元のスレッド
草上の昼食
- 1 名前:町医者投稿日:2001/09/25(火) 10:24 ID:???
-
静かな食卓は温度を失ったわけではない
- 2 名前:町医者投稿日:2001/09/25(火) 10:27 ID:???
-
*妻は咀嚼をするのが下手糞だ*
- 3 名前:町医者投稿日:2001/09/25(火) 10:30 ID:???
-
彼女は少しでも気を抜くと、口からぽろりと物が落ちる。
普段もぼんやりしている時に、口が開いていたりするし、
寝ている時に涎を垂らしている事もしばしばである。
それでも彼女は「おいしい」と、
わたくしの作った茸と鮭の炊き込み御飯を食べている。
季節はもう秋。
- 4 名前:生涯反抗記 ◆HaNkouJQ投稿日:2001/09/25(火) 15:01 ID:???
- ほほう。
- 5 名前:混沌スープ投稿日:2001/09/26(水) 00:14 ID:???
- 涼しい夜ですし。
- 6 名前:生涯反抗記投稿日:2001/09/26(水) 22:22 ID:???
- 終わりかね?
- 7 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/09/26(水) 22:58 ID:hsx06xcs
- てs
- 8 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/09/26(水) 22:59 ID:hsx06xcs
- てs
- 9 名前:SM考察隊投稿日:2001/09/26(水) 23:06 ID:???
- 猿と酸っぱいレモンのような感じです
- 10 名前:町医者投稿日:2001/09/27(木) 06:04 ID:???
-
*妻とわたくしは時折午前4時の散歩に出かける*
- 11 名前:町医者投稿日:2001/09/27(木) 06:11 ID:???
-
[さがしています]
「この犬は今頃どこにいるのかしら」
彼女は目深に被った帽子の奥で、
いなくなってしまったどこかの犬に思いを馳せている。
「日が明けるのが随分遅くなったね」
そんな時、わたくしは彼女の手をそっと握りしめる。
彼女の中の埋められない記憶。
帰ってきた静かな食卓で、彼女が白い錠剤を噛み砕く時、
わたくしは限りのない虚無に襲われて、やるせない気分でいっぱいになる。
- 12 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/09/27(木) 09:57 ID:???
- 昭和の作家のようだ
- 13 名前:混沌スープ投稿日:2001/09/27(木) 17:36 ID:???
- もっと。
- 14 名前:名無し芋投稿日:2001/09/27(木) 21:21 ID:???
- しみじみちらり。
- 15 名前:混沌スープ投稿日:2001/09/30(日) 23:35 ID:???
- 終わっちゃうの?
- 16 名前:生涯反抗記投稿日:2001/10/02(火) 18:47 ID:???
- このあとどうするんだろう?
- 17 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/02(火) 18:51 ID:???
- なんとなくささやかなハッピーエンドをきぼん
切実に続きをきぼん
- 18 名前:町医者投稿日:2001/10/02(火) 21:53 ID:???
-
*妻と肉屋の主人の関係*
- 19 名前:町医者投稿日:2001/10/02(火) 21:58 ID:???
-
「また入ってるわ」
夕飯の支度をするために買い物に出た妻は、
ぶら下げている肉屋の袋の中を見て呟いた。
「どらどら…」
おとといは薩摩揚げ
昨日は芋の天ぷら
「今日は唐揚げ」
妻は、剥き出しのまま肉の包みの上に転がっている唐揚げをつまみ取ると、
パクリと口に運んだ。
- 20 名前:町医者投稿日:2001/10/02(火) 22:06 ID:???
-
「変なのよねえ」
路上電車の線路沿いにある小さな肉屋だった。
妻は路面電車がいたく気に入り、ここで肉を買うことが多い。
「こんにちわ」
妻が店に顔を出すと、主人はちらりとこちらを見るが、何も言わない。
「豚コマ100g下さい」
主人は小さく頷くと、手際よく肉を計る。
- 21 名前:町医者投稿日:2001/10/02(火) 22:09 ID:???
-
「はいよ」
「昨日はありがとうございました」
「・・・ん?」
「お芋の天ぷら。とってもおいしかったです。」
「・・・何のこと?」
店主は口元だけニヤリと笑った。
- 22 名前:町医者投稿日:2001/10/02(火) 22:22 ID:???
-
「お礼を言っては、いけないことだったのかしら・・・」
「・・・君が好かれている証拠さ」
「・・・」
「今日は何を作るの?」
「れんこんと豚肉の煮物」
肉屋の挽く肉の味は、大変おいしいものであった。
- 23 名前:混沌スープ投稿日:2001/10/03(水) 00:14 ID:???
- あぁ。
- 24 名前:名無し芋投稿日:2001/10/03(水) 21:38 ID:???
- はぁぁ・・・。
- 25 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/03(水) 21:51 ID:???
- うん、なかなかいい
急かずにゆっくり書いてください
- 26 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:10 ID:???
-
*妻に届けない手紙を書くことがある*
- 27 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:15 ID:???
-
『こんにちわ
お隣の金木犀が、そろそろ香ってくる頃です
昨日、君の揚げた茄子の素揚げもとっても美味しかったよ
もう少し涼しくなったら、また秋桜畑に行きましょう
さようなら』
- 28 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:17 ID:???
-
「ただいまー」
「遅かったね」
「ああ…重かったよ」
- 29 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:22 ID:???
-
「どうしてたの?またこんなに…」
「どうしても、拾わずにはいられなかったの…」
妻が拾ってきたものは、20本あまりのビデオテープだった。
「何が撮ってあるのかしら」
「何が撮ってあるだろうね」
- 30 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:30 ID:???
- もう、何本見ただろうか。
ビデオテープは、おそらくいかがわしいものであるだろうと、
わたくしたちは高をくくっていた。
しかし、そのビデオの全てが、
もう何年も前の「ものまね王座決定戦」であった。
- 31 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:35 ID:???
-
始めのうちはいい。
やれこのCMは何年前のものだとか、この人は最近見なくなっただとか。
しかし、止められないのだ。
まだ残ってる、他のテープに何かがあるのではないかと思わずにはいられなかったのだ。
「ハロー……ハロー……」
その時だった。
- 32 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:44 ID:???
-
13本目のテープに、上品そうな老婆が少しかしこまった感じでこちらを見ている。
テープの劣化のせいか、ひどくその声は小さく、そして所々途切れていた。
「…の、もみ…も色づき始めてきました
もうすぐ、…の実も取れるので、また庭で…ましょう」
老婆はそこまで言うと、うつむき言葉をしばらく失っていた。
「…になったら、また、絶対に…ましょうね」
- 33 名前:町医者投稿日:2001/10/06(土) 14:48 ID:???
-
「誰かに宛てたものだったみたいだね」
「ちゃんと届いたのかな?その人には」
「さあ…」
届けない手紙は、本当はいつか、届けるために書いているのかもしれない。
- 34 名前:田中きのこ投稿日:2001/10/06(土) 15:24 ID:???
- なんだろう。言葉では言い表せられない何かがある。
- 35 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/08(月) 13:35 ID:???
- アスパルテーム の書き込みがない。
ひょっとして、町医者=ア・・・
- 36 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/08(月) 19:33 ID:???
- このスレ、見つけられてよかったなぁ
- 37 名前:名無し芋投稿日:2001/10/08(月) 19:46 ID:???
- ふむ〜・・・。
- 38 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:03 ID:???
-
*いまだに夫は私の事を名前で呼ぶ*
- 39 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:04 ID:???
-
夫に内緒で実家に帰ってみた。
私たちの住んでる場所から、電車で一時間も離れていないので、
内緒で帰ったと言ってもなんてこともない距離だけれど。
そう。ほんの少しの出来心。
- 40 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:04 ID:???
-
家を出て、もう8年になる。
「おかえり」
すっかりと、ここは自分のいる場所という感じがしない。
母は、今でも帰るとこう言うけれど。
私は彼と暮らすようになってから、ほとんど家に帰らなくなった。
いや、寄り付かなくなったと言った方が正しいかもしれない。
- 41 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:05 ID:???
-
母は雀たちに餌をやるのを「ほぼ」日課としている。
米を研いだ時にこぼれ落ちた米粒を、上手に集めて庭にまくのだ。
母は、雀たちを「ピーコたち」と呼ぶ。
どの雀がやって来ても「ピーコ」。
- 42 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:07 ID:???
-
私が家を出てまもなくして、父が体調を崩した。
なんとなく、遠くのどこかの家族の話を、聞いているようだった。
なんとなく、目の当たりにしない事で、現実の事でないような気がしていた。
なんとなく、彼らの傍にいないことで、ひどく疎外感を感じた。
いつしか私は実家に帰らなくなっていた。
- 43 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:08 ID:???
-
「あんた…」
庭に立ち尽くしていた私に、母が声をかける。
「ピーコたちの餌踏んでるわよ」
靴のヒールの部分に米粒が2、3ついていた。
「帰るね」
菓子折りを渡すと踵を帰した。
なんとなく、そうせざる得ないような気がしたのだ。
- 44 名前:町医者投稿日:2001/10/09(火) 12:08 ID:???
-
母が雀を全て「ピーコ」と呼ぶのも、
彼が今だに私の事を名前で呼ぶのも。
平穏な現実。
ほんの少しの出来心でさえも、
私は自分の現実を崩すことが出来ない。
- 45 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/09(火) 18:16 ID:???
- どっかでこんな感じの文章を書く人を見たな
誰だっけな
- 46 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/12(金) 08:08 ID:M/ZGscH2
- ふと寂しい
age
- 47 名前:名無し芋投稿日:2001/10/12(金) 21:07 ID:???
- ふむぅ・・・。
- 48 名前:町医者投稿日:2001/10/16(火) 15:26 ID:???
-
*妻は塀の下を見え隠れする四足歩行に目を見張っている*
- 49 名前:町医者投稿日:2001/10/16(火) 15:27 ID:???
-
夜中に猫の鳴き声で目が覚めた。
「猫の泣き声は」
妻の横顔は月明かりに照らされて、ほの白く光っている。
静かに耳を傾けてる、その横顔から伺える睫の先まで。
- 50 名前:町医者投稿日:2001/10/16(火) 15:28 ID:???
-
「赤ん坊に似ている」
強張っている体にそっと触れてみる。
「ごめんよ」
「そんな風に言われると」
表情は伺えない。ただ静かな声だけ。
「少し不幸せ」
- 51 名前:名無し芋投稿日:2001/10/16(火) 18:24 ID:???
- (ノД;)ぁぅぁぅ...
- 52 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/16(火) 18:32 ID:???
- むー お久しぶり
- 53 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/19(金) 01:46 ID:???
- つづきが楽しみなスレなんだな。ここは。
- 54 名前:名無し芋投稿日:2001/10/30(火) 15:37 ID:???
- ちらり。
- 55 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/30(火) 17:50 ID:???
- 続きを待つ、芋と名無し
- 56 名前:町医者投稿日:2001/10/30(火) 19:06 ID:???
-
*食卓の上で妻の爪を切る*
- 57 名前:町医者投稿日:2001/10/30(火) 19:06 ID:???
-
健康的でもなく、かと言って、不健康でもない。
ラグランスリーブから伸びる、白い腕。
窓から指しこむ青白い光に、照らされている側は、
眩しいくらいに透き通って、瞬きすることさえ、ままならないくらいだ。
- 58 名前:町医者投稿日:2001/10/30(火) 19:07 ID:???
-
妻には、爪を噛む癖があった。
ほおっておくと、妻の爪はガタガタになる。
そのくせ、妻は自分で爪を切るのが下手糞であった。
妻は、基本的に不器用なのだ。
- 59 名前:町医者投稿日:2001/10/30(火) 19:08 ID:???
-
だから私は今日も、食卓で彼女の爪を切る。
彼女の白い腕に、目を細めながら。
瞬きすることを、乞うように。
- 60 名前:生涯反抗記投稿日:2001/10/30(火) 19:14 ID:???
- おお。
- 61 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/30(火) 21:04 ID:???
- うむうむ。
- 62 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/30(火) 23:14 ID:???
- はふぅ・・・
- 63 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/10/30(火) 23:33 ID:???
- 眼福・・。
- 64 名前:名無し芋投稿日:2001/10/31(水) 08:34 ID:???
- ・・・。
- 65 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/06(火) 18:21 ID:???
- ふふ、待ってますよ。
- 66 名前:町医者投稿日:2001/11/14(水) 00:18 ID:???
-
*遅い午前中の電車に妻と二人で乗る*
- 67 名前:町医者投稿日:2001/11/14(水) 00:19 ID:???
-
ラッシュを過ぎた、下り電車だった。
人はまばらで、初冬の優しい光が車内を照らしている。
先頭車両には、ほとんど人がいなかった。
私たちの斜め前には、女子高生がぽつりと座っている。
- 68 名前:町医者投稿日:2001/11/14(水) 00:19 ID:???
-
(クスクス)
私の肩にもたれていた妻は、静かに笑っている。
(どうしたの?)
(あの女子高生)
(かわいいね)
- 69 名前:町医者投稿日:2001/11/14(水) 00:20 ID:???
-
ミニスカートからは、すらりとした足が伸びていて、
ワンポイントの入った、紺色のハイソックスを穿いている。
首には、おろしたての感じがする、マフラーを巻いていた。
我々が乗ってくるよりも、先に乗っていたので、
随分と遠い所から、学校に通っているのかもしれない。
彼女はそんな疲れのせいか、すやすやと眠っていた。
暖かい日の光が、彼女の染められた髪の毛を透かしている。
- 70 名前:町医者投稿日:2001/11/14(水) 00:20 ID:???
-
彼女は大変、愛嬌のある顔をしていた。
顔立ちは至って整っているのだが、鼻だけが少し上向いている。
しかしそこが、彼女の最大のチャームポイントの様に思えた。
(コーデュロイちゃん)
(ん?)
(あの子の名前)
- 71 名前:町医者投稿日:2001/11/14(水) 00:21 ID:???
-
私達は日の光に照らされる、コーデュロイを、
電車を降りるまで、見守っていた。
彼女は、そんな名前をつけられたことなど知らずに、
すやすやと眠っているだけであった。
- 72 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/14(水) 00:33 ID:???
- まってましたー!
いぇーい!
- 73 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/14(水) 01:23 ID:???
- 今回は幸せな日だねぇ・・・
今夜はこんな夢を見たいな。
- 74 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/14(水) 01:52 ID:???
- なんてやわらかな
- 75 名前:名無し芋投稿日:2001/11/14(水) 18:51 ID:???
- ほわほわ〜。
- 76 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:35 ID:???
-
*妻と夕刻の団地に立つ*
- 77 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:35 ID:???
-
家路につく子ども達の足音が、響いていた。
すっかり影を落とした団地の裏路地に、佇んでいる。
「やーまのおてらーの」
妻は小さな声で、夕焼け小焼けを口ずさんでいた。
気をつけて聞かないと、子ども達の足音に、かき消されそうなくらい、
小さく。か細く。
- 78 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:35 ID:???
-
遠くに見える柿の木に、実がなっているのを眺めた。
「あの柿は渋いかね」
「いやいや、甘いよ。きっと甘いよ」
「休もうか?少し」
- 79 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:35 ID:???
-
夕日が暮れなずむベンチで、先に口を開いたのは妻の方だった。
「団地って、独特な匂いがするよね」
「ああ…分かる気がする」
「団地臭っていうのかしら」
- 80 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:36 ID:???
-
「団地の匂いを嗅ぐと、自分の幼い頃に戻ったような気がするの」
「正しくは、幼い記憶を呼び戻す感じ…かしら?」
「団地の匂いが、好きなわけではなかったわ」
「むしろ、嫌だった。いい匂いではなかったし」
「でも、あの匂いは年を取っても変わることなく、いつでも私をあの頃へ誘ってくれるの」
「私達はいつの間にか…」
- 81 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:36 ID:???
-
「年を取ったね」
「そうね」
「これからも…」
「これからも?」
「どうぞよろしく」
「うん。よろしく」
- 82 名前:町医者投稿日:2001/11/15(木) 17:36 ID:???
-
団地にもう人影はなかった。
芝生の中に立った電灯には、いつの間にか明かりが灯っている。
私は妻の手を取ると、来た道をゆっくり歩き始める。
妻の歩幅に合わせて、ゆっくりと。
吐く息が、白かった。
もうすぐ、冬がやってくる。
- 83 名前:名無し芋投稿日:2001/11/15(木) 21:49 ID:???
- ほわほわほわ〜。しんみり。
- 84 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/15(木) 23:19 ID:???
- こころ が ふるえたよ
- 85 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/16(金) 20:04 ID:???
- いいね〜 冬の到来は、こんな風なのがいいね
- 86 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/21(水) 22:26 ID:???
- おやすみ〜
- 87 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:30 ID:???
-
*夫はごく稀に行方知らずになる*
- 88 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:30 ID:???
-
いつもより、朝早く目が覚める。
何事もなかったように、一日を始めてみる。
鍋には大量のソース・エスパニョル。
もう、何日煮続けているだろう?
- 89 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:30 ID:???
-
日差しがさしこむ。食卓の上。
今日こそは、ここに、たくさんの皿が並ぶようにと、
心の中に思い描く。
何度も何度も、同じ風景をなぞる。
- 90 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:31 ID:???
-
このまま、家にいても、息が詰まりそう。
悪い空気が、家中にいっぱい。
- 91 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:31 ID:???
-
一人で歩く、四谷三丁目。
車は混むでもなく、かと言って、空いているわけでもなく、
ゆっくりと流れてゆく。
かすむテールランプ。
外苑通りにぶつかれば、遠くの方で、タワーが見え隠れしている。
最後にタワーに行ったのは、いつだったかな?
- 92 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:32 ID:???
-
人のまばらな、駅のホーム。
黒いコートに身を包み、俯く人。
この人は、何を思っているのかな。
この人は、どこに帰るのかな。
- 93 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:32 ID:???
-
寂しいのはそう…自分だけじゃない。
自分だけじゃないはずなのに。
帰る足は、速くなる。
早く、家の窓が見える距離に。
- 94 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:32 ID:???
-
明かりが点っているのを確認して、いそいでドアを目指した。
たくさんの、思い巡ったことなんて、もう全て帰り道に置いてゆこう。
- 95 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:33 ID:???
-
扉を開けて、始めに目に飛びこんできたもの。
扉の向こうで待っていたのは、夫ではなく。
猫だった。
- 96 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:33 ID:???
-
「おかえり」
「おかえり」
- 97 名前:町医者投稿日:2001/11/21(水) 23:34 ID:???
-
夫は行方知らずになると、必ず土産を買ってくる。
ある時は、北海道のとうきびだった。
タイの銀細工の、ハ町医者
- 98 名前:町医者投稿日:2001/11/23(金) 19:04 ID:???
-
「今日のごはんは何にするの?」
「うなぎのパテ」
- 99 名前:町医者投稿日:2001/11/23(金) 19:05 ID:???
-
「名前、決めようか?」
優しく微笑むと、猫を撫でるのと、同じように、
夫の指は、私の髪を優しく撫でた。
- 100 名前:町医者投稿日:2001/11/23(金) 19:09 ID:???
-
>>97
夫は行方知らずになると、必ず土産を買ってくる。
ある時は、北海道のとうきびだった。
タイの銀細工の、ハンドバックだった時もあった。
悪趣味な、民族人形だった時もあった。
- 101 名前:町医者投稿日:2001/11/23(金) 19:18 ID:???
-
>>2-3
*妻は咀嚼をするのが下手糞だ*
>>10-11
*妻とわたくしは時折午前4時の散歩に出かける*
>>18-22
*妻と肉屋の主人の関係*
>>26-33
*妻に届けない手紙を書くことがある*
>>38-44
*いまだに夫は私の事を名前で呼ぶ*
>>48-50
*妻は塀の下を見え隠れする四足歩行に目を見張っている*
>>56-59
*食卓の上で妻の爪を切る*
>>66-71
*遅い午前中の電車に妻と二人で乗る*
>>76-82
*妻と夕刻の団地に立つ*
>>88-100
*夫はごく稀に行方知らずになる*
いつも感想、ありがとうございます。
お話が10個貯まったので、しおりを作りました。
これからも、拙いながらも、言葉を紡いでゆこうと思います。
- 102 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/23(金) 23:18 ID:???
- 素晴らしいの一言
次作も楽しみに待っております
- 103 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/24(土) 00:45 ID:???
- 何となく読んでるぞ、頑張ってくれ。
- 104 名前:デリ(´ё`)カシ ★投稿日:2001/11/24(土) 23:43 ID:???
- 名スレ発見。
- 105 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/11/25(日) 19:12 ID:???
- 壊れたの、直ったね。
おあずけで拗ねたよw
- 106 名前:名無し芋投稿日:2001/11/25(日) 19:31 ID:???
- しんみり。
- 107 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/12/01(土) 13:16 ID:???
- 12月ですね
- 108 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/12/04(火) 18:48 ID:???
- 炬燵にくるまりながらお待ちしております。
- 109 名前:真っ赤な名無しさん投稿日:2001/12/07(金) 22:06 ID:???
- そろそろ毛布にくるまる時間
- 110 名前:真冬の名無しさん投稿日:2001/12/12(水) 19:42 ID:???
- 夕飯時ですね
- 111 名前:生涯反抗記投稿日:2001/12/13(木) 09:08 ID:???
- つぎはまだなのかね?
- 112 名前:真冬の名無しさん投稿日:2001/12/16(日) 18:51 ID:???
- まだなのですね
- 113 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:06 ID:???
-
*新しいのはらを見つけたというので妻と共に立つ*
- 114 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:07 ID:???
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そこは、冬の日差しが、ポカポカと当たる場所であった。
「ちょっと遠いけど、とびらを連れて出かけましょうよ」
お気に入りの路面電車に乗って、
今日からお供が一人増えた。
- 115 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:08 ID:???
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「響きが気に入ったから」
という理由で、我が家に来た猫は「とびら」と名づけられた。
「とびら」もまんざらではないようで、
名前を呼ぶとすぐに足にすりより、ゴロゴロとのどを鳴らす。
- 116 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:09 ID:???
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「とびら」が歩くたびに、乾いた草がシャリシャリと音を立てる。
始めは落ち着かない風であったが、すぐに草の中を走りぬけ始めた。
本来の動物の本能を、取り戻したかのように。
- 117 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:10 ID:???
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走り抜ける「とびら」を見つめて、妻が目を細める。
「四足歩行が走り抜ける姿は、やっぱり美しいね」
「とびら」の少し逆立った毛が、陽の光を透かして、
草の中で、「とびら」はまるで、ふわふわの綿の塊のようだ。
- 118 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:10 ID:???
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「とびら。おいで」
妻が呼ぶが、「とびら」は知らぬ風だ。
私が捕まえに行くと、「とびら」は逃げてゆく。
- 119 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:10 ID:???
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「あら…」
捕まえた「とびら」の毛に、何かの種がついている。
「まあ」
「オナモミの種だね」
- 120 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:11 ID:???
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「オナモミって小さい頃、よくつけあわなかった?」
妻はオナモミの実を見つけると、私のニットに向って投げつけた。
オナモミは、しっかりと私のニットにひっつく。
光の中で、妻が笑った。
- 121 名前:町医者投稿日:2001/12/17(月) 15:12 ID:???
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「こんな風に」
「ずっとあなたにひっついていたいわ」
「オナモミみたいに」
冷たい風が、少しだけ吹いてた。
草の匂いを嗅いで、少しだけここがどこであるかを忘れた。
- 122 名前:真冬の名無しさん投稿日:2001/12/17(月) 15:19 ID:???
- ・・・じーん
- 123 名前:真冬の名無しさん投稿日:2001/12/17(月) 19:00 ID:???
- ちくしょーめ!
毎回毎回いい話してくれるじゃねーか!
もう今年もあと少しですね。
- 124 名前:名無し芋投稿日:2001/12/17(月) 19:13 ID:???
- ぼろぼろ…(ノД;)
- 125 名前:真冬の名無しさん投稿日:2001/12/17(月) 20:34 ID:???
- (・∀・)イイ!!
- 126 名前:真冬の名無しさん投稿日:2001/12/17(月) 23:15 ID:???
- オナモミ・・・ひっつき虫。ほんわか。
- 127 名前: