんじゃないでしょう」
頬に残るワッフルのような靴痕もそのままに、腕組みで立ちはだかる舞と対峙する。
怒りに満ちた表情の舞に対し、冬木の顔はどこまでもユルい。
「騎馬戦すっぽかして写真撮ってたワケね」
「いやー出たかったのはヤマヤマなんだけど、いかんせん持病の腰痛が……ゴフンゲフン!」
「……なんで腰痛で咳き込むのよ」
- 93 名前:○販売が前提、らしい。○ :04/06/19 04:43 ID:SMYnl9Mc
-
「いい加減もうやめてよね! みんな迷惑してるんだから」
「なんで迷惑するのさ? サイコーに輝いてる瞬間を記録してるだけなのに」
心外だなァといわんばかりに口を尖らせる。
「やっぱ恋してる女の子は輝きが違うんだよねー」
会話しつつも振り向きざま、一条に向けシャッターを切る。
「言ってるそばからするな──っ!」
すかさず平手で頭をひっぱたく。心なし、叩いた音までがぱこーんと軽い。
「一条さんなんか、二学期からぐっと綺麗になったよねえ。
城戸さんもいいんだけど、すでにウメと付き合ってるから需要が……」
「何の需要よ、何の」
「あとねー沢近さん! 彼女このところ雰囲気が変わってきたと思わない?」
「えーっ、沢近さん? ウソッ! 沢近さんが恋してるってコト?」
ついつい会話に乗ってしまい、ハッとする。
「ま、とりあえず委員長は撮らないから安心して」
「んなっ!?」
「委員長、恋してないでしょ? もう一つ何かが足りないんだよね」
「ブン殴るわよアンタ?」
ヘンな写真を撮られるはイヤだが、面と向かって撮らないと言われると、それはそれでムカつく。
「まあまあ舞ちゃん落ち着いて。だいたいウチの男どもにロクなのがいないんだからしょうがないわよ」
「あ、嵯峨野さんも今んとこ圏外です」
「ブッ飛ばすぞ、テメエ!」
「恵ちゃん恵ちゃん、落ち着いて」
「ええーい止めるな、メガネ!」
「メ、メガネって…… _| ̄|○ 」
- 94 名前:○意外な伏兵、ここにも。○ :04/06/19 04:44 ID:SMYnl9Mc
-
「もう勘弁ならないわ! データ全消去! カメラも没収よ!」
「げえっ! それはできない相談ですぅ」
脱兎のごとく逃げ出す。
「待ちなさーい! 観念して縛につけーっ」
「待てと言われて待つヤツはいませんよねぇ?」
こうなったら実力行使でいくしかない。
そろそろ女子リレーのスタンバイが始まるころだ。
組対抗戦もいよいよクライマックスを迎えつつあるが、
あんな輩を放置しておいたらクラスの士気にかかわる。
競技そっちのけでグラウンドの隅の方を走り回る二人。
カメラ小僧を捕獲することなど容易いと思っていた。
しかし意外なことに、あの小僧はかなりのダッシュ力を有している模様。
しかも舞は本気で追っているのに、冬木の方にはカメラを構える余裕すらある。
さらにしかも腹立たしいことに、取り上げようとしているそのカメラでヤツは女子リレーの写真を撮っている。
ときに立ち止まり……ときにローアングルのためスライディングしながら。
(なによ……冬木くんってこんなに足速かったの?)
激写のようすをわざと見せつけられているようでカチンときつつも、
思いがけない冬木の身体能力の高さに驚嘆を禁じえない。
- 95 名前:○舞ちゃん、たいていの2-C男子と追っかけっこしている。○ :04/06/19 04:45 ID:SMYnl9Mc
-
「あんた……ハァハァ……けっこう速いんじゃない」
息を切らして座り込む舞。競技でも全力。応援も、場外戦も全力。いいかげん限界に近づきつつある。
「本気出したら相当すごいんじゃないの?」
「わかってないなァ。こういうのって、ハリキってやらないからいいんだよ」
「なによそれ」
「頑張り過ぎてもいい結果って出ないもんだよ。そう思わない?」
どうにも釈然としない。ガンバらないでどうしていい結果が得られるというのか。
「委員長って、いつも張り詰めた感じでさ。もうちょっと肩の力抜けばいいのに……って」
「……これがアタシなんだもの。力抜いた方が逆に疲れちゃうわ」
「抜き方がわかってないだけだよ、きっと」
「わかんない、そういうの」
ふと漂う沈黙。秋風が気持ちいい。
「……リレー、走ってよ」
「ほへ?」
「梅津くんがブタに轢かれてケガしたの、知ってるでしょ?」
「ああ、あれはワラタ」
ワラタじゃない! と話の腰を折る冬木へゲンコツを振り下ろす。真面目に言ってんのよ。
「次のリレーが勝負なの。最高のメンバーで臨まなきゃ」
「サイコー……で、俺なの?」
「あんたの逃げ足の速さはクラスでトップクラスよ。私が保証する」
全身を使って『んなバカな!』という気持ちを示す冬木。『あり得ない!』
「今までさんざんサボってたんだから、最後くらいクラスに貢献しなさい!」
- 96 名前:○菅よりも速かった。○ :04/06/19 04:46 ID:SMYnl9Mc
-
「……しょうがないなァ……」
頭を掻き掻き、立ち上がる。
「俺のせいで負けても責任とれないよ?」
「大丈夫! 一生懸命がんばった結果なら誰も文句言わないわ」
「……ウラを返すと一生懸命がんばれってコトね」
やれやれだ。そんなに嬉しそうにしないでくれる? 俺、プレッシャーに弱いんだから。
「ま、善処しましょ。……でも肉離れとかしたらどうしよう」
「さっきあんだけ走っといて何言ってんの!」
意気揚々とした舞に連行されるようにして、クラスの控え席に戻ると……
「勝ちゃあいいんだろ勝ちゃあ!!」
播磨の威勢のいい声が聞こえた。うおおおおおん! 轟く歓声。
菅。麻生。今鳥。花井。──そして播磨。ここに2-C男子の精鋭5名、最高のメンバーが揃った。
「……えっと……」
「晴れてお役御免……てことかな?」
最高のメンバーからあぶれた男。肩をすくめておどける姿がどこか痛々しい。
「あの……ゴメン。その気にさせといて……」
「いいっていいって。そもそもらしくないコトしようとしてたんだから」
「冬木くん……」
「さてと。これで心おきなくヒーロー達……に声援を送る美少女達の姿を……」
パァン!! 号砲が響き渡る中……
まだやってるのかおのれは──ッ!!
らしくいかなきゃねええええぇぇぇぇぇェェェェェ....!
「おい、あの大外のヤツ速えぞ! あれ何組?」
「えーと、C組だけど……カレ、選手じゃないよ?」
- 97 名前:Classical名無しさん :04/06/19 04:50 ID:EJDGC9Tw
- 支援
- 98 名前:○舞ちゃんは撮らないんじゃ……なかったのか。○ :04/06/19 04:51 ID:SMYnl9Mc
-
組対抗戦は、2-Cの優勝で幕を閉じた。
激しい戦いもノーサイド。陽の落ちたグラウンドで、互いの親睦を深めるレクリエーションが行われていた。
「なんだかなぁ……」
体育座りでダンスの輪を眺める舞。ついさっきまでの追跡劇で……今度こそ、精も根も尽き果てた。
「こうして終わっちゃうと、勝ち負けなんて大したことじゃないて思うのよねぇ。」
誰に言うともなくつぶやいているように見え
そのじつ、その言葉は背後に佇む冬木に向けられている。
思わず苦笑する冬木。昼間のうちに聞きたかったセリフだ。
「終わるまで気付かないのが、委員長らしいんだけどね」
「……チカラを抜けっていうの、一理あるかも」
「でしょう?」
「ぜったい勝ちたい勝ちたいって思って肩肘張ってやってきたけど、
『負けたからってどうなの?』って思えば……こんなにもリラックスして……なんでもできそうって気になれる」
振り返って冬木の顔を見やる。
全競技が終了し、張り詰めていたものが緩んだのだろう。みるみる表情が崩れた。
破顔一笑。
そんな舞の晴れやかな笑顔は、こうこうと輝く火の灯りを浴びて──。
「!………」
引き込まれるようにカメラを構え、シャッターを切る。一枚。また一枚。
「ちょ、ちょっと何? いきなり」
何なんだろう。自分でもよくわからない。炎に照らされた横顔のせい? それとも。
- 99 名前:○その輝きは、プライスレス。○ :04/06/19 04:52 ID:SMYnl9Mc
-
「委員長……いま恋してる?」 「はぁ? 別にしてないけど……」 「……そう……。それじゃ──」
──俺が恋してるのかも。
「ん? 何て言ったの?」 「あ、いや──なんでもない」
踊りの輪は、いつ果てるともなく回り続ける。
「ねぇ……踊ろっか」
追いかけっこに疲れて、毒気が抜かれたのか。
聞き取れなかった言葉を深く追求することもせず、さんざん追い回した男に手を伸ばす。
せっかくのレクリエーション──参加しなくちゃソンでしょ。そう思わない?
「あぁ、あー……うん」
向こうの方で、これぞシャッターチャンスというべき光景が繰り広げられている。が……
写真なんか撮ってちゃ、もったいない。
片時も離さなかったカメラを、畳んだジャージの上に置き……差し出された舞の手を握る。
柔らかく、暖かい感触が心地良い。
その夜──金髪の令嬢と、誰もが恐れる不良が共に踊る姿が一同の注目を奪った。
同じころ、輪から少し外れた薄暗がりで、ローテーションすることもなく踊るもう一組の男女の姿に気付いた者は少ない。
しかし、彼らを見れば、みな一様にこう感じただろう。
輝いて見える……と。
〜fin〜
- 100 名前:Classical名無しさん :04/06/19 05:08 ID:EJDGC9Tw
- 普通にありそうな展開だ…
…というか本編でこんな展開になっても
ここまで輝かせるのは無理…
GJ!
- 101 名前:Classical名無しさん :04/06/19 07:06 ID:1.uDY9uo
- >>71->>89
乙です! GJ!!!
実際体育祭後ジャージどうしたんでしょうね?
旗派としては,あのままジャージ返さずに抱き枕として…
(*´д`*)ハァハァ
- 102 名前:Classical名無しさん :04/06/19 07:28 ID:1BGaMnQQ
- >>89
指摘カモーンとのことなので、気が付いたところを
・体育祭終了後は夜なのでは?
・沢近を背負っている播磨は頬をかけないのでは?
沢近の独白シーンは間といい、それまでのタメといい、カナーリGoodでした。
でもね、個人的に残念だったのは菅。
菅柳平。
宴には是非とも彼を誘って欲しかった。第一走者だし orz
あと天満にスポットが当たっていないところもチョット残念。
オールキャスト状態はコントロールが難しそうですからね、それぞれが個性的なキャラだけに。
言ってしまえば、詰め込み杉だったのかもしれません。
前半はさらっと流して、後半の旗メインのみでも十分お腹一杯になれますよ。
- 103 名前:Classical名無しさん :04/06/19 07:37 ID:1BGaMnQQ
- >>99
いつも柱が上手いなぁとは思っていましたが
「その輝きはプライスレス」はメチャワロタ(笑)
まさにリレーの別視点、別展開。
マイタケコンビは個人的にもなかなかツボでした。
少し描写で分かりにくい点も見えましたが、漲るパワーで押し切られちゃいました。
マイタケコンビはステレオタイプなキャラですが、組み合わせの妙というか、トムとジェリーというか
テンポのいい展開、ご馳走様でした。
- 104 名前:Classical名無しさん :04/06/19 07:50 ID:ZCGTAP1c
- 時折、予想もつかないカップリングが出てくるから好き。
- 105 名前:Classical名無しさん :04/06/19 14:57 ID:CF9/n8EI
- >ダンサー イン ザ ダーク
追いかけっこの場面がもっとみたかったです。残念。
>cat meets girl
こういうほのぼの展開は良いですね・・・
これくらい完成度が高い作品なら、
本編も初期のような展開になっても良いのになぁ
ところで、パロディなんてありました?
一つもわからなかった〜orz
>Hard to say I`m sorry
無理に全部の派閥に配慮しなくても・・・
それから、集まっているメンバーが不自然です。
なので、せめてメンバー集めの話からやって欲しかったです。
中盤からはひっかかりもなく読めました。
どうも有り難うございました。
- 106 名前:blind summer fish :04/06/19 21:33 ID:hJQv6qv2
-
八月が、そして夏休みがそろそろ終わろうとしている。
それは夏の終わりが近づいていることを示している。
夏が終わるのは嬉しいようでいて、何故か寂しい。
どこまでも広がる雲ひとつない青い空、照りつける太陽、熱されたアスファルトから立ち上がる陽炎、
残りわずかの命を惜しむかのように鳴き騒ぐセミ、蚊取り線香の独特なにおい、なかなか寝付けない夜。
どれもこれも嫌だったと思っていたのに、いざ夏が終わると思うと愛おしくなってしまう。
だが、美琴にとって今回の夏の終わりはいつもと違うものだった。どこか嬉しい反面、
とても切ない。それはどうしてもあのことを思い出さずにはいられないからだ。
そう、失恋してしまったことを。
今となっては、なんとか吹っ切れたつもりではいる。なのに、あのことを思い出すと、まだ胸の
奥がうずかずにはいられない。
そして、失恋と共にもう一つ失ってしまったものがある。
進路についてである。
今まで、好きな先輩と同じ大学に入りたいがために、勉強をがんばってきた。
だが、失恋してしまったことにより、先輩と同じ大学へ行くという目標を見失ってしまい、
最近、勉強にまったく身が入らなくなってしまったのである。
- 107 名前:blind summer fish :04/06/19 21:34 ID:hJQv6qv2
-
そんなわけで、稽古でそういったことは忘れて集中しようとするのだが、意識しないよう
にすればするほど頭の片隅にもやもやができて、なかなか集中できないものである。
「周防、また悩み事か?」
そんな美琴の様子が気になったのか花井が尋ねた。
「別にそういうわけじゃないけど……。ん、またって?」
花井はしまったという表情をして、それから顔をしかめた。
「いや、花火があった時あたりも何か悩んでいるようだったじゃないか……」
「……そういえば、そうだったな」
あの時は、沢近のことで悩んでいた。それを、花井に指摘されたのである。
そして、その後先輩に振られてしまったのである。
「あの、なんだ、その……。僕でよければ相談に乗るが……」
美琴を気遣うように花井は遠慮がちに言った。
やはり、幼馴染といべきか彼女のいつもとは違う様子に気づいていたようだ。花火の後、
美琴はしばらく空元気というか、無理に明るく振舞っていた。
でも、そのことに気づいている者は誰もいない。美琴はそう思っていた。
だが、花井は違っていたようだ。
当たり前のように傍にいて、家族のようでいて、家族とは違うあいまいな存在。
だからこそ、彼女の様子に気がついていたのかもしれない。それでいて、美琴に気を遣い、
しばらく気がつかないふりをしていてくれた。
そんな、花井らしい少し不器用なやさしさに美琴は嬉しく感じた。
- 108 名前:blind summer fish :04/06/19 21:35 ID:hJQv6qv2
-
「とりあえず、少し休むか」
そう言って外に向かって歩いていく花井に美琴はついていった。
外は道場の暑ぐるしい熱気と比べると、とても涼しい。
そして、その風が運ぶ夏の夜独特の匂いが気持ちよかった。
また、自分たちの背後にある道場の窓から漏れる光と、月と満点の星空から降りそそぐやわらかな光、
道場から聞こえてくる活気のある声と自分たちがいる場所の妙な静けさ。
それらがとても不思議な雰囲気をかもし出しているように感じた。
「で、やっぱり何か悩み事か? 言いたくなければ別に言わなくてもいいが……」
少し暗いため花井の表情はよくわからなかったが、やはり美琴にことを気遣っているようだ。
「まー、いろいろとあるんだけど、今はとりあえず進路のことでちょっと悩んでいるかな……」
「なるほど、二学期に入ると面談とかいろいろあるからな」
「なー、花井は進路をどうするかはもう決まってたりするのか?」
汗でべとつくシャツが少し気持ち悪いなと思いながら、美琴はふと幼馴染の進路の事が
気になって尋ねてみた。
「もちろん、大学へ進学するつもりだ」
「そうか……」
「周防も大学へ行くんじゃなかったのか?」
「それについて迷っていてな。つい最近までは行こうと思っていたんだけど……。なんか
目標を見失っちまってな。花井は大学で何かやりたいことがあるのか?」
「うむ、まだ特にないが」
「な……。それじゃ何で大学へ?」
美琴は花井のまじめっぷりを知っているせいか、たいへん驚いて聞き返してしまった。
- 109 名前:blind summer fish :04/06/19 21:36 ID:hJQv6qv2
- 「正直に言ってしまえばな、周防。僕は八雲君と結婚した時、幸せで安定した生活を送るための
一歩として大学へ行こうと思っているのだ」
美琴はあきれた顔をして花井を見てしまった。だが、よく考えると自分も似たようなものかも
しれないと思う。そんなことを知ってか知らずか、花井は少し微笑んだ。
「周防、本当は僕だって漠然なことしか考えていない」
そう言って、何か言葉を選ぼうとしているのか、少し考え込んでからたどたどしく口を
開いて喋りだした。
「僕だって将来についていろいろと悩んでいる。ただな、悩んでいるだけじゃ何も始まらない。
悩みながらも先へ進もうとすることが大切なことだと僕は思う。そして、先に進もうとして
いるうちにおのずと答えが見えてくるものじゃないかな。だから、僕は何事にも全身全霊で
挑んでいるんだ」
なるほど、確かにそうかもしれないと美琴は思う。でも花井を見ていると、あまり悩まないで
先走りしすぎているような気もするが……。
「まー、これは僕の考え方でもある。だから、他人に押し付けるつもりはない」
そして、花井は夜空を見上げ、今でないどこかをみつめるかのように懐かしげに目を細めた。
「ただな、このような考え方になったのはお前のおかげかもしれない。小さい頃の何事にも
ひるまずに前へ進むミコちゃんを見ていて、それが羨ましく憧れでもあり、僕にとってヒーロー
みたいなものだった」
あの自分を変えるきっかけとなった夏の始まりの時の事を思い出しながら、そして、そのせいか
美琴の呼び方が昔のものになっていた。
「だから僕もミコちゃんに負けないように、むしろミコちゃんを守れるくらいになろうと思った。
それが今の僕にしたのかもしれない」
自分の正直に思っている事を話したせいか、花井は少し恥ずかしげにしていた。
- 110 名前:blind summer fish :04/06/19 21:37 ID:hJQv6qv2
-
美琴はそのような予想もしていない告白に驚いて、返事を返すことができなかった。
しかし、確かによく考えてみると小さい頃の自分は今みたいにくよくよと悩まないで、
とりあえず積極的に行動を起こしていたような気がする。
「……そうだな、ありがとう。確かにその通りかもしれない。悩んでいるだけじゃしょうがないもんな」
そして、美琴も昔のことを思い出していた。
道場、小学校、中学校、高校。よく考えてみると、傍にはいつも花井がいた。それが当たり前
のことだった。でも、当たり前すぎて、気づきもしなかった。
二人が離れることを。
今年の夏がそろそろ終ろうとしているように、自分たちの関係も卒業と同時に変わろうとしている
のかもしれない。
離れたら二人の関係はどうなるのだろう。
だから、自然と言葉が出てしまった。
「なあ、あたしと大学で離れたらお前は寂しいか?」
「なっ、いきなり何を言うんだ」
「いや、なんでもない、忘れてくれ。それより、そろそろ稽古に戻るか」
美琴はそのようなことを聞いてしまった恥ずかしさを隠すように、笑いながら花井の背中を思い切り叩いて、
さっさと道場に戻っていた。
花井は戸惑いながら、去っていく美琴の後姿をただ呆然と見ていた。
そんな様子を、夏の第三角形を彩る星座たちが可笑しそうに見下ろしていた。
- 111 名前:blind summer fish :04/06/19 21:40 ID:hJQv6qv2
-
夏が終わろうとしている。
でも、夏はまた巡ってくる。
それはさも当然かのように、次の新しい夏に向かってまた歩き出している。
ならば、自分も同じように次の新しい恋に向かってまた歩き出せばいいのかもしれない。
そして、巡ってくる夏は前のものと同じとは限らない。
去年より良い夏になるかもしれない。その逆もありえる。
でも、それはすべて自分次第だ。
恋も進路も悔いがの残らないようにしたい。
そのためにも、悩んでいるだけではなく、とにかく行動を起こしてみようと思う。
「――とりあえず、明日髪を切って気持ちを入れかえるか」
美琴は小さくそう呟いて、先程とはうって変わってとてもすがすがしいそうに笑顔を浮かべていた。
そして、やさしくて何処かとても懐かしい夏を感じていた。
――Fin.
- 112 名前:blind summer fish :04/06/19 21:44 ID:hJQv6qv2
- これを書いていたら、久しぶりに道場に行きたくなりました。
それはともかく、限定版が手に入らないorz
- 113 名前:Hard to say I'm sorry :04/06/20 00:56 ID:VV9cQvLU
- >>91
ありがd(・∀・)
>>101
ジャージの行方が気になりますよね…沢近(*´д`*)ハァハァ
>>102
これを書き始めたのが先週分を読んでからなので……まさか体育祭後にキャンプファイアーもどきのことを
するとは予想外ですた(;´Д`)
播磨は頬をかけない……確かに。
ついノリでかいてしまいました、スマソ(;´Д`)
>>105
102氏もかいてらっしゃいますが、登場人物については
完全にこちらの独断と偏見できめました(;´Д`)
当初は菅もイチさんも、笹倉先生も登場予定だったのですが、漏れの技術では収拾がつかなくなったので……
今回は、出来る限り多くの登場人物を登場させ、どれだけ上手く描けるかにチャレンジしてみたのですが、
まだまですね……意見ありがとうございました(・∀・)
- 114 名前:Classical名無しさん :04/06/20 02:18 ID:y3Nccwnw
- ちょっとこないうちに神がたくさん降臨してるっ!
>>66
いつもと感じが変わって凄い楽しめました。
やっぱり初期のコメディーの雰囲気はいいですね。
次回作も期待して待ってます。
>>89
かわいらしい沢近見事です。
播磨カッコイイ!
俺も弦子萌えなんで弦子さんSSリクエストしていいですか?
>>92-99
プライスレスわろた。
写真とりまくってる冬木はクラスメートにどう思われてるんだろうか。
変人揃いの2−Cも舞ちゃんには頭が上がりませんね。
>>112
花井かっけー!
ミコチンは花井のお陰でふっきれたのかな?
- 115 名前:Classical名無しさん :04/06/20 02:20 ID:Zb5W7yog
- 「スクラン+ジャスティス学園要素」という変なネタを思いつく。
…想像するのは愛と友情のツープラトンばかりだが。
某御嬢様の場合:
パートナーがツープラトン発動で相手を突き飛ばす→突き飛ばされた相手の
後ろにいた御嬢様が相手を振り向かせて(この時にっこりスマイル)再び
パートナーの方に突き飛ばす→少し遅れてパートナーが背後から体当たり
(ショルダータックルか何か)を仕掛ける→それに一拍遅れる感じで御嬢様が
助走を付けたシャイニングウィザードを相手の首に
名付けて『ギロチンS.W』(むしろ悪魔将軍かよ)
何故か妙にえげつなくなる辺り暑さで脳がイカれた模様。
もしくは5巻限定版買えなかった後遺症か。(´・ω・`)
- 116 名前:Classical名無しさん :04/06/20 02:42 ID:TShaintE
- 体育祭が終わって続々と神降臨だ((((;゚Д゚))))
GJという言葉で足りるのだろうか?
- 117 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:43 ID:qWTM3Kjg
-
――この曲なんか、美琴ちゃんに似合うと思うよ?
え〜、どれどれ…………………おい、なに言ってるかさっぱり分からないんだけど。
あ〜 うん ハハハ、確かにそうかも。でも、なんだか元気でない?
フ〜ン、確かにな。ま、一応入れとくよ――
- 118 名前:cat meets girlの中の犬 :04/06/20 04:44 ID:qWTM3Kjg
-
二学期の準備にと、物置を引っ掻き回していると、なにやら懐かしいものが出てきた。
ビッシリ書き込みがされているノート、やたらマーカーが引かれた参考書
何度も解いた問題集、最初の頃はペケばかり、それでも後半は丸が増えていた。
そして、もはや時代に取り残されている、ボロボロになった古いカセットテープたち
MDなんて、もっていなかった中学時代の忘れ物、たくさん詰まった音楽、そして思い出
一番上に置いてあったカセットには、かすれたマジックペンで『受験勉強用』と書かれていた。
- 119 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:44 ID:qWTM3Kjg
-
――はい、これ。
ん? なにこれ?
カセットテープだけど ちなみに60分ね
見りゃ分かるっつーの、それがなんなんだよ?
勉強してるときのBGMや、休憩中のリラックスにいいよ
おお、なるほど。よ〜し、マイベストソングを入れるか!
うん、それがいいと思うよ――
- 120 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:45 ID:qWTM3Kjg
-
夏はまだ秋に役目を交代する気はないらしく、室内にいても汗はにじんでくる。
それでも、動かずにそれを眺める、不思議と、暑さはあまり感じなかった。
そして、思い出す、つらくて、大変で、楽しかった頃を
古いカセットテープは、音楽ではなく記憶を再生させ始めた。
- 121 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:45 ID:qWTM3Kjg
-
――つまり、この方程式は、この数式を使えば……
お、曲が終わった……ということは、今日は終わりだな、いや〜疲れた
う〜ん、でも、ここで終わるときりが悪いから、もう少しだけやろうか……って、アレ?
じゃ〜な、先輩! また明日よろしく!!
あ、美琴ちゃん!! まだ終わってないよ!!
- 122 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:48 ID:qWTM3Kjg
-
そういえば、60分きっかりで、時間を計るのにも役に立ってたっけ。
思えば、受験勉強中は、勉強中でも休憩中も音楽ばかり聴いていたきがする。
嫌いな勉強の紛らわしとしては、なかなか有効だったかもしれない。
あの人は、やはり自分をよく分かっていたようだ
カセットを、ラジカセに入れ、再生ボタンを押す。
くすんだ音がする、そして、一呼吸置いた後に懐かしいメロディが流れてきた――
- 123 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:51 ID:qWTM3Kjg
-
『…Penso che un sogno cosi non ritorni mai piu:
Mi dipingevo le mani e la faccia di blu,
Poi d'improvviso venivo dal vento rapito
E incominciavo a volare nel cielo infinito... 』
静かで、軽快な歌声
正確には分からないが、どこかイタリアのようなラテン系を思わせるメロディ
『Volare... oh, oh!...
Cantare... oh, oh, oh, oh!
Nel blu, dipinto di blu
Felice di stare lassu... 』
- 124 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:53 ID:qWTM3Kjg
-
じっと、じっと貯めて、サビの部分で弾けるように歌う、謡う、謳う
まさに、太陽の下で歌っているような曲
透き通った青空のもと、精一杯歌っているような曲
あの人が私に似合うと言ってくれた曲
思い立ったように、彼女はそのカセットテープを握り締めると、家の外へと出て行った。
- 125 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:56 ID:qWTM3Kjg
-
「……着いたぞ、まったくなぜ僕がこんなに所まで」
「アッハッハッハッハ、悪い悪い、どうやって行くか覚えてなかったんだよ」
二人が立っている場所は、海岸沿いの高台。
そこは、空にも海にも近い場所だった。
夏の空は、雲ひとつなく日差しが照りつけてくるが、それでも暑さは減ってはきた。
空の青には雲があり、海の青には照り返す波が、白く光って見えた。
やはり突き抜けるよう青には、それこそまさしく、まっさらな白がよく似合う。
「あのな……だいたい、なにしに来たんだこんな所に」
「ん? ま〜…ちょっとな。え〜と……」
ごぞごそとポケットから、カセットテープを取り出す。
「なんだ? ずいぶんと古いもののようだが」
返事は、ない
そして、しばらく蝉の鳴き声と木々のざわめきだけが、二人を包んだ。
- 126 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:57 ID:qWTM3Kjg
-
「せ〜の……どりゃ〜!!!」
いきなり、ダイナミックなフォームで右手からテープを空に向かって、海に向かって、投げ放つ
プラスチックのケースが日光を反射して、キラキラと光る。
それでも、しばらくすると、青い世界へと飲み込まれるかのように、視界から消えていった。
しばらく、じっと投げた方向を見つめる一人。
そして、さらにそれを見つめるもう一人。
しばし、静寂の幕が二人に降りる
「……おい、さっきからいったいなにを――」
「うしっ! 帰るぞ!」
突然、笑いながら声高に宣言。
それを見て、パクパクと口を動かし、なにか言いたそうな顔を数秒間だけする。
しかし、それも軽いため息とともに消えていった。
「……わかった、帰るか」
「おう!」
帰り道、二人はなにも聞かなかった、話さなかった
それでいいと思った、それが嬉しかった
分かれ道で、一言だけ
「また、二学期に学校でな」
「ああ、遅刻するんじゃないぞ」
再開の言葉を交わした。
- 127 名前:Nel blu, dipinto di blu :04/06/20 04:58 ID:qWTM3Kjg
-
「ぼ〜られ! うぉ〜うぉ〜! かんた〜れ〜! うぉうぉうぉ!!」
「な〜に 天満その歌? というかそれ歌?」
「あ、愛理ちゃんひど〜い!」
新学期の登校時、友人がえらく音程が外れて、発音が滅茶苦茶な歌を歌っていた。
「んふふふふ、いい曲でしょ〜、私の今、一番のお気に入りの曲なんだよ!」
「アンタね、だからって小学生じゃないんだから道端で歌うのやめなさいよ」
「いいんだも〜ん。歌は歌いたいときに歌うのが一番楽しめるんだよ?」
さらに呆れる友人、もう一人の友人は、静観を決め込んでいるようだ。
そして、自分は……空を見る、今日は夏と見まがうほどの晴れた日だった。
「うしっ! 私も歌うか!」
「え? ちょ、ちょっとなにを言い出すのよ!」
「お、美コちんノリがいいねぇ! それじゃあいっくよー!!」
「ちょ、ちょっと、アンタ達――」
二人、笑いながら大声で歌いだした
- 128 名前: